著者の所属・活動拠点の国は、スウェーデン、ノルウェー、イタリア、ロシア、イギリスです。

掲載誌:Lipids in Health and Disease

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

魚の油に多く含まれるEPA(エイコサペンタエン酸)とDHA(ドコサヘキサエン酸)は、長い炭素の鎖をもつオメガ3脂肪酸です。著者らが紹介する先行研究では、血中のEPAとDHAが多いことと心血管リスクの低さとの関連が報告されています。そのため、血液中の脂肪酸の割合は、オメガ3の摂取状況を示す目安として研究で広く使われてきました。

一方で、管理された臨床試験では血中の値が大きく変わるのに、日常生活でサプリメントを飲んでいる人々では、飲んでいない人との差が小さく、ばらつきも大きいことが知られています。市販品ごとに含有量や成分の形が違い、飲む量や続け方も人それぞれだからです。

研究チームは、実際のサプリメント利用状況で分けた集団ごとに、血中脂肪酸の構成がどう違うかを大規模に調べました。特に注目したのは、EPAとDHAの合計値と、AA/EPA比の二つです。AA/EPA比は、オメガ6脂肪酸のアラキドン酸(AA)とEPAの比率で、二つの脂肪酸の相対的なバランスを示します。著者らは、この二つの指標がそれぞれ別の情報をもたらすかどうかも検討しました。

何をどう調べたか

分析には、商業的な脂肪酸検査サービスに2012年から2023年に提出された762,150件の検体を使いました。検体は、指先から採った血液をろ紙に染み込ませて乾かす「乾燥血液スポット」と呼ばれる方法で集められています。研究者が介入を行ったわけではなく、ある時点の既存データを振り返って分析する横断研究です。

検体は、登録時のアンケートへの自己申告をもとに三つの群に分けられました。一つ目は「非利用群」で、オメガ3サプリメントを使っていないか、短期間しか使っていない人です。二つ目は「自己判断利用群」で、120日以上サプリメントを使っていると答えた人ですが、製品や量の情報はありません。三つ目は「プログラム利用群」で、120日以上、特定の構造化されたプログラムに参加していると答えた人です。このプログラムでは、魚油とエキストラバージンオリーブオイルを配合した決まった製品を使い、体重に応じた摂取量の目安と、定期的な血液検査の結果のフィードバックが提供されていました。ただし、どちらの利用群についても、実際に飲んだ量や継続状況は記録されていません。

血液中の11種類の脂肪酸を測定し、それぞれが測定した脂肪酸全体に占める割合として表しました。群の間の比較では、年齢、性別、BMI、居住地域の影響を統計的に調整しています。さらに、EPA+DHAの値が同程度の検体どうしでAA/EPA比を比べる分析や、地域による違いの分析も行いました。

主な結果

サプリメントの利用群の違いは、血中脂肪酸の構成の違いと関連していました。群による差が特に大きく表れたのは、長鎖オメガ3に関わる指標とAA/EPA比でした。

調整後のEPA+DHAの平均値は、非利用群で3.30%、自己判断利用群で4.16%、プログラム利用群で5.61%と、段階的に高くなっていました。これは非利用群と比べて、それぞれ26%、70%高い値です。AA/EPA比(幾何平均)は16.6、10.9、5.2と段階的に低くなり、非利用群と比べて34%、69%低い値でした。群の違いで説明される部分の大きさを示す指標(偏η²)は、EPA+DHAで0.274、AA/EPA比で0.352でした。AA/EPA比のほうが、群による差がより大きく表れていたことになります。

自己判断利用群の値は非利用群とプログラム利用群の中間でしたが、ばらつきが大きいという特徴がありました。プログラム利用群ではAA/EPA比の分布がよりまとまっており、地域による差も小さくなっていました。

EPA+DHAが同程度の検体どうしで比べると、AA/EPA比はどの群でもEPA+DHAが高い区分ほど低くなっていました。ただし、EPA+DHAがおよそ10%未満の範囲では、プログラム利用群のAA/EPA比がほかの群より低い傾向が見られました。EPA+DHAがおよそ10〜11%以上になると、三つの群の値はほぼ同じ水準に収束していました。

この研究が示すこと

著者らは、「サプリメントを使っているかどうか」という単純な自己申告の区分でも、集団としての血中脂肪酸の違いはとらえられると述べています。その一方で、この区分は同じ群の中にある大きなばらつきを覆い隠してしまうことも指摘しています。また、AA/EPA比は、EPA+DHAの値だけでは要約しきれない脂肪酸構成の情報を補う指標になりうると論じています。

ただし、この研究は観察研究です。得られた結果は関連を示すもので、特定のサプリメントの使い方が血中の値を変えたという因果関係の証拠ではない、と著者らは強調しています。

原著論文の著者・所属:Emmalee Gisslevik(Zinzino Operations AB, Mölndal, Sweden)、Martina Torrissen(Bioactive Foods AS, Vestby, Norway)、Angela Maria Rizzo(Department of Pharmacological and Biomolecular Sciences, University of Milan, Milan, Italy)、Thomas E. Gundersen(Vitas AS, Oslo, Norway)、Ola Eide(Akobe AS, Viken, Norway)、Paul Clayton(Institute of Interdisciplinary Medicine, Moscow, Russia)、Colin Robertson(University of Central Lancashire, Preston, UK)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Emmalee Gisslevik, Martina Torrissen, Angela Maria Rizzo, et al. Real-world omega-3 supplementation patterns and whole-blood fatty-acid biomarkers: a cross-sectional analysis of 762,150 dried blood spot samples. Lipids in Health and Disease 2026-10-15. DOI: 10.1186/s12944-026-03071-5. 原著ライセンス:CC BY.