著者の所属・活動拠点の国は、ルーマニアです。
掲載誌:Nutrients
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
ビタミンDは、カルシウムとリンの体内バランスを保ち、骨が正常に作られるのを支える栄養素です。乳児期は成長と骨の形成が急速に進む時期で、重い欠乏が長く続くと、くる病などにつながることがあります。体内のビタミンDの状態は、血液中の「25-ヒドロキシビタミンD(25(OH)D)」という物質の濃度で評価するのが一般的です。
ルーマニアでは、年長の子どもや新生児、早産児についてはビタミンD不足が少なくないことが報告されてきました。一方、生後6か月未満の乳児についてのデータは限られていました。そこで研究チームは、ルーマニア北西部の生後1〜5か月の乳児を対象に、ビタミンDの状態を調べ、ビタミンD補充の量、栄養方法(母乳・人工乳・混合)、採血した季節との関係を検討しました。
調べた方法
研究は、クルジュ=ナポカにある大学関連の小児病院1施設で、2023年1〜12月に専門的な検査のため入院し、血中25(OH)D濃度を測定した生後1〜5か月の乳児の記録をさかのぼって分析したものです。早産児、慢性疾患のある乳児、カルシウムやビタミンDの代謝に異常のある乳児は除外されました。栄養方法とビタミンDの1日量は、入院時に保護者が申告した情報で、補充を続けた期間や飲ませ忘れの有無などは記録されていませんでした。
血中25(OH)D濃度は、12 ng/mL未満を「欠乏」、12以上20 ng/mL未満を「不足」、20〜100 ng/mLを「充足」、100 ng/mLを超える場合を「過剰の可能性」と分類しました。著者らは、血中濃度が高いだけでは中毒とは判断できず、カルシウム代謝の乱れを確認する必要があるため、「中毒」ではなく「過剰の可能性」という表現を使ったと説明しています。
主な結果
対象は219人(女児124人、男児95人、年齢の中央値4か月)でした。血中25(OH)D濃度の中央値は61.24 ng/mLで、94.5%が「充足」に該当しました。「欠乏」と「不足」はそれぞれ0.9%(各2人)、100 ng/mLを超える「過剰の可能性」は3.7%(8人)でした。
ほぼ全員の97.3%がビタミンDの補充を受けており、約4分の3が1日1000 IUを摂っていました。血中濃度の中央値は、補充なしで32.8、1000 IUで57.2、1500 IUで86.0、2000 IUで95.8 ng/mLと、申告された量が多いほど高く、すべてのグループ間で統計的に意味のある差がありました。100 ng/mLを超えた8人のうち7人は2000 IU、1人は1500 IUを摂っていました。
栄養方法別では、母乳で育つ乳児の濃度(中央値67.1 ng/mL)が人工乳の乳児(57.7 ng/mL)より高く、この2群の間でのみ統計的な差が認められました。ただし母乳に含まれるビタミンDはもともと少なく、母乳の乳児では1日1500〜2000 IUの補充を受けている割合が高かった(34.2%、人工乳では11.4%)ことから、著者らは、栄養方法そのものが原因というより、補充量の違いなど背景の違いを反映している可能性があるとしています。
採血した季節による濃度の差は、統計的には認められませんでした(中央値は冬の55.2から春の63.7 ng/mLの範囲)。著者らは、ほぼ全員が補充を受けていたことで、日光による季節の影響が目立たなくなった可能性を挙げています。
この研究が示すこと
この病院の乳児では、ビタミンD補充が広く行われ、ほとんどの子が十分な濃度を保っていました。一方で、実際に使われていた量は、国内指針(健康な乳児で1日400〜800 IU)や、1日400 IUを勧める多くの国際的な指針を上回ることがほとんどでした。著者らは、国内でよく使われる滴下剤が1滴約500 IUであることも、こうした量の背景にあると考えています。
研究チームは、カルシウム代謝のデータがないため、100 ng/mLを超えた濃度を中毒とはみなせないとしたうえで、高い濃度を目指すのではなく、推奨されている予防量を守ることの大切さを支持する結果だとまとめています。なお、1施設の入院児を対象にした観察研究であり、示されたのは関連であって因果関係ではない点にも著者らは注意を促しています。
原著論文の著者・所属:Ioana Badiu Tișa(Department of Nursing, Faculty of Nursing and Health Sciences, “Iuliu Hațieganu” University of Medicine and Pharmacy, 2-4 Câmpeni Street, 400217 Cluj-Napoca, Romania)、Anamaria Cozma-Petruț(Department of Bromatology, Hygiene, Nutrition, Faculty of Pharmacy, “Iuliu Hațieganu” University of Medicine and Pharmacy, 6 Pasteur Street, 400349 Cluj-Napoca, Romania)、Elisabeta Ioana Hirișcău(Department of Nursing, Faculty of Nursing and Health Sciences, “Iuliu Hațieganu” University of Medicine and Pharmacy, 2-4 Câmpeni Street, 400217 Cluj-Napoca, Romania)、Sorana D. Bolboacă(Department of Medical Informatics and Biostatistics, Faculty of Medicine, “Iuliu Hațieganu” University of Medicine and Pharmacy Cluj-Napoca, 6 Louis Pasteur Street, 400349 Cluj-Napoca, Romania)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Ioana Badiu Tișa, Anamaria Cozma-Petruț, Elisabeta Ioana Hirișcău, et al. Vitamin D Status Among Infants Aged 1–5 Months in Northwestern Romania: A Single-Center Study and Implications for Infant Care and Management. Nutrients 2026-10-22. DOI: 10.3390/nu18213471. 原著ライセンス:CC BY.