著者の所属・活動拠点の国は、イランです。
掲載誌:Food Science & Nutrition
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的:食事パターンと尿酸の関係を時間を追って調べる
血液中の尿酸が多すぎる状態を「高尿酸血症」と呼びます。この研究では、血清尿酸値が男性で7.0mg/dL、女性で6.0mg/dLを超える場合と定義されています。高尿酸血症は痛風の前段階となる重要な状態で、高血圧、慢性腎臓病、メタボリックシンドローム、心血管疾患との関連も指摘されています。食事は変えることのできる要因の一つであり、個々の栄養素だけでなく、食事全体の組み立て方(食事パターン)が尿酸値に影響すると考えられています。
2019年、EAT-Lancet委員会は、増え続ける世界人口を養いながら地球環境の限界を超えないことを目指した「基準食(プラネタリー・ヘルス・ダイエット)」を提案しました。野菜、果物、全粒穀物、豆類、ナッツを重視し、赤身肉(牛・羊・豚の肉)、添加糖、飽和脂肪には明確な上限を設ける食事です。この食事は慢性腎臓病のリスクの低さと関連することが報告されてきました。尿酸は主に腎臓から排出されるため、両者は密接に関わっています。しかし、尿酸そのものを結果として扱い、時間を追って調べた前向き研究はこれまでありませんでした。米国の成人を対象とした先行研究はありましたが、一時点の調査だったため、食事が先か尿酸値の変化が先かという時間的な順序は判断できませんでした。
そこで研究チームは、この基準食をどの程度守っているかを点数化した「プラネタリー・ヘルス・ダイエット指数(PHDI)」に注目しました。その上で、PHDIと、その後に新たに高尿酸血症になること、および血清尿酸値との関連を前向きに調べました。あわせて、どの食品群が関連に寄与しているのか、どのような人で関連が強いのか、別の採点方式でも結果が変わらないのかも検討しています。
何をどのように調べたか
研究は、イランの首都テヘランに住む20〜70歳の成人を対象とする地域住民研究の一部として行われました。2017〜2018年に最初の調査を受け、約5年後の2022〜2023年に同じ方法で再調査を受けた人のうち、最初の時点で高尿酸血症がなかった5773人が分析の対象です。がん、胆石、リウマチ性疾患、甲状腺疾患の既往がある人や、申告されたエネルギー摂取量が極端な人は除かれています。参加者の平均年齢は42.5歳で、男性が約半数を占めました。
食事は、イランの食習慣に合わせて調整された125品目の食物摂取頻度調査票で調べました。過去1年間に各食品をどのくらいの頻度で食べたかを尋ねるものです。この回答からPHDIを算出しました。PHDIは16の構成要素からなり、満点は150点です。全粒穀物や豆類、果物、野菜のように多いほど良い項目、卵や魚、イモ類のように適量が望ましい項目、赤身肉や添加糖のように控えるほど良い項目などで構成されています。点数が高いほど基準食に近い食べ方をしていることを意味し、参加者の平均は50.7点でした。
研究チームは、参加者をPHDIの点数で4つのグループに分けました。そして、点数が最も高いグループの高尿酸血症の起こりやすさを、最も低いグループと比べました。比較の際には、年齢、性別、体格(BMI)、身体活動、経済状況、学歴、喫煙、高血圧、総エネルギー摂取量の影響を統計的に取り除いています。さらに、インスリンの効きにくさ(インスリン抵抗性)を示す指標HOMA-IRが、食事と尿酸をつなぐ役割を果たしているかも分析しました。インスリンには、腎臓での尿酸の再吸収を促す働きがあると考えられているためです。
主な結果
約5年の追跡期間中に、1113人(19.3%)が新たに高尿酸血症になりました。影響しうる要因を調整した結果、PHDIが最も高いグループでは、最も低いグループに比べて高尿酸血症になるオッズ(起こりやすさの指標)が25%低くなっていました(オッズ比0.75)。PHDIの点数が標準偏差1つ分高くなるごとのオッズは12%低いという結果でした。また、5年後の血清尿酸値は、最初の尿酸値を考慮したうえでも、PHDIが標準偏差1つ分高いごとに0.053mg/dL低くなっていました。点数との関係は直線的ではありませんでした。おおよそ50点を超えるとそれ以上の低下はほぼ頭打ちとなり、論文は、関連の大部分が中程度の実践の段階で現れていると述べています。
食品群ごとに見ると、多く食べるほど高尿酸血症のオッズが低かったのは、全粒穀物、豆類、果物、野菜、魚介類、乳製品、植物油、鶏肉などでした。一方、イモ類・でんぷん質の野菜と添加糖は、多いほどオッズが高い方向に関連していました。中でも添加糖の関連が最も強いものでした。ただし著者らは、食品群同士は互いに強く結びついているため、個々の食品の効果を切り分けるのは難しく、解釈には慎重さが必要だとしています。
