この研究は、サウジアラビア、イギリスの研究機関の研究論文です。

掲載誌:European Journal of Clinical Nutrition

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

腎臓の働きがほぼ失われ、血液透析で治療を受けている人にとって、低栄養は病気の悪化や死亡と強く関係すると報告されています。米国の腎臓病診療指針(KDOQI)は、血液透析を受ける人に、体重1キログラムあたり1日25〜30キロカロリーのエネルギーと、1.0〜1.2グラムのたんぱく質をとることを勧めています。しかし実際には、味覚の変化、厳しい食事制限、透析中に栄養素が失われること、体内の炎症による食欲の低下など、食事量を減らす要因が多くあります。

英国では、透析を受ける人は送迎を含めて一日の多くの時間を透析施設で過ごすことが多く、透析日には食事量が減るおそれがあります。透析中に食事を提供するかどうかは国や施設によって異なり、その理由の一つは、透析中に食べると血圧が下がりやすくなるという懸念です。研究チームは、透析中にビスケット3枚(210キロカロリー、たんぱく質3グラム)だけを配っている施設で、透析日と非透析日の食事量を比べ、さらに自宅から食べ物を持参することで透析日の食事量の減少を補えるかどうかを調べました。

何を調べたか

研究は英国の都市部にある1か所の透析施設で、通院して血液透析を受けている成人60人を対象に、ある一時点の状態を調べる横断研究として行われました。この施設では以前、ビスケットに加えてサンドイッチも提供しており、そのときの調査では透析日と非透析日の摂取量に差がなかったと報告されています。今回の研究は、サンドイッチの提供が終了した後の状況を確かめる予備的な調査と位置づけられています。

食事量は、非透析日1日分を栄養士が聞き取ったうえで、透析日1日分と別の非透析日1日分を本人に食事日記として記録してもらい、集計しました。あわせて、体組成や握力、身体機能、血液検査、透析中の血圧低下の有無も調べました。筋肉量と筋力がともに落ちた状態である「サルコペニア」、心身の活力が低下した「フレイル」、国際的な基準(GLIM基準)にもとづく低栄養の有無も評価しています。

主な結果

参加者の平均年齢は62歳でした。サルコペニアに当てはまる人は27%、フレイルと判定された人は67%、糖尿病がある人は48%、心不全がある人は37%で、健康上の課題を複数抱える人が多い集団でした。GLIM基準で低栄養と判定された人は約3分の1にのぼり、その多くは重度と分類されました。

透析日と非透析日を平均した摂取量では、エネルギーの目標を満たした人は8人、たんぱく質の目標を満たした人は12人で、両方を満たした人は5人(8%)にとどまりました。透析日は非透析日に比べて摂取量が少なく、平均の差はエネルギーで約136キロカロリー、たんぱく質で約11グラムでした。カリウム、リン、亜鉛の摂取量も透析日のほうが少なかったと報告されています。

配られるビスケットに加えて、自宅から食べ物を持参した人は43%でした。持参しなかった人では、透析日のエネルギーとたんぱく質の摂取量が非透析日より明らかに少なかったのに対し、持参した人では両日の間に差は見られませんでした。一方、両グループの間で体組成、筋力、2日間を平均した摂取量、低栄養の判定に明らかな差はありませんでした。透析中の血圧低下も、持参した人で38%、持参しなかった人で41%と、明らかな差はありませんでした。また、食べ物を持参しなかった人には心不全などの持病がある人が多かったと報告されています。

研究が示すこと

著者らは、少量の軽食を配るだけでは透析日の食事量の減少を補えておらず、食べ物を持参した人では透析日の摂取量が保たれていたと述べています。ただし、持参した人でも多くは推奨される摂取量に届いていませんでした。この研究は1施設・60人を一時点で調べたもので、自己申告の食事記録に頼っている点や、摂取量の違いがその後の体の状態にどうつながるかは分からない点を、著者ら自身が限界として挙げています。

それでも研究チームは、持病やフレイルを抱える人が多い現在の透析患者の実情を踏まえ、一律の指針だけでなく、一人ひとりの状態に応じた栄養評価と支援が必要だと結論づけています。透析日の食事をどう支えるかが、栄養管理の重要な論点であることを示した報告といえます。

著者:Haalah Shaaker(Clinical Nutrition Department, King Abdulaziz University, Jeddah, Saudi Arabia)、Andrew Davenport(Centre for Kidney and Bladder Health, Royal Free Hospital, University College London, London, UK)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Haalah Shaaker, Andrew Davenport. Nutritional intake on dialysis and non-dialysis days and the effect of intradialytic food provision among hemodialysis patients, a single-center study. European Journal of Clinical Nutrition 2026-10-09. DOI: 10.1038/s41430-026-01833-z. 原著ライセンス:CC BY.