著者の所属・活動拠点の国は、カメルーンです。
掲載誌:Trends in Medical Research
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
2型糖尿病は、血糖値が高い状態が続く慢性の病気です。その合併症の中でも、腎臓の働きが徐々に落ちていく慢性腎臓病は特に深刻で、治療の負担も大きいことが知られています。著者らによると、チャドを含むアフリカの多くの国では早期の検査や腎臓専門の医療を受けにくく、診断が遅れやすいといいます。そのため、腎機能低下と関係する要因を見つけることが重要な課題とされています。
ビタミンDは骨の健康との関わりで知られていますが、炎症の調節や腎臓の組織にも関わると考えられています。欧州、アジア、北米では、糖尿病患者でビタミンDが低いことと腎機能低下との関連が報告されてきました。一方、サハラ以南のアフリカ、とくにチャドではこうしたデータがほとんどありません。そこで研究チームは、糖尿病の第一選択薬であるメトホルミンで治療を受けている2型糖尿病患者を対象に、ビタミンD欠乏と腎機能低下の関連を調べました。
何を調べたか
調査は2025年4月から6月にかけて、チャドの首都ンジャメナにある国立の基幹大学病院で行われました。メトホルミンを6か月以上使っている成人の2型糖尿病患者88人が参加しました。糖尿病以外の原因による腎臓病がある人や、最近ビタミンDのサプリメントを使った人は対象から除かれています。参加者の平均年齢は約57歳で、約6割が男性でした。
研究チームは12時間の絶食後に採血し、体内のビタミンD量の目安となる血中25-ヒドロキシビタミンD、腎機能の指標であるクレアチニンと尿素、血液中のたんぱく質であるアルブミン、過去1〜2か月の血糖の平均を反映するHbA1c、空腹時血糖などを測りました。腎臓が血液をろ過する能力は、クレアチニンなどから計算するeGFR(推算糸球体ろ過量)で評価しました。ビタミンD欠乏は血中濃度20 ng/mL未満、腎機能低下はeGFRが60 mL/min/1.73 m²未満と定義しています。
この研究は、ある一時点の状態を調べる横断研究です。研究チームは、交絡因子(結果に影響しうるほかの要因)を調整する多変量解析を用いて、腎機能低下と独立して関連する要因を分析しました。
主な結果
ビタミンD欠乏は参加者の35.2%にみられました。不足が31.8%、正常が33.0%で、3分の2以上がビタミンDの十分でない状態でした。腎機能低下は30.7%にみられ、その中ではステージ3aと呼ばれる段階が最も多くを占めていました。
ビタミンD欠乏の人たちは、不足や正常の人たちと比べてeGFRが低く、クレアチニンが高く、アルブミンが低かったと報告されています。平均eGFRは、欠乏群で約53、不足群で約63、正常群で約70でした。一方、血清尿素の値にはビタミンDの状態による差がみられませんでした。
ほかの要因を調整した分析では、ビタミンD欠乏がある人は腎機能低下を伴うオッズが約3.8倍高いという結果でした(95%信頼区間1.40〜10.20)。HbA1cや空腹時血糖が高いこと、アルブミンが低いこと、クレアチニンが高いことも、腎機能低下と独立して関連していました。また、ビタミンD欠乏そのものは、女性であること、肥満、運動不足の生活と関連していたと報告されています。
この研究が示すこと
著者らは、チャドのメトホルミン治療中の2型糖尿病患者では、ビタミンD欠乏も腎機能低下もよくみられ、両者が関連していることを報告しました。そのうえで、ビタミンDと腎機能を日常的に確認することが、糖尿病による腎臓病のリスクが高い患者を早く見つける助けになる可能性があると述べています。
ただし、この研究は一時点の状態を調べたものであり、ビタミンD欠乏が腎機能低下を引き起こすのか、腎機能低下の結果としてビタミンDが減るのかは判断できません。参加者が88人と少ないこと、腎臓病の重要な指標である尿中アルブミンを測っていないことも、著者ら自身が限界として挙げています。それでも著者らは、データが乏しい地域から糖尿病患者のビタミンD状態と腎機能の関係を示した点に、この研究の価値があるとしています。
原著論文の著者・所属:Clautilde Teugwa Mofor(Department of Biochemistry , Faculty of Science , Laboratory of Phytobiochemistry and Medicinal Plants Studies , University of Yaoundé I , P.O. Box 812 , Yaoundé , Cameroon; Department of Biochemistry , Faculty of Science , University of Dschang , Dschang , Cameroon)、Berambaye Renaud(Faculty of Health Sciences , University of Buea , Buea , Cameroon)、Denis Zofou(Department of Biochemistry , Faculty of Science , University of Dschang , Dschang , Cameroon)、Florian Amel Tekou(Department of Biochemistry , Faculty of Science , University of Dschang , Dschang , Cameroon)、Jean Paul Dzoyem(Department of Biochemistry, Faculty of Science, University of Dschang, Dschang, Cameroon)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Clautilde Teugwa Mofor, Berambaye Renaud, Denis Zofou, et al. Association Between Vitamin D Status and Renal Impairment in Type 2 Diabetic Patients Treated with Metformin in N'Djamena (Chad). Trends in Medical Research 2026-09-20. DOI: 10.3923/tmr.2026.77.86. 原著ライセンス:CC BY.