宮崎、群馬、福島の産地から、7月の青果売り場にはきゅうりが並ぶ。令和5年の出荷量では宮崎県が5.8万トンで首位、群馬県が4.9万トンで続き、埼玉・福島も上位に入る。7〜8月ごろが旬とされる作物で、今はまさにその入り口から最盛期にかかるタイミングだ。ハウス栽培もので一年中手に入る野菜だが、これからは露地栽培ものも流通し始め、味の乗った旬本番のきゅうりに出会える季節になる。
この時期にきゅうりが恋しくなるのには理由がある。可食部の約95%が水分で、100gあたりのエネルギーはわずか13kcal。汗をかいて食欲が落ちる夏場に、みずみずしさごと体に入れられる野菜として重宝されてきたのも頷ける。実際、東洋医学の考え方では、きゅうりは体を冷やす性質を持つ「涼」に分類され、味は「甘」、脾・胃・大腸に働きかける食材とされる。冷たい麦茶を飲むのとは違う、食べ物としての涼しさがここにある。
たんぱく質は控えめ、水分が主役
きゅうり100gあたりのたんぱく質は1g。エネルギーの低さと水分の多さが重なることで、暑さで食が細くなりがちな夏でも量を気にせず箸を伸ばしやすい野菜だ。主役はあくまで水分であり、脇を固める栄養素として捉えるのが実像に近い。
味の面では、きゅうり100gにリンゴ酸が0.3g含まれている点も面白い。リンゴ酸はりんごやぶどう、ワインなどの果実に多く含まれる代表的な酸味成分の一つで、食品の呈味を決める主要な有機酸として知られる。きゅうりというと青くささが先に立つ印象があるかもしれないが、酢の物にしたときのあの後味の爽やかさは、果物の酸味と同じ成分が支えているのだと思うと、見え方が少し変わってくる。淡色野菜に分類されながら、皮の緑にはβ-カロテンを含み、カリウムやビタミンC・Eも含む。突出した数値を一つ持つ野菜というより、水分をベースに小さな栄養が重なり合っている、という方が実態に近い。
今日買ったら、まず何をするか
きゅうり1本の目安量は約100g。生のままサラダや酢の物にするのが最も水分を活かせる食べ方で、油と合わせていため物にしてもおいしい。ただ、旬の盛りは買いすぎてしまう時期でもある。使い切れない分は塩もみして冷蔵・冷凍保存する方法もあり、浅漬けや和え物の下ごしらえとして翌週以降にも回せる。
水分の多さも、東洋医学でいう涼という位置づけも、向いている方向は同じだ。きゅうりは「大きな栄養を狙って食べる野菜」というより、暑い時期に食べやすさで選ばれてきた野菜だといえる。派手な数値の代わりに、静かな涼しさを差し出してくる。今日の食卓に一本加えるなら、まずは冷やして薄切りにするところから始めてみてほしい。
※本記事は日本食品標準成分表(八訂)のデータ等をもとに作成しました。
栄養素のはたらきの記述は、次の公的資料に基づきます:厚生労働省 食事摂取基準