日本主導:この研究は、筆頭著者・責任著者、または著者の主要所属が日本の研究機関である研究です。
掲載誌:Universal Journal of Agricultural Research
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
大豆には、油に溶けやすい抗酸化成分であるトコフェロール(ビタミンEの仲間)が多く含まれています。トコフェロールにはα、β、γ、δの4種類があります。一般にはα型の抗酸化力が高いとされますが、大豆に多いのはγ型で、α型は少量です。4種類のうちどれが大豆の抗酸化活性と最も強く関係しているのかは、十分に分かっていませんでした。
抗酸化活性の測り方にはいくつかの方法があり、方法によって評価できる性質が異なります。著者らによると、大豆の脂質抽出物について、4種類のトコフェロールそれぞれと、性質の異なる2つの測定法の結果との関係を体系的に比べた研究はこれまでありませんでした。そこで研究チームは、大豆7品種と小豆1試料を使い、トコフェロールの組成と抗酸化活性の関係を調べました。研究チームは、γ型とδ型がほかの型よりもDPPH法の結果と強く関係し、その関係はFRAP法では異なる形で現れるという仮説を立てました。
何をどのように調べたか
試料は長野県内の小売店で購入した大豆7品種(ナカセンナリ、コウジイラズ、アヤミドリ、黒大豆、ジュウロクスン、アオバツ、クラカケ)と長野県産の小豆です。研究チームはこれらを水に浸してから圧力鍋で煮て、すりつぶしてペースト状にしました。このペーストから有機溶媒で脂質を取り出し、さらにけん化という処理を行いました。この手順によって、イソフラボンなど水になじみやすい成分の大部分が除かれ、油に溶ける成分が中心の抽出物が得られます。
研究チームは、抽出物に含まれる4種類のトコフェロールの量を液体クロマトグラフィーで測りました。抗酸化活性は2つの方法で調べています。DPPH法は、不安定な分子(ラジカル)を消去する力をみる方法です。FRAP法は、鉄イオンを還元する力をみる方法です。最後に、8試料の平均値を使い、各トコフェロールの量と2つの抗酸化活性の値がどの程度連動するかを相関分析で調べました。
主な結果
トコフェロールの組成は試料ごとに大きく異なりました。γ型とδ型が最も多かったのはアオバツで、100gあたりγ型が約19mg、δ型が約10mgでした。黒大豆もγ型とδ型を比較的多く含んでいました。α型とβ型はアヤミドリと黒大豆で多くみられました。小豆はどの種類のトコフェロールも最も少ない水準でした。
DPPH法による抗酸化活性はアオバツで最も高く、ジュウロクスンも比較的高い値でした。小豆や黄色い大豆の品種では低めでした。一方、FRAP法の値はクラカケで最も高く、コウジイラズで最も低くなりました。2つの方法で品種の順位は一致しませんでした。たとえば、アオバツはDPPH法で最も高い値でしたが、FRAP法では中程度にとどまりました。
相関分析では、DPPH法の値とγ型トコフェロールの量との間に強い正の相関がみられました(相関係数0.87)。δ型との間にも強い正の相関がありました(0.81)。α型とβ型との相関は弱いものでした。FRAP法の値は、どの種類のトコフェロールとも明確な相関を示しませんでした。研究チームは、トコフェロールの少ない小豆を除いて大豆7品種だけで分析し直しました。その場合も、DPPH法とγ型・δ型との正の相関は保たれていました。
結果が示すこと
著者らは、大豆の脂質抽出物では、トコフェロールの組成、特にγ型とδ型の量がDPPH法の結果と関係している可能性があると述べています。一方で、FRAP法の結果はトコフェロール以外の要因に影響されている可能性があるとしています。また、2つの測定法は反応の仕組みが異なるため、1つの方法だけでは品種間の違いを十分に捉えきれず、複数の方法を組み合わせることが有用だとしています。
ただし、著者らはいくつかの限界も挙げています。試料数が少ないこと、脂質抽出物にトコフェロール以外の抗酸化成分が含まれていた可能性があること、繰り返し測定は同じ試料からの抽出であり、栽培条件の異なる独立した試料ではないことです。また、相関の分析であるため、特定のトコフェロールが抗酸化活性の原因であるとまでは言えません。この研究は、大豆の油に溶ける成分の抗酸化活性を考えるうえで、トコフェロールの総量だけでなく種類の内訳と測定法の違いに目を向ける必要があることを示しています。
原著論文の著者・所属:Hiroko Seki(Department of Local Produce and Food Sciences , Faculty of Life and Environmental Sciences , University of Yamanashi , Japan)、Toshiharu Nagai(School of Bioscience and Biotechnology , Tokyo University of Technology , Japan)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Hiroko Seki, Toshiharu Nagai. The Relationship between Tocopherol Composition in Soybeans and Adzuki Beans and the Antioxidant Activity (DPPH and FRAP) of Lipid Extracts. Universal Journal of Agricultural Research 2026-09-01. DOI: 10.13189/ujar.2026.140303. 原著ライセンス:CC BY.