インスリン抵抗性に関する分析では、PHDIと高尿酸血症の関連の大部分(推定91%)がHOMA-IRを介した経路で説明されるという結果になりました。ただしこの割合の信頼区間は非常に広く、著者らは正確な割合については慎重に解釈すべきだと述べています。
PHDIとの関連は、45歳未満の人、女性、BMIが25以上の人でより明確でした。腎機能や炎症の指標、たんぱく質摂取量などを追加で調整した場合や、腎機能が低下した人を除いた場合でも、関連はおおむね保たれました。地中海食スコアなど既存の食事の質の指標を加えて調整しても、関連は残りました。食事の炎症性を示す指標で調整したときには関連が最も弱まりましたが、統計的な有意性は一部で保たれていました。採点方式の異なる2つの別のEAT-Lancet指数を用いた場合も、同じ方向の関連が確認されました。
この研究が示すこと
この研究は、地球環境への配慮を念頭に設計された食事パターンを守っている人ほど、その後に高尿酸血症になる割合が低く、尿酸値も低い傾向にあったことを、イランの成人を数年間追跡して示しました。この関連は、豆類や全粒穀物が食事の違いを大きく左右する、欧米とは異なる食文化の集団でも見られました。また、研究チームは、インスリン抵抗性がこの関連に関わっている可能性を示しています。ただし、これは観察研究で得られた関連であり、この食事が直接的に尿酸値を下げることを証明したものではありません。
原著論文の著者・所属:Farzam Kamrani(Department of Nutrition, Faculty of Medicine Mashhad University of Medical Sciences Mashhad Iran)、Mobina Imannezhad(Department of Nutrition, Faculty of Medicine Mashhad University of Medical Sciences Mashhad Iran)、Elahe Etesami(Department of Nutrition, SR.C. Islamic Azad University Tehran Iran)、Elham karimi(Student Research Committee Tabriz University of Medical Sciences Tabriz Iran)、Matin Ghanavati(National Nutrition and Food Technology Research Institute (WHO Collaborating Center), Faculty of Nutrition Sciences and Food Technology Shahid Beheshti University of Medical Sciences Tehran Iran)、Jalaledin Mirzay Razaz(Department of Community Nutrition, Faculty of Nutrition and Food Technology, National Nutrition and Food Technology Research Institute Shahid Beheshti University of Medical Sciences Tehran Iran)、Reza Homayounfar(National Nutrition and Food Technology Research Institute (WHO Collaborating Center), Faculty of Nutrition Sciences and Food Technology Shahid Beheshti University of Medical Sciences Tehran Iran)、Ali Nikparast(Student Research Committee Tabriz University of Medical Sciences Tabriz Iran)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Farzam Kamrani, Mobina Imannezhad, Elahe Etesami, et al. Association Between the Planetary Health Diet Index and Serum Uric Acid Levels and Incident Hyperuricemia: Findings From an Iranian Prospective Cohort Study. Food Science & Nutrition 2026-08-01. DOI: 10.1002/fsn3.72279. 原著ライセンス:CC BY.