著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。
掲載誌:Food Research
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
醤油は、大豆を微生物の力で発酵・分解して作る調味料です。製造は大きく三つの段階に分かれます。まず大豆に麹菌(アスペルギルス・オリゼ)を生やして「麹」を作ります。次に麹を濃い食塩水に漬けて熟成させ、「もろみ」を作ります。この段階では乳酸菌も働きます。最後に、甘口醤油の場合は、もろみに砂糖や香辛料を加えて煮込みます。
チャヤ(学名 Cnidoscolus aconitifolius)はトウダイグサ科の植物で、成長が速く乾燥にも強いとされます。中米やメキシコ南部では古くから葉が食用にされてきました。著者らは、この葉にたんぱく質やアミノ酸、ビタミンCなどが含まれている点に着目しました。研究チームは、チャヤの葉の粉末を麹づくりの段階で大豆に加えた場合と、もろみの熟成期間を変えた場合に、甘口醤油の栄養成分がどう変わるかを調べました。
どのように調べたか
研究チームは、北スマトラの畑で採れた新鮮なチャヤの葉を60℃で24時間乾燥させ、細かい粉末にしました。蒸した大豆に麹菌を植え付ける際、この粉末を大豆の重さに対して0%、5%、10%、15%の4段階で混ぜました。これを室温で48時間発酵させて麹を作りました。
できた麹は乾燥させたあと、20%の食塩水に漬けました。熟成期間は4週間、8週間、12週間の3通りです。得られたもろみ液を水で薄め、黒砂糖や白砂糖、シナモン、ニンニク、ゴマ、レモングラスなどの香辛料を加えて1時間煮込み、甘口醤油に仕上げました。
測定項目は製造段階ごとに異なります。麹では、たんぱく質量、ビタミンC量、水分、生きた微生物の数を測りました。顕微鏡で麹菌の育ち方も観察しました。もろみと甘口醤油ではたんぱく質量とビタミンC量を測り、色の測定は甘口醤油について行いました。さらに、最も良いと判断された醤油については、アミノ酸の組成を調べました。比較の対象は、チャヤを加えずに同じ期間熟成させた醤油と、市販の醤油です。
主な結果
論文によると、チャヤの葉の粉末を多く加えるほど、麹・もろみ・甘口醤油のいずれでもたんぱく質とビタミンCが多くなりました。麹のたんぱく質量は、粉末なしで約12.1%、15%添加で約14.5%でした。甘口醤油のビタミンCは、粉末なしでは1キログラムあたり約2.2ミリグラムでした。15%添加では約38.8ミリグラムまで増えています。著者らは理由の一つとして、チャヤの葉自体に含まれるたんぱく質やビタミンCが製品に持ち込まれたことを挙げています。一方、粉末を加えるほど麹の水分はわずかに低くなりました。また、葉の緑色の影響で、甘口醤油は緑がかった黒色になったとしています。
もろみの熟成期間を比べると、もろみと甘口醤油のたんぱく質量はどちらも8週間で最も高くなりました。4週間ではこれより低く、12週間でも8週間より下がっていました。
研究チームは、たんぱく質、ビタミンC、色の評価をこの順に重視して各条件を比べました。その結果、チャヤの葉の粉末15%・もろみ熟成8週間の組み合わせを最良の条件と判断しました。この醤油のたんぱく質量は約2.29%で、ビタミンCは1キログラムあたり約39.0ミリグラムでした。
アミノ酸の比較では、この醤油には市販醤油で検出されたアミノ酸がすべて含まれていました。さらに、市販醤油では検出されなかったヒスチジン、シスチン、メチオニン、チロシンも含まれていたと報告されています。うま味と関わりの深いグルタミン酸は1キログラムあたり2802.53ミリグラムでした。チャヤを加えなかった醤油(約2585ミリグラム)や市販醤油(約2629ミリグラム)より多い値です。
研究から伝わること
この研究は、チャヤの葉の粉末を醤油の麹づくりに加えると、甘口醤油のたんぱく質やビタミンCが増え、含まれるアミノ酸の種類も広がり得ることを示しました。著者らは、グルタミン酸が多いことから、うま味が強まる可能性も考察しています。ただし、これは成分分析の結果に基づく見方として述べられたものです。この論文は、チャヤを発酵食品の素材として生かす一つの方法を、具体的な配合と熟成期間とともに示した報告といえます。
原著論文の著者・所属:H. Sinaga(Food Science Study Program , Faculty of Agriculture , Universitas Sumatera Utara , Medan , Indonesia; Food Technology Study Program , Faculty of Agriculture , Universitas Sumatera Utara , Medan , Indonesia)、L.M. Lubis(Public Health Study Program , Faculty of Public Health , Universitas Sumatera Utara , Medan , Indonesia)、A. Siagian(Food Technology Study Program , Faculty of Agriculture , Universitas Sumatera Utara , Medan , Indonesia)、E. Ewaldo、A. Ongga
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):H. Sinaga, L.M. Lubis, A. Siagian, et al. The use of chaya leaf powder (Cnidoscolus aconitifolius) as a media substrate for mold growth in soy sauce making. Food Research 2026-08-16. DOI: 10.26656/fr.2017.10(4).289. 原著ライセンス:CC BY.