著者の所属・活動拠点の国は、イランです。
掲載誌:BMC Nutrition
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的:知識の「偏り」に着目する
ビタミンDはカルシウムやリンの調節に欠かせない栄養素ですが、その不足は世界的に広くみられます。著者らによると、日差しが豊富な中東地域でも不足の割合は高く、イランでも多くの成人で血中濃度が推奨値を下回っています。屋内で長時間学ぶ大学生は、日光を浴びる時間や食事の偏りから特に影響を受けやすいとされています。
これまでの調査では、医療系の学生はビタミンDについて一般的な知識を持っていても、どの食品に多く含まれるかといった栄養面の知識や、実際の行動には大きな差があることが指摘されてきました。研究チームは、イラン北西部・西アーザルバーイジャーン州のホイ医科大学で、食事に重点を置いた体系的な教育が、学生のビタミンDに関する知識・態度・実践(KAP)を改善するかを調べました。この大学は北緯約38.5度にあり、冬が長く日照時間が短い地域です。
どのように調べたか
研究には看護、救急医療、手術室技術、公衆衛生などを学ぶ学生132人が参加し、くじ引きに相当する方法(ランダム化)で、教育を受ける介入群66人と比較のための対照群66人に分けられました。参加者と評価担当者には、誰がどちらの群かが分からないようにしてあります。
介入群は4週間にわたり、1回60分の講習を4回受けました。ビタミンDの体内での働きや日光浴の基礎に加え、魚、卵黄、レバー、強化乳製品、紫外線を当てたキノコといった食品源、調理法や吸収を高める食べ方、イランの伝統料理への取り入れ方などを中心に学び、最終回では個人の行動計画を立てました。対照群も同じ講師から同じ回数・形式の講習を受けましたが、内容は衛生や睡眠、ストレス管理など、ビタミンDとは無関係の健康テーマでした。
効果の測定には、イランで開発・検証された38項目の質問票「D-KAP-38」を使い、一般知識、栄養知識、態度、自己申告による実践の4分野を、講習前と講習終了から3か月後に評価しました。参加者全員が最後まで調査に参加しました。
主な結果:最も伸びたのは栄養に関する知識
講習前の時点で、学生の一般知識の得点は満点に対して平均約86%と高かった一方、栄養知識は約59%、実践は約52%にとどまっていました。知識はあっても、食事面の理解と行動が弱いという構図が確認された形です。
講習後、介入群では4分野すべてで得点が上がり、上昇幅は一般知識で約9ポイント、栄養知識で約18ポイント、態度で約7ポイント、実践で約8ポイントでした。対照群では一般知識などに一定の上昇がみられたものの介入群より小さく、栄養知識はほとんど変化しませんでした。
講習前の得点の差を考慮して両群を比べると、4分野すべてで介入群が統計的に有意に上回りました。差が最も大きかったのは栄養知識で、介入群が約21ポイント高い結果でした。複数の分野を同時に検定することを考慮したより厳しい基準で確かめても、4分野すべての差は有意なままだったと報告されています。
この研究が示すこと
著者らは、4回の食事中心の教育によって、医療系学生のビタミンDに関する知識・態度・自己申告の実践が改善し、とりわけ従来もっとも弱かった栄養知識が大きく伸びたと結論づけています。将来、患者に栄養や予防について助言する立場となる学生にとって、食事面の理解を補う教育の有効性を示した結果といえます。
ただし、今回の結果は質問票による知識と自己申告に基づくもので、実際に血中のビタミンD濃度が改善したかどうかは示していません。血液検査の結果は同じ試験の別の報告で扱われます。また著者ら自身、試験の登録が参加者募集の後に行われたこと、一般知識の得点がもともと満点近くだったことなどを挙げ、結果は慎重に解釈すべきだとしています。
原著論文の著者・所属:Mehrdad Karimi(Department of Public Health Khoy University of Medical Sciences Khoy Iran)、Habibeh Matin(Department of Public Health Khoy University of Medical Sciences Khoy Iran)、Jaleh Bagheri Hamzyan Olia(Department of Basic Medical Sciences Khoy University of Medical Sciences Khoy Iran)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Mehrdad Karimi, Habibeh Matin, Jaleh Bagheri Hamzyan Olia. Effect of structured, diet-focused educational intervention on knowledge, attitude, and practice related to vitamin D among medical science students: a randomized controlled trial. BMC Nutrition 2026-10-21. DOI: 10.1186/s40795-026-01526-7. 原著ライセンス:CC BY.