この研究は、メキシコ、ボリビアの研究機関の研究論文です。

掲載誌:Journal of Ethnic Foods

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

伝統の焼きトウモロコシ菓子を科学的に調べる

メキシコ南東部のテワンテペク地峡では、先住民サポテカの人々の食文化が今も受け継がれています。その代表的な食べ物が「トトポ」です。トトポは水分が10%未満になるまで焼き上げた、パリッとして硬いトルティーヤの一種です。この地域では、在来トウモロコシ品種「サパローテ・チコ」を原料に、主に女性たちが手作業で作り、その技術を世代から世代へ伝えてきました。

特徴的なのは「コミスカル」と呼ばれる伝統的な土の窯で焼くことです。深さ約50cmの地中に設けた粘土製の窯で、中央で薪を燃やし、熱くなった内壁に生地の円盤を貼り付けてじっくり焼きます。生地には膨らみを防ぐための小さな穴を開けます。この穴は、地域の産物であることを示す目印にもなっています。

研究チームは、地峡のトトポについて基本的な栄養成分、ミネラル、抗酸化性に関わる成分を測定しました。そのうえで、伝統的な製法が栄養面にどう関わるかを考察し、トトポを先住民の食文化の中に位置づけることを目的としました。

6つの町のトトポを分析

著者らは、都市部と農村部、沿岸部と内陸部を含む地峡の6つの自治体の市場でトトポを購入しました。各自治体から50枚ずつ、合計300枚です。いずれもサパローテ・チコを使い、地域で一般的な伝統製法で作られたものです。この製法では、トウモロコシを石灰(水酸化カルシウム)を加えたアルカリ液で処理する「ニシュタマリゼーション」を行い、その生地を焼きます。

各自治体の50枚のうち40枚は粉砕して混ぜ合わせ、その町の代表試料として化学分析に使いました。測定項目は、水分、たんぱく質、脂質、食物繊維、総糖、pH、ミネラル、推定エネルギーです。残る10枚は1枚ずつ球状の器具で押しつぶし、割れるまでの力の変化から硬さや食感を数値化しました。植物由来の成分であるフェノール類の量と抗酸化活性は、トトポの生産や流通が盛んな2つの自治体、サン・ブラス・アテンパとサント・ドミンゴ・テワンテペクの試料に絞って測定しました。

低脂肪でミネラルを含み、繰り返し割れる食感

論文の報告では、水分は4.0〜5.2%と低く、著者らはこれが微生物の増殖を抑えて日持ちに寄与すると述べています。たんぱく質は7.4〜9.2%、食物繊維は1.3〜2.7%でした。総糖は2.8〜11.2%と幅がありました。研究チームは、窯の温度や焼き時間が標準化されていないことなど、加熱条件のばらつきが一因になりうると考察しています。pHはすべての試料で6でした。

脂質は0.1%未満で、推定エネルギーは100gあたり41〜82kcalと報告されました。著者らは、揚げて作る市販スナックについて他の文献が報告した値(脂質約21〜32%、エネルギー約472〜512kcal/100g)と比べ、窯で焼く伝統製法のトトポは脂質と熱量が大幅に少ないとしています。

ミネラルでは、カルシウムが最も多く、100gあたり84.51〜129.17mgでした。研究チームは、石灰を使うニシュタマリゼーションがこれに関わると説明し、工業製品について報告されている約20mgより多いとしています。鉄は2.13〜3.01mg、マグネシウムは93.63〜122.89mgでした。ナトリウムはすべての試料で、論文が参照した加工食品向けの目安を下回っていました。著者らは、町ごとのミネラル量の違いには、原料の産地や調理法の差が反映されている可能性があると述べています。

フェノール類と抗酸化活性は、調べた2つの町の間で有意な差がありませんでした。一方、トウモロコシの粒について他の研究が報告した値と比べると減少しており、抗酸化活性は20〜35%低くなっていました。研究チームは、窯の高温と、水分を4〜5%まで下げる長い加熱によって、これらの成分が分解されたためと考えています。

食感の測定では、硬さが7.78〜9.89ニュートンでした。押しつぶしたときの力の記録には、最初の破断の後に小さな山が何度も現れました。著者らはこれを、一度で割れる「パリッ」とした性質よりも、層ごとに割れが続く「ザクザク」とした性質に当たると解釈しています。また、生地に開けた多数の小さな穴が割れの起点となり、割るのに必要な力を小さくしていると説明しています。

伝統の製法が形づくる食べ物

この研究は、サパローテ・チコとコミスカル窯という地域固有の素材と技術で作られるトトポが、脂質の少なさ、ミネラルの含有、独特の食感といった特徴を備えていることを、数値で示しました。著者らは、こうした伝統食が栄養面と文化面の両方で価値を持ち、その生産と消費がサポテカの食文化を守ることにつながると論じています。

著者:Irene Chaparro Hernández(Instituto Politécnico Nacional-CIIDIR Oaxaca, Calle Hornos 1003, Colonia Noche Buena, 71230, Santa Cruz Xoxocotlán, Oaxaca, México)、Lilia Leticia Méndez‐Lagunas(Secretaría de Ciencia, Humanidades, Tecnología e Innovación (SECIHTI), Insurgentes Sur 1582, Colonia Crédito Constructor, 03940, Alcaldía Benito Juárez, México)、Samuel Siles-Alvarado(Universidad Mayor de San Simón, Oquendo Cochabamba, Bolivia)、Josué Barragán-Iglesias(Instituto Politécnico Nacional-CIIDIR Oaxaca, Calle Hornos 1003, Colonia Noche Buena, 71230, Santa Cruz Xoxocotlán, Oaxaca, México)、José Navarro-Antonio(Instituto Politécnico Nacional-CIIDIR Oaxaca, Calle Hornos 1003, Colonia Noche Buena, 71230, Santa Cruz Xoxocotlán, Oaxaca, México)、Pastor T. Matadamas-Ortíz(Instituto Politécnico Nacional-CIIDIR Oaxaca, Calle Hornos 1003, Colonia Noche Buena, 71230, Santa Cruz Xoxocotlán, Oaxaca, México)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Irene Chaparro Hernández, Lilia Leticia Méndez‐Lagunas, Samuel Siles-Alvarado, et al. Nutritional, bioactive, and textural contribution of traditional totopos from the Zapotec culture of Mexico. Journal of Ethnic Foods 2026-10-05. DOI: 10.1186/s42779-026-00330-9. 原著ライセンス:CC BY.