著者の所属・活動拠点の国は、中国です。
掲載誌:Frontiers in Nutrition
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が重症化すると、炎症反応が過剰になり、急性呼吸窮迫症候群や多臓器不全につながることがあります。退院後も、疲労感や睡眠障害などの不調が長く続く人がいることも報告されています。そのため、回復を助け、炎症反応を調整できる治療の手がかりが求められてきました。
その候補の一つとして研究されてきたのが、栄養素やサプリメントです。ビタミンC、ビタミンD、脂肪酸、メラトニン、ザクロジュースなどについて、それぞれ個別の研究はありました。しかし著者らは、既存の研究の多くが一つの栄養素だけを扱っていて、複数の選択肢を横並びで比べられていないと指摘しています。研究ごとに評価する指標がそろっていない点も課題に挙げています。
そこで研究チームは、さまざまな栄養素やサプリメントを通常の治療に上乗せした場合の効果を、炎症の指標と回復に関わる指標の両面から、まとめて比較することを目指しました。
どのように調べたか
著者らは、四つの主要な医学文献データベースを2025年7月22日までの範囲で検索しました。対象にしたのは、COVID-19と診断された患者を無作為に二つ以上のグループに分けたランダム化比較試験です。そのうち、標準治療に栄養素やサプリメントを加えたグループと、標準治療だけのグループを比べた試験を集めました。最終的に45件の試験、合計3,793人の患者のデータが解析に用いられました。
解析には「ネットワークメタ解析」という手法が使われました。これは、試験の中で直接比べられた組み合わせだけでなく、共通の比較相手(今回は標準治療のみ)を介した間接的な比較も合わせて、複数の介入の効果を同時に推定する方法です。
評価した指標は二種類です。一つは血液検査で分かる炎症や免疫の状態で、炎症を促す物質であるインターロイキン6(IL-6)、炎症で増えるたんぱく質のC反応性たんぱく(CRP)、リンパ球数、白血球数、好中球数、そして好中球とリンパ球の比(NLR)が含まれます。もう一つは回復に関わる指標で、死亡者数や、せき・発熱・頭痛・呼吸困難のあった患者の数です。各試験の偏りの危険性や、得られた証拠の確かさも、それぞれ専用の評価の枠組みで判定しました。
主な結果
標準治療だけの場合と比べて統計的にはっきりした差が報告されたのは、三つの組み合わせでした。ビタミンCの上乗せではIL-6が低下しました(6試験・268人、証拠の確かさは「低い」)。ナノクルクミン(ウコンの成分クルクミンを微粒子化したもの)の上乗せではリンパ球数が増加しました(11試験・650人、確かさは「中程度」)。ザクロジュースの上乗せではNLRが上昇しました(6試験・341人、確かさは「非常に低い」)。
一方、白血球数、好中球数、CRPについては、どの栄養素やサプリメントでも標準治療だけの場合と比べて有意な差は見られませんでした。死亡者数や、頭痛・発熱・せき・呼吸困難のあった患者の数でも、有意な差は報告されていません。
ザクロジュースでNLRが上がった結果について、著者らは注意を促しています。NLRの上昇は一般に、炎症の過剰や免疫の乱れを示すと考えられているからです。ザクロジュースでNLRが下がったとする別の試験もあり、著者らはその免疫への作用の詳しい仕組みはまだ十分に解明されていないとしています。ナノクルクミンについても、病気の段階によっては免疫を強めることが逆に炎症を悪化させるおそれがあると論じ、使う対象を慎重に選ぶ必要があると述べています。
結果の受け止め方と意味
著者らは、この解析に多くの限界があることを明記しています。指標によっては対象となった試験の数が少なく、栄養素どうしを直接比べた試験もほとんどありませんでした。そのため比較の多くは標準治療を介した間接的なものです。著者らは、各介入の効果の順位付けは、どれを選ぶべきかを決める確定的な証拠ではなく、仮説を立てるための参考として扱うべきだとしています。
また、ビタミンCによるIL-6の低下幅(約89pg/mL)については、重症と非重症の患者の差が約20pg/mLとされることと比べて臨床的に妥当な範囲を超えている、と著者ら自身が指摘しています。少人数の間接比較にもとづく非常に不安定な推定値であり、確定した効果と解釈すべきではないとしています。
研究チームは、栄養素やサプリメントがCOVID-19患者の回復や炎症反応に与える効果は限られている可能性があると述べています。今回の結果はあくまで補助的な栄養サポートを考えるうえでの予備的な参考にとどまる、という位置づけです。多くの栄養素を同じ枠組みで比べたことで、一部の血液指標には変化が見られた一方、死亡や症状といった回復に関わる指標では、はっきりした違いが確認されなかったことが示されました。
原著論文の著者・所属:Jin Zhao(Clinical School, North Henan Medical University)、Jiayi Chang(Clinical School, North Henan Medical University)、Jianghao Qu(Clinical School, North Henan Medical University)、Fengyuan Li(Clinical School, North Henan Medical University)、Shiyang Zhang(Clinical School, North Henan Medical University)、Yuying Yang(Clinical School, North Henan Medical University)、Tianjiao Zhao(Clinical School, North Henan Medical University)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Jin Zhao, Jiayi Chang, Jianghao Qu, et al. Efficacy of supplementation with nutrients and dietary supplements on recovery and inflammatory response among patients with COVID-19: a network meta-analysis. Frontiers in Nutrition 2026-07-28. DOI: 10.3389/fnut.2026.1825539. 原著ライセンス:CC BY.