著者の所属・活動拠点の国は、イギリスです。
掲載誌:International Journal of Scientific Research in Science and Technology
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
インドネシアで人気の軽食「チロック」は、主にタピオカ粉で作る、もちもちとした団子状の食べ物で、チリソースやピーナッツソースを添えて食べられます。著者らは、学齢期の子どもはたんぱく質を含む栄養が不足しやすく、学校で口にする軽食の質がその栄養に影響すると指摘しています。一方、タピオカ粉が主原料のチロックは、たんぱく質が少ない食品です。
そこで研究チームが注目したのが、ヤシオオオサゾウムシという甲虫の幼虫「サゴワーム」です。現地では焼いたり揚げたりして食べられ、粉末にするとたんぱく質が豊富な食材になると先行研究で報告されています。研究チームは、このサゴワーム粉をチロックに加えた製品「Cilokgu」を作りました。そして、粉の配合量の違いが色・香り・味・食感・見た目・好ましさにどう影響するかを調べ、最も評価の高い配合について栄養成分を分析しました。
どのように調べたか
研究チームは、サゴワーム粉の配合を5%、7.5%、10%とした3種類のチロックを用意し、それぞれ3回ずつ繰り返して作りました。評価したのは、食品の官能評価(人の五感で品質を判定する試験)の基礎を学んだ栄養学科の学生41人です。どの試料がどの配合かは評価者に知らせず、提供の順番も乱数で決めて、順序による先入観が入らないよう工夫しました。
評価者は試料ごとに、色、香り、味、食感、見た目、全体としての好ましさを段階で採点しました。研究チームは、配合による差があるかを統計的に検定し、差がある場合はどの配合の間に違いがあるかを調べました。最も評価の高かった配合については、検査機関でエネルギー、たんぱく質、脂質、炭水化物などを測定しました。
主な結果
論文によると、サゴワーム粉の配合量の違いは、色、味、食感、見た目、全体の好ましさの評価に統計的に意味のある差をもたらしました。一方、香りには有意な差がみられず、どの配合でも「生臭くない」と評価した人が多数でした。著者らは、ゆでる工程やニンニク・香辛料が臭いを和らげた可能性を挙げています。
配合量が多いほど色は暗くなり、もちもち感は弱まる傾向がありました。著者らは、色の変化をたんぱく質と糖が加熱で反応する「メイラード反応」によるもの、食感の変化をデンプンが固まる働きが妨げられたためと説明しています。全体の好ましさでは、「少し好き」「まあまあ好き」「好き」と答えた人の合計が5%配合で85.3%、7.5%で82.9%、10%で78.1%でした。5%配合はほかの2つと有意に異なりましたが、7.5%と10%の間に有意差はありませんでした。
これらの結果から、研究チームは5%配合を最良の配合に選びました。この配合は、やや暗い灰色がかった白色で、生臭さがなく、ほどよいうま味ともちもち感があり、見た目も好ましいと評価されています。
5%配合の製品100グラムあたりの分析値は、エネルギー202.33キロカロリー、たんぱく質4.76グラム、脂質2.21グラム、炭水化物40.85グラムでした。著者らは、文献に示された一般的なチロックのたんぱく質量(100グラムあたり2.45グラム)より多いと報告しています。また、7〜12歳の子どもの1日の推奨量と比べると、1食100グラムでたんぱく質のおよそ1割にあたると試算しています。エネルギーは一般的なチロックより低い値でした。なお、水分が51.35%と多く傷みやすいため、著者らは冷蔵または冷凍での保存を勧めています。
研究が示すこと
この研究は、身近な軽食に昆虫由来の粉を少量加えることで、評価者に受け入れられる食味を保ちながら、たんぱく質の量を一般的なチロックより高められたことを報告しています。同時に、加える量を増やすほど色や食感の評価が下がる傾向も示されており、栄養と食べやすさのバランスをとる配合の目安として5%が示されました。
原著論文の著者・所属:Meilinasari(University of Leeds)、Anastu Regita Nareswara(University of Leeds)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Meilinasari, Anastu Regita Nareswara. Modification of the Addition of Sago Worm Flour (Rhynchophorus ferrugineus) on the Organoleptic Quality, Acceptability Level, and Nutritional Content of Cilok. International Journal of Scientific Research in Science and Technology 2026-08-14. DOI: 10.32628/ijsrst2613419. 原著ライセンス:CC BY.