この研究は、ベトナム、タイの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Journal of Microbiology Biotechnology and Food Sciences
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
発酵後に残る酒かすを食品原料に
研究チームは、赤米から酒を造った後に残る酒かすを、小麦粉の一部に代わるパンの原料として使えるか調べました。十分に活用されていない発酵の副産物を食品に生かし、栄養成分を増やしながら、パンとしての品質を保てる配合を見つけることが目的です。
著者らは酒かすからアルコールを除き、乾燥させて細かい粉末にしました。この粉末で小麦粉の重量の5%、10%、15%、20%を置き換えたサンドイッチ用のパンを作り、置き換えなしのパンと比較しました。調べたのは、栄養成分や植物由来の成分の量に加え、膨らみ、硬さ、色、内部の構造などです。
成分は増えた一方、パンは膨らみにくく
酒かす粉末の割合が高くなるにつれて、パンに含まれるアントシアニンやポリフェノールの量が増えました。アントシアニンは植物の赤色などに関わる色素で、ポリフェノールの一種です。置き換えなしのパンではアントシアニンは検出されませんでしたが、酒かす粉末を加えたパンでは検出されました。パンの色も、粉末の割合が高いほど濃くなりました。
一方で、酒かす粉末を増やすと、パンの膨らみは小さくなり、表皮と内側の部分は硬くなりました。研究チームは、栄養成分や植物由来の成分の増加と、こうしたパンの品質の変化を総合し、試した配合の中では15%の置き換えが最も適したバランスだったと報告しています。
15%を置き換えたパンでは、置き換えなしのパンに比べ、たんぱく質の含有率が11.8%から12.9%に、食物繊維が1.45%から2.2%に増えました。脂質と、ミネラルなどの無機成分の総量を示す灰分も増加しました。炭水化物の含有率には有意な差がありませんでした。
副産物の活用には配合のバランスが重要
電子顕微鏡による観察でも、15%を置き換えたパンの内側には、置き換えなしのパンより多くの亀裂や不均一な構造が見られました。著者らは、小麦粉のグルテンが作る、発酵中のガスを保持する網目構造が酒かす粉末の添加によって変わることを、膨らみの減少や硬さの増加を説明する要因として挙げています。
この研究は、赤米の酒かすをパンの原料として活用し、栄養成分や植物由来の成分を増やせることを示しました。ただし、加える量が多いほどパン全体の品質がよくなるわけではありません。今回の条件では、15%の置き換えが、成分の充実とパンの膨らみ・硬さを両立させる配合として選ばれました。
著者:Nguyễn Minh Thủy、Huynh An Thuan(Institute of Food and Biotechnology , Can Tho University , Can Tho 900000 , Vietnam)、Hong Van Hao、Tran Ngoc Giau(Institute of Food and Biotechnology , Can Tho University , Can Tho 900000 , Vietnam)、Ngô Văn Tài(King Mongkut's Institute of Technology Ladkrabang)、Võ Quang Minh(College of Environment and Natural Resources , Can Tho University , Can Tho 900000 , Vietnam)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Nguyễn Minh Thủy, Huynh An Thuan, Hong Van Hao, et al. VALORIZATION OF RED RICE WINE LEES AS A PARTIAL WHEAT FLOUR SUBSTITUTE IN SANDWICH BREAD: EFFECTS ON NUTRITIONAL QUALITY AND BIOACTIVE COMPOUNDS. Journal of Microbiology Biotechnology and Food Sciences 2026-09-21. DOI: 10.55251/jmbfs.14547. 原著ライセンス:CC BY.