著者の所属・活動拠点の国は、パキスタンです。

掲載誌:Genetics and Molecular Research

ライセンス: CC BY-SA 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

妊娠高血圧腎症は、妊娠20週以降に高血圧が現れ、尿にたんぱくが出るなどの異常を伴う病気で、妊婦と赤ちゃんの健康を損なう主な原因の一つとされています。原因ははっきり分かっていませんが、胎盤がうまく形づくられないことや、炎症、血管の働きの乱れなどが関わると考えられています。

一方、ビタミンDはカルシウムの代謝だけでなく、免疫の調整や胎盤の働きにも関わるとされています。パキスタンでは妊婦の多くがビタミンD不足の状態にあると報告されており、妊娠高血圧腎症も大きな健康課題です。そこで研究チームは、パキスタンの妊婦を対象に、血液中のビタミンD濃度と妊娠高血圧腎症との関連を調べました。

どのように調べたか

研究はパキスタン・ムルタンの軍病院で、2024年11月から2025年12月までの13か月間に行われました。妊娠高血圧腎症と診断された妊婦90人と、高血圧のない健康な妊婦90人、合わせて180人を比べる「症例対照研究」という方法です。病気のある人とない人を集め、過去や現在の特徴の違いを比較するやり方です。

対象は、単胎で正期産の妊婦のうち、喫煙せず、糖尿病や腎臓の病気、慢性的な高血圧がなく、妊娠中にビタミンDのサプリメントを飲んでいない人に限られました。妊娠高血圧腎症は、妊娠20週以降に6時間以上の間隔をあけた2回の測定で収縮期血圧140mmHg以上または拡張期血圧90mmHg以上となり、1日の尿たんぱくが0.3gを超える場合と定義されました。

ビタミンDの量は、体内の蓄えを反映する指標として使われる血液中の「25-ヒドロキシビタミンD」で測定しました。10ng/mL未満を欠乏、10〜30ng/mLを不足、30ng/mLを超える場合を正常と分類し、年齢や体格指数(BMI)などの影響も考慮した統計解析を行いました。

主な結果

妊娠高血圧腎症の妊婦では、血液中のビタミンD濃度の平均が13.27ng/mLで、健康な妊婦の21.83ng/mLより低いと報告されました。ビタミンD欠乏(10ng/mL未満)に当たる人の割合も、妊娠高血圧腎症の群では22%だったのに対し、健康な群では5%でした。

母親の年齢やBMIの影響を考慮した解析では、ビタミンD欠乏の人は、妊娠高血圧腎症を発症している見込みを表す「オッズ」が約4.66倍高いという結果でした。一方、欠乏より軽い「不足」の段階では、はっきりした関連は見られませんでした。

このほか、30〜35歳の妊婦や、BMIが25〜30.1kg/m²の妊婦でも、妊娠高血圧腎症との関連が認められたと報告されています。出産回数については、明確な関連は確認されませんでした。

研究から分かること

著者らは、ビタミンD欠乏と妊娠高血圧腎症との間に、年齢や体格とは独立した強い関連があると結論づけ、ビタミンDの状態が改善可能な危険因子である可能性を指摘しています。

ただし、この研究で示されたのは関連であり、ビタミンD不足が病気を引き起こすという因果関係までは確かめられていません。研究は1つの病院で行われ、ビタミンDは出産に近い時期に1回測っただけで、胎盤がつくられる妊娠初期の値や、日光を浴びる時間、食事の内容は調べられていません。著者ら自身も、因果関係を確かめるにはより大規模な試験が必要だと述べています。

それでも、ビタミンD不足が広く見られる地域で、妊娠高血圧腎症の妊婦ほどビタミンD濃度が低い傾向がはっきり示されたことは、妊婦の栄養状態と妊娠中の合併症との結びつきを考えるうえで一つの手がかりとなる報告です。

原著論文の著者・所属:Nadia Naheed(Post Graduate Resident (FCPS), Obstetrics and Gynaecology, Combined Military Hospital, Multan, Pakistan)、Nafla Arooj(Designated SR (FCPS), Obstetrics and Gynaecology, Nishtar Hospital, Multan, Pakistan)、Muhammad Awais Altaf(Designated SR (FCPS), Obstetrics and Gynaecology , Nishtar Hospital , Multan , Pakistan)、Lubna Noor(Assistant Professor, Obstetrics and Gynaecology , Combined Military Hospital , Multan , Pakistan)、Rimsha Irshad(Post Graduate Resident (FCPS), Obstetrics and Gynaecology, Combined Military Hospital, Multan, Pakistan)、Ameena Zahid(Post Graduate Resident (FCPS), Obstetrics and Gynaecology , Combined Military Hospital , Multan , Pakistan)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Nadia Naheed, Nafla Arooj, Muhammad Awais Altaf, Lubna Noor, Rimsha Irshad, Ameena Zahid THE VITAMIN D LEVEL; A RISK FACTOR FOR DEVELOPING PRE-ECLAMPSIA. Genetics and Molecular Research 2026-08-12. DOI: 10.4238/91yq2t86. 原著ライセンス:CC BY-SA 4.0.

本紹介記事の文章(題名・見出しを含む)は、CC BY-SA 4.0で提供します。原著論文をもとにNutriMap Japanが日本語で要約・説明を加えています。対象は本紹介記事の文章に限り、ヒーロー画像・サイトのロゴ・画面デザイン・他の記事・データベース全体は含みません。