著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。

掲載誌:Jurnal Ilmu Gizi dan Dietetik

ライセンス: CC BY 4.0 確認元: 雑誌の掲載方針

研究の目的

γ-アミノ酪酸(GABA)は、たんぱく質を構成しないタイプのアミノ酸です。研究チームによると、機能性や栄養、健康への関わりが注目され、発酵食品やパンの分野で研究が増えてきました。微生物が関わる発酵の過程で、この成分の生成を自然に高められるためです。

論文の数が急速に増えるなかで、研究がどう発展してきたか、誰がどのように協力しているか、どんなテーマが中心なのかを全体として整理する必要が出てきました。そこで研究チームは、発酵とパンづくりに関わるGABA研究の世界的な動向を、計量書誌学(ビブリオメトリクス)の手法で分析しました。これは、論文の数や引用、共著関係、キーワードなどを数量的に集計し、研究分野の姿を描き出す方法です。

何をどう調べたか

著者らは学術文献データベースのScopusを使い、2026年1月31日に検索を行いました。GABAを表す複数の表記と、「発酵」「パン」「焼成」「生地の発酵工程(プルーフィング)」などの語を組み合わせて、論文の題名・要旨・著者キーワードを検索しました。対象は2017年から2026年に発表された文献で、合計1,023件を分析しました。

分析には、Rの解析環境で動くBibliometrixというツールのウェブ版を主に使いました。年ごとの論文数、引用数、著者・機関・国ごとの生産性、掲載誌の推移などを集計しました。さらに、キーワードが一緒に現れる関係の網の目や、テーマの位置づけを示す地図を作り、研究の構造と変化を調べました。

主な結果

1,023件の文献は、学術誌や書籍、会議録などを含む302の掲載媒体に発表されており、関わった著者は3,652人でした。単著の文献は12件にとどまり、1件あたりの著者数は平均6.03人でした。著者らは、チームによる共同研究が中心の分野だとみています。国をまたぐ共同研究は全体の19.94%でした。文献の種類では学術論文が894件と大半を占め、総説が93件ありました。1件あたりの平均被引用数は16.99回でした。

年平均の増減率はマイナス12.02%と算出されました。ただし著者らは、2026年の落ち込みについて、最新年のデータ登録が完了していないことによる見かけ上の現象である可能性が高いと述べ、慎重な解釈を求めています。

地域別では、研究がアジア、とくに中国、韓国、日本に集中していました。中国が最大の貢献国です。ヨーロッパではイタリアが最も多く、マレーシアなど東南アジアからの貢献も伸びていました。機関別では中国の江南大学が大きく先行していました。掲載誌では、初期はLWTが中心でした。その後、2020年代半ばにかけてFoods、Fermentation、Food Bioscience、Food Chemistryへと広がりました。

キーワードで最も多く現れたのは「発酵」で、出現数544、全体の約9%でした。代謝、アミノ酸、グルタミン酸、乳酸菌なども目立ちました。グルタミン酸をGABAに変える酵素であるグルタミン酸脱炭酸酵素も多く登場しました。研究の中心は、微生物の働きによってGABAを作り出す仕組みにあるといえます。

時間の経過とともに、研究の関心は基礎的な発酵研究から変化していました。仕組みの解明や代謝の分析へ、さらにプロバイオティクスや機能性食品への応用へと広がっています。テーマの地図では、分野をけん引する中核テーマとして代謝や対照を置いた実験研究が挙がりました。応用寄りのプロバイオティクスや人の健康に関わる話題も存在感を増していました。

一方で、データの限界も示されています。データベースが自動で付けるキーワードは、記録の4割近くで欠けていました。また、学問分野の分類情報はすべての記録にありませんでした。そのため、キーワードに基づく一部の分析や、分野別の比較には制約があるとしています。

この研究が示すこと

著者らは、発酵とパンづくりにおけるGABA研究は、成熟した学際的な段階に達したとまとめています。この分野は、発酵工程そのものの探究から、応用を重視した開発へと移りつつあります。論文の集積を見渡すことで、この分野が発酵技術、生化学的な仕組み、代謝や健康に関わる成果を結びつけた形で発展してきた様子が浮かび上がりました。

原著論文の著者・所属:Igoy Bimo(Departemen Ilmu Pangan dan Bioteknologi, Fakultas Teknologi Pertanian, Universitas Brawijaya, Malang 65145, Jawa Timur, Indonesia; Program Studi Teknologi Pangan dan Hasil Pertanian, Fakultas Ketahanan Pangan, Universitas Negeri Surabaya, Surabaya 60286, Jawa Timur, Indonesia)、Teti Estiasih(Departemen Ilmu Pangan dan Bioteknologi, Fakultas Teknologi Pertanian, Universitas Brawijaya, Malang 65145, Jawa Timur, Indonesia; Pusat Studi Pengembangan Pangan Lokal, Universitas Brawijaya, Malang 65145, Jawa Timur, Indonesia)、Wenny Sunarharum(Departemen Ilmu Pangan dan Bioteknologi, Fakultas Teknologi Pertanian, Universitas Brawijaya, Malang 65145, Jawa Timur, Indonesia)、Siti Wulan(Departemen Ilmu Pangan dan Bioteknologi, Fakultas Teknologi Pertanian, Universitas Brawijaya, Malang 65145, Jawa Timur, Indonesia)、Ambar Fidyasari(Departemen Ilmu Pangan dan Bioteknologi, Fakultas Teknologi Pertanian, Universitas Brawijaya, Malang 65145, Jawa Timur, Indonesia; Pusat Studi Pengembangan Pangan Lokal, Universitas Brawijaya, Malang 65145, Jawa Timur, Indonesia)、Dego Ali(Pusat Studi Pengembangan Pangan Lokal, Universitas Brawijaya, Malang 65145, Jawa Timur, Indonesia)、Muchammad Asrori(Program Studi Bioteknologi, Fakultas Ketahanan Pangan, Universitas Negeri Surabaya, Surabaya 60286, Jawa Timur, Indonesia)、Meylda Pranita(Fakultas Matematika dan Ilmu Pengetahuan Alam, Universitas Padjadjaran, Sumedang 45363, Jawa Barat, Indonesia)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Igoy Bimo, Teti Estiasih, Wenny Sunarharum, et al. Research Trends and Thematic Evolution of GABA in Fermentation and Bakery Systems: Bibliometric Analysis. Jurnal Ilmu Gizi dan Dietetik 2026-09-30. DOI: 10.25182/jigd.2026.5.3.618-634. 原著ライセンス:CC BY.