今の時季、店先で切り分けられたパインアップルが目を引きます。沖縄でとれるものが国内流通のほぼ全量を占めていて、皮を落とした黄金色の果肉がごろりと並ぶ光景は、まさに盛りの果物ならではです。1/8玉が目安量でおよそ100g、片手に収まるひと切れに、あの強い甘みと鋭い酸味がぎゅっと詰まっています。
酸味の主役はクエン酸
パインアップル 生の100gあたりには、クエン酸が0.6g含まれています。同じ有機酸であるリンゴ酸は0.2gですから、パインアップルの酸味は、名前のとおりりんごに由来するリンゴ酸ではなく、クエン酸によって作られていることになります。かんきつ類や梅干しのさわやかな酸味を作る成分と同じもので、体の中ではクエン酸回路と呼ばれるエネルギーを作る仕組みに関わるとされています。甘さの奥にきりっとした酸を感じるのは、糖分と一緒にこの成分がしっかり効いているからだといえそうです。
ここで見逃せないのが廃棄率45%という数字です。硬い皮や芯にあたる部分が食品全体の半分近くを占め、私たちが実際に口にする果肉はその残りにすぎません。裏を返せば、あの甘酸っぱさは可食部だけにぎゅっと凝縮された味わいということです。手間をかけて皮をむいた先にこそ、この時季らしい濃い味が待っています。
品種で変わる甘さと酸味のバランス
沖縄では5月から7月にかけて、酸味が少なく食べやすいボゴールパイン(スナックパイン)が出回り、ちぎってそのままつまめる手軽さが人気です。一方、5月中旬が旬のピーチパインは果肉が白っぽく、桃を思わせる甘みとマイルドな酸味が持ち味です。こうした品種ごとの特徴を知っておくと、パインアップル選びがいっそう楽しくなります。江戸末期に日本へ伝わったとされ、松かさに似た形とりんごのような甘い風味が名前の由来といわれています。
丸ごと保存と食べ方の楽しみ
丸ごと1個(約1kg)を買ったときは、上下を逆さまにして置いておくと甘みが全体に回るといわれています。食べるときにたんぱく質分解酵素の働きで口の中がピリピリすることがありますが、これもパインアップルらしい個性のひとつです。生のまま切り分けるほか、ジュースや缶詰、ドライフルーツに加工しても楽しめます。ビタミンB1・B6・Cも含む果物なので、暑い時期のデザートや酢豚などの料理に添えて、甘みと酸味の両方を味わってみてください。
凝縮された今だからこそ
廃棄率45%という数字は、一見すると「もったいない果物」に見えるかもしれません。けれども残った可食部にこそ、クエン酸による酸味と糖分による甘みがぎゅっと詰め込まれているのだと考えると、ひと切れの重みが変わってきます。盛りを迎えた沖縄産パインアップルを手にしたら、皮の下に凝縮された甘酸っぱさを、ぜひ丸ごと味わってみてください。
※本記事は日本食品標準成分表(八訂)のデータ等をもとに作成しました。
栄養素のはたらきの記述は、次の公的資料に基づきます:厚生労働省 食事摂取基準