丸ごと一玉の沖縄パイナップルを食卓に置くと、それだけで夏らしさが漂う。国内で流通するパイナップルは、ほぼ全量が沖縄県で作られており、令和5年産の沖縄の生産量は6750t。旬は6〜8月ごろとされ、ちょうど今、7月は盛りの時季にあたる。冬から春にかけて店先に並ぶのは主に海外産で、この時期の甘く濃い香りは沖縄産ならではの持ち味だ。
甘い果物という印象が先に立つが、パインアップル 生を100gあたりで見ると、酸味を支えている成分にも表情がある。なお沖縄パイナップルは成分表に個別の収録がないため、ここでは一般的なパインアップルの値で見ている。含まれる有機酸のうち最も多いのはクエン酸0.6gで、次いでリンゴ酸が0.2g。りんごやぶどうの酸味を支えるリンゴ酸よりも、クエン酸の方が多く含まれている計算になる。この爽やかな酸味こそ、沖縄パイナップルの甘さを単調にせず、後味を引き締めている正体だ。
酸味の奥で働くクエン酸
クエン酸は、はちみつやかんきつ類、梅干しなどにも含まれる身近な酸味成分で、体内では栄養素からエネルギーを取り出す一連の流れ、いわゆるクエン酸回路に関わり、エネルギー代謝の中心的な役割を果たすとされる。またクエン酸には、鉄やカルシウムの吸収率を上げる働きがあるとされる。なお、クエン酸を機能性関与成分とする機能性表示食品では、一過性の身体的疲労感を軽減する機能が届け出られている(消費者庁の機能性表示食品データベースより)。ただしこれは事業者が消費者庁に届け出た情報で、国が個別に効果を審査・許可したものではなく、特定の関与成分・配合量での機能であって、食品に含まれる量とは異なる点に留意したい。パインアップル自体の可食部100gはエネルギー54kcal、たんぱく質0.6g、食物繊維1.2gで、脂質は0.1gとごく少ない。
今だから味わいたい食べ方
目安量は1/8玉で約100g、1個ではおよそ1kgになる。皮と芯を含む廃棄率は45%と高めだが、それだけ果肉部分に酸味と甘みが凝縮していると考えれば、切り分ける手間も楽しみのうちだ。沖縄では酸味が少なく食べやすいボゴールパインが5〜7月に、ももを思わせる甘さのピーチパインが5月中旬に出回るなど、品種によって酸味と甘みの表情が変わるのも夏ならではの楽しみといえる。保存はまるごとなら上下を逆さに置くと甘みが全体に回るとされ、冷蔵で10日ほどを目安にするとよい。食べきれない分は切って冷凍すれば1カ月ほど保存でき、凍ったまま自然解凍してそのまま食べられるので、暑い日のひんやりデザートにもちょうどいい。皮を煮出してお茶にする楽しみ方もある。
まとめ
甘さの印象が強い沖縄パイナップルだが、成分表の数値をたどると、その味を支えているのはリンゴ酸を上回る量で存在するクエン酸だとわかる。この爽やかな酸味こそ、暑い時季に果物の酸っぱさを心地よく感じさせてくれる立役者かもしれない。今のうちに丸ごと一玉を味わい、甘さの奥にある酸味の役割まで感じてみてほしい。
※本記事は特定の食品の効果・効能を示すものではありません。
※本記事は日本食品標準成分表(八訂)のデータ等をもとに作成しました。
栄養素のはたらき・摂取基準の記述は、次の公的資料に基づきます:厚生労働省 食事摂取基準・食品安全委員会