ポテトチップスやスナック菓子のような揚げ物は、多くの人にとって身近なおやつですが、油で高温加熱することで「アクリルアミド」と呼ばれる物質が生成されることが知られています。また、精製された小麦粉を使った揚げ菓子は、食物繊維やポリフェノールなどの生理活性成分に乏しいことも指摘されてきました。こうした中、近年注目されているのが「紫小麦」です。紫小麦はアントシアニンなどの色素成分を豊富に含む品種で、通常の小麦にはない機能性が期待されています。今回紹介する研究は、この紫小麦から作った粉(紫小麦粉、PWF)を使って小麦チップスを強化し、より健康的な揚げ物スナックを作れるかどうかを検討したものです。
研究でわかったこと
研究チームは、応答曲面法という統計的な手法を用いて、紫小麦粉の配合割合(0〜100%)、揚げる温度(170〜190℃)、揚げる時間(40〜60秒)という3つの条件を組み合わせながら、チップスの性質がどう変化するかを詳しく調べました。着目したのは、消化されにくいでんぷんである「レジスタントスターチ」、加熱によって生じる「アクリルアミド」、そして総フェノール量・総フラボノイド量・総アントシアニン量、さらに抗酸化活性(DPPH法、ABTS法、FRAP法という異なる測定方法)です。
その結果、レジスタントスターチの量は0.51〜0.80g/100gの範囲で、紫小麦粉の配合量が増えるほどわずかに増加し、この増加は統計的にも意味のある変化だったと報告されています。一方でアクリルアミドの含有量は、紫小麦粉の配合量が増えるにつれて1362.68μg/kgから1082.76μg/kgへと減少したとされています。さらに、総フェノール量、総フラボノイド量、総アントシアニン量、そして抗酸化活性(DPPH法・ABTS法)についても、紫小麦粉の配合によって有意に向上したことが示されています。ただし、抗酸化活性の指標のひとつであるFRAP法による測定値には、目立った変化は見られなかったとのことです。
これらの結果を踏まえ、研究チームは紫小麦粉を配合量100g/100g、揚げ温度170℃、揚げ時間60秒という条件が、最も優れた配合であると位置づけており、機能性を持つ栄養価の高いスナックとしての可能性を示すものだとしています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この研究は、特定の条件下で紫小麦粉を配合したチップスを試作し、その成分や抗酸化活性を測定したものであり、実際に人がこれを食べた際の健康への影響を検証したものではありません。また、あくまで一つの研究であり、結論が確定したわけではない点にも留意が必要です。アクリルアミドの減少や抗酸化活性の向上といった結果は、あくまで測定された成分レベルでの変化であり、体内での効果やリスク低減を保証するものではない点も踏まえて読む必要があります。
まとめ
紫小麦粉を使ってチップスを作ったこの研究では、配合量を増やすことでアクリルアミドが減少し、フェノール類やアントシアニンなどの成分、そして一部の抗酸化活性が向上する傾向が示唆されています。揚げ物スナックの新しい可能性を示すデータとして興味深い内容ですが、今後さらなる研究の積み重ねが期待される分野だと言えそうです。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:紫小麦粉を強化した小麦チップスにおける生理活性特性と抗酸化活性の向上(インターナショナル・ジャーナル・オブ・フード・サイエンス・アンド・テクノロジー・2026年08月)