この研究は、インドネシアの研究機関の研究論文です。
掲載誌:LAN TABUR Jurnal Ekonomi Syariah
ライセンス: CC BY-SA 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
ばらばらに広がった研究を一枚の地図にする
ハラール食品とは、イスラム教の教えに照らしてムスリムが口にしてよいとされる食べ物や飲み物のことです。原材料が許されたものかどうかだけでなく、どこから調達し、どう製造・保管・流通させたかまで含めて問われます。さらに近年は、安全で健康的、品質の良い食べ物であることを重視する「タイイブ」という考え方と結びつけて論じられることも増えています。
世界有数のムスリム人口を抱えるインドネシアでは、ハラール認証の制度づくりや産業振興が進み、それに伴って研究も消費者行動、認証制度、サプライチェーン(原料から消費者に届くまでの流れ)、食品安全、真正性の判定、デジタル技術、持続可能性など多方面へ広がってきました。ただ著者らによれば、これらの研究の流れは個別に積み重ねられてきたため、分野全体がどのように発展し、どんな構造をもっているのかは見えにくい状態でした。これまでの同種の分析も、世界全体や中小企業、サプライチェーンなど特定の領域に焦点を当てたものが中心だったといいます。
そこで研究チームは、インドネシアのハラール食品研究に絞り、論文の出版動向、主な掲載先や研究機関・研究者、よく使われるキーワードとそのまとまり、そして新たに浮上しているテーマを明らかにすることを目指しました。
論文データベースを使った「計量書誌分析」
用いられたのは計量書誌分析(ビブリオメトリクス)と呼ばれる手法です。個々の論文の中身を読み比べるのではなく、著者、所属機関、掲載誌、引用数、キーワードといった論文の書誌情報を数量的に集計し、研究分野の成長や構造を描き出す方法です。
研究チームは2026年8月、国際的な学術文献データベースScopusで、題名・要旨・キーワードに「halal food」を含む文献を、出版年を限定せずに検索しました。得られた2,635件から、インドネシアに関わるもの、論文・会議論文・レビューといった文書の種類、英語またはインドネシア語であることなどの条件で絞り込み、最終的に714件を分析対象としています。
集計には表計算ソフトのほか、VOSviewerやBibliometrix/Biblioshinyといった分析ツールが使われました。たとえば「キーワードの共起分析」では、同じ論文の中で一緒に使われやすい言葉の組み合わせを調べ、研究テーマのまとまりを浮かび上がらせます。
2023〜2025年に急増、三つの研究の流れ
論文によると、2000年代には発表数はわずかでしたが、2010年以降に徐々に増え、2014年ごろから安定して出るようになりました。2018年以降は伸びが目立ち、特に2023年の約92件から2024年の約113件、2025年の約125件へと最も大きく拡大しています。2026年の数が少ないのは、データ取得時点で年の途中だったためで、減少を意味するものではないと著者らは説明しています。
掲載先では、イスラムの原則とマーケティング・消費者行動を扱う学術誌が65件で最多でした。一方で、会議録や食品科学、化学、獣医学、工学系の媒体も上位に並び、研究が消費者・市場の視点から科学技術の視点まで幅広く発信されていることが示されました。所属機関ではガジャマダ大学が116件で最も多く、インドネシア国内の大学が中心となりつつ、マレーシアの大学も上位に入っています。研究者別では、最も多い研究者が61件と、2位の研究者の3倍以上の論文に関わっていました。
キーワードの分析からは、互いにつながり合う三つの研究の流れが見いだされました。一つ目は、ハラール食品、消費者、認証、そしてそれらを支えるハラールの仕組み全体(エコシステム)に関する流れ。二つ目は、肉製品などのハラール性の真正判定、異物や非ハラール成分の混入(偽装)、分子レベルでの識別に関する流れ。三つ目は、高度な分析機器や分析技術を扱う流れです。
最近の研究では、真正判定に加え、DNA分析、特定のDNAを増やして検出するPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)、多数の測定データを統計的に読み解くケモメトリクス、分光分析、タンパク質を網羅的に調べるプロテオミクスといった技術への関心が高まっていると報告されています。
宗教的な問いから、科学と技術に支えられた分野へ
著者らは、インドネシアのハラール食品研究が、宗教上の適合性や消費者の問題にとどまらず、科学的な裏付けと技術を備えた、学際的なハラール保証の仕組みへと発展しつつあると結論づけています。そのうえで今後の研究では、認証制度、消費者の信頼、科学的な真正判定、デジタル技術による追跡可能性、サプライチェーンの健全性、ハラールとタイイブ、持続可能性を結びつけて扱うことが求められると提案しています。
個別に進んできた多様な研究を一つの地図に描き直したことで、この分野がどこに力を注ぎ、どのように広がってきたのかが見通しやすくなった点に、この研究の意味があります。
著者:Najmudin(Universitas Airlangga)、Ririn Tri Ratnasari、Sri Herianingrum(Department of Islamic Economics, Faculty of Economics and Business, Universitas Airlangga)、Ari Prasetyo(Department of Islamic Economics, Faculty of Economics and Business, Universitas Airlangga)、Nurul Fadhilah(Department of Islamic Economics, Faculty of Economics and Business, Universitas Sultan Ageng Tirtayasa)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Najmudin, Ririn Tri Ratnasari, Sri Herianingrum, Ari Prasetyo, Nurul Fadhilah Halal Food Research in Indonesia: A Bibliometric Review and Future Research Direction. LAN TABUR Jurnal Ekonomi Syariah 2026-09-29. DOI: 10.53515/lt.v8i1.286. 原著ライセンス:CC BY-SA 4.0.
本紹介記事の文章(題名・見出しを含む)は、CC BY-SA 4.0で提供します。原著論文をもとにNutriMap Japanが日本語で要約・説明を加えています。対象は本紹介記事の文章に限り、ヒーロー画像・サイトのロゴ・画面デザイン・他の記事・データベース全体は含みません。