著者の所属・活動拠点の国は、インドです。
掲載誌:Frontiers in Nutrition
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
揚げ物などで高温の油を長時間使い続けると、油の成分や品質は大きく変わります。インドの研究チームは、家庭や屋台で広く使われる食用油が、長時間の連続加熱でどう変化するかを調べました。
比較の軸になったのは、油の作り方の違いです。「低温圧搾油」は、おおむね50℃以下で種子などを機械的に搾り、化学薬品を使わずにろ過などで仕上げた油です。「精製油」は、高温で抽出した後、脱色や脱臭などの化学的な工程を経て保存性を高めた油です。低温圧搾油は栄養面で優れていると受け止められがちですが、高温で加熱し続けたときの安定性は精製油に比べてよく分かっていませんでした。著者らは、この点を同じ条件で比べることを目指しました。
何をどう調べたか
対象は12種類の油です。低温圧搾油はラッカセイ、ヒマワリ、米ぬか、パーム、マスタード、ゴマ、ココナッツの7種類、精製油はラッカセイ、ヒマワリ、米ぬか、パーム、大豆の5種類でした。インド・ハイデラバードの3つの市場で、油の種類ごとに3銘柄ずつ購入し、計9製品を混ぜ合わせて1つの試料としました。そのため結果は、個々の銘柄の違いではなく、この混合試料の反応を示すものだと論文は断っています。
加熱条件は、屋台の調査をもとに決められました。各油100ミリリットルを開いたステンレス容器に入れ、230℃前後で1時間、2時間、4時間加熱しました。4時間の連続加熱は、屋台で1日に油が受ける熱の負担を想定したものです。
加熱前後の油について、脂肪酸の組成(飽和脂肪酸、一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸、トランス脂肪酸の割合)に加え、酸化の初期段階でできる過酸化物の量を示す過酸化物価、遊離脂肪酸の量、不飽和の度合いを示すヨウ素価、酸化によって生じる共役ジエン・共役トリエン、屈折率、色の明るさなどを測りました。
主な結果
低温圧搾と精製の両方がそろうラッカセイ、ヒマワリ、米ぬか、パームの4種類では、加熱1時間の時点では低温圧搾油のほうが多価不飽和脂肪酸を多く保っていました。しかし4時間加熱すると、低温圧搾油のほうが精製油よりも大きく失われていました。短時間の加熱では有利に見えても、長時間の加熱では必ずしもそうではないことが示されたといえます。
トランス脂肪酸は、加熱前の低温圧搾油ではほとんど見られませんでしたが、加熱とともに増えました。最も大きく増えたのは精製大豆油で、0.76%から5.88%に上昇し、低温圧搾ゴマ油がこれに続きました。一方、低温圧搾ココナッツ油は4時間後でも0.38%と最も低い値でした。
過酸化物価の変化は油によってさまざまでした。精製ヒマワリ油では1キログラムあたり7.60から15.81ミリ当量へと上がり、4時間後に国際的な食品規格(コーデックス)の上限を超えました。これに対し、米ぬか油は低温圧搾・精製ともに下がり続け、2時間後にはほぼゼロ(0.01)になりました。遊離脂肪酸も多くの油で加熱とともに減少しました。また、すべての油で加熱に伴い色が徐々に暗くなりました。
著者らは全体として、1〜2時間の加熱では脂肪酸の飽和の度合いに影響が出て、4時間に及ぶとトランス脂肪酸や共役ジエン・トリエンが生じるおそれが高まると報告しています。油の種類別では、ココナッツ油の変化が最も小さく、大豆油とゴマ油が加熱の影響を特に受けやすいと結論づけています。
研究が示すこと
この研究は、230℃前後での連続加熱が食用油の栄養面と酸化に対する安定性を損なうこと、そしてその変化の現れ方が油の種類や製法によって大きく異なることを、同一条件で比較して示しました。「低温圧搾だから加熱にも強い」とは限らないという点も、結果から読み取れます。著者らは、油の品質を保つために、調理での加熱の仕方に注意が必要だと述べています。
原著論文の著者・所属:Venkatesh Nandipeta(Food Chemistry Division, ICMR-National Institute of Nutrition)、Sai Lakshmi Chava(Food Chemistry Division, ICMR-National Institute of Nutrition)、Nagaraju Mergu(Clinical Epidemiology, ICMR-National Institute of Nutrition)、Ananthan Rajendran(Food Chemistry Division, ICMR-National Institute of Nutrition)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Venkatesh Nandipeta, Sai Lakshmi Chava, Nagaraju Mergu, et al. Effect of continuous high thermal processing on physico-chemical and nutritional alterations in cold-pressed and refined edible oils. Frontiers in Nutrition 2026-10-23. DOI: 10.3389/fnut.2026.1949768. 原著ライセンス:CC BY.