著者の所属・活動拠点の国は、アメリカ、パキスタン、中国、ロシア、サウジアラビアです。

掲載誌:Food and Energy Security

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

収穫した穀物を長く保管するには、穀粒に含まれる水分を下げておくことが重要です。研究チームは、湿気を吸い取る物質である乾燥剤を使う方法に注目しました。著者らは、この方法は既存の乾燥方法に代わる有効な選択肢になり、エネルギー効率を保ちながら種子の品質を高められると位置づけています。

この研究では、小麦を長期間貯蔵するときに乾燥剤がどれほど役立つかを評価しました。評価の対象は、穀粒そのものの品質、貯蔵中に発生する害虫、そして小麦粉や食品に加工したときの性質です。

何を調べたか

研究チームが比べた乾燥剤は5種類です。ゼオライト、シリカゲル、塩化カルシウム、五酸化二リン、珪藻土を使い、管理された条件のもとで小麦を貯蔵しました。乾燥剤を使わない対照区とも比較しています。

調べた項目は多岐にわたります。穀粒については、水分量、損傷の割合、重量の減少、発芽率を測りました。害虫については、貯蔵穀物の代表的な害虫であるコナナガシンクイムシ(Rhyzopertha dominica)とコクヌストモドキ(Tribolium castaneum)の成虫の数を記録しました。さらに、たんぱく質、脂質、でんぷん、灰分、繊維といった基本的な栄養成分も測定しています。

加工面では二つの評価を行いました。一つは、小麦粉に水を加えてこねたときの生地のふるまいを調べる分析です。もう一つは、その小麦粉で作ったチャパティの食感の測定です。チャパティは南アジアなどで食べられる発酵させない平焼きパンで、食感は硬さや弾力などを機械で数値化する方法で評価しました。

主な結果

論文によると、五酸化二リンは調べたすべての項目で一貫して対照区より良い成績を示しました。4か月の貯蔵後、穀粒の水分量は当初の15.0%から最低で10.89%まで下がりました。損傷した穀粒は5.77%、重量の減少は1.76%にとどまり、発芽率は92.67%でした。

害虫の成虫数も、五酸化二リンを使った区ではほかのどの処理区よりも少なくなりました。コナナガシンクイムシは13.50、コクヌストモドキは11.25と報告されています。

栄養成分もおおむね保たれていました。たんぱく質は13.15%から13.06%へ、脂質は1.70%から1.68%へ、でんぷんは67.40%から66.52%へと、いずれもわずかに減っただけでした。灰分は1.54%から1.59%へ、繊維は2.20%から2.26%へと小さく増えています。

加工面の結果もまとめておきます。五酸化二リンで処理した小麦の粉は、吸水率が56.22%と低くなりました。生地がこね上がるまでの時間は5.13分、生地が安定した状態を保つ時間は7.55分と、いずれも長くなりました。著者らはこれらを機能的な性質の改善と報告しています。

チャパティの食感では、硬さ、噛みごたえ、強靭さを示す値が低くなりました。一方で、まとまりの良さ、弾力、復元力を示す値は高くなりました。

これらの差は、統計的に意味のある差(p≤0.01)として報告されています。

研究が示す意味

研究チームは、乾燥剤による処理、とくに五酸化二リンが、穀粒の品質を保ち、小麦粉の加工性を高め、食感がよく受け入れられやすいチャパティにつながると結論づけています。

そのうえで著者らは、乾燥剤を使った貯蔵法は燻蒸や合成殺虫剤に代わる有望な手段になりうると述べています。また、複数の手段を組み合わせて害虫を抑える「総合的病害虫管理」に取り入れることで、持続可能な小麦の貯蔵に役立つ可能性も示しています。湿気を管理するという身近な考え方が、穀物の品質と害虫対策の両方に関わることを示した研究です。

原著論文の著者・所属:Hafiz Muhammad Bilal Yousuf(Department of Agricultural and Biosystems Engineering Iowa State University Ames Iowa USA; Department of Entomology, Faculty of Agriculture and Environment The Islamia University of Bahawalpur Bahawalpur Pakistan)、Muhammad Yasin(Department of Entomology, Faculty of Agriculture and Environment The Islamia University of Bahawalpur Bahawalpur Pakistan)、Aiman Noreen(Institute of Health Sciences Khwaja Fareed University of Engineering and Information Technology Rahim Yar Khan Pakistan)、Kurt A. Rosentrater(Department of Agricultural and Biosystems Engineering Iowa State University Ames Iowa USA)、Umair Ali(Department of Food Science and Technology, Faculty of Agriculture and Environment The Islamia University of Bahawalpur Bahawalpur Pakistan)、Muhammad Naeem(Key Laboratory of Biomass Chemical Engineering (Education Ministry), College of Chemical and Biological Engineering Zhejiang University Zhejiang Hangzhou China)、Nazih Y. Rebouh(Department of Environmental Management, Institute of Environmental Engineering RUDN University Moscow Russia)、Abdulrahman Saad Aldawood(Department of Plant Protection, College of Food and Agricultural Sciences King Saud University Riyadh Saudi Arabia)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Hafiz Muhammad Bilal Yousuf, Muhammad Yasin, Aiman Noreen, et al. Desiccant‐Mediated Moisture Regulation for Sustainable Wheat Storage: Impacts on Grain Quality, Pest Suppression, and End‐Use Quality. Food and Energy Security 2026-10-31. DOI: 10.1002/fes3.70347. 原著ライセンス:CC BY.