著者の所属・活動拠点の国は、イラン、スイスです。

掲載誌:Food Science & Nutrition

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

脂質異常症は、血液中のコレステロールや中性脂肪のバランスが崩れた状態です。LDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)、中性脂肪、総コレステロールが高い場合や、HDLコレステロール(いわゆる善玉コレステロール)が低い場合が当てはまります。論文によると、脂質異常症のある人は、脂質が正常な人に比べて心血管疾患のリスクが少なくとも2倍高いとされています。また、中東では54%の人が脂質異常症に該当するという報告も紹介されています。

食習慣は、脂質異常症の重要な要因の一つと考えられています。ただし、人はさまざまな食品や調理法を組み合わせて食事をとります。そのため、一つの習慣だけの影響を切り分けるのは難しいという課題があります。また、一般的な食事評価の指標は、イラン都市部の成人に特有の食文化を十分に反映していない可能性もあります。

そこで研究チームは、この集団に合わせた「食習慣スコア」を作成しました。そのうえで、日々の食習慣を総合的に見たときに、約10年間で脂質異常症を新たに発症するかどうかと関連があるかを調べました。著者らは、食習慣スコアが高い人ほど発症が多いという仮説を立てていました。

調べた方法

研究には、イラン中部ヤズド市で行われている心臓の健康に関する長期調査のデータが使われました。2005〜2006年に、20〜74歳の住民2000人(男女各1000人)を無作為に選んで調査しました。その9.9年後にあたる2015〜2016年に、追跡調査を行っています。開始時点ですでに脂質異常症だった人は除き、追跡調査まで参加した693人を最終的な分析の対象としました。

脂質異常症と判定したのは、次のいずれかに当てはまる場合です。LDLコレステロールが160mg/dL以上、中性脂肪が200mg/dL超、総コレステロールが240mg/dL以上、HDLコレステロールが40mg/dL未満のいずれか、または脂質を下げる薬を使っている場合です。

食習慣は、開始時点の聞き取りで14項目について調べ、それぞれを「健康的」か「そうでないか」の二択で分類しました。項目には、体重管理をしているか、サラダを食べるか、ファストフードをよく食べるか、食卓で塩を足すかが含まれます。さらに、鶏の皮や肉の脂身を取り除くか、高脂肪の乳製品やマヨネーズを使うか、揚げる・焼く・ゆでるといった調理法、食品表示を確認するか、なども調べています。

食習慣スコアでは、健康的な習慣に1点を与えます。そうでない習慣には、その習慣と脂質異常症との関連の強さを点数として与えます。この強さを表すのがハザード比で、発症のしやすさを比で示したものです。14項目の点数を合計した値がスコアとなり、高いほど全体として食習慣が好ましくないことを意味します。参加者はスコアの低い順に4つのグループに分けて比較しました。分析では、結果をゆがめうる要因(交絡要因)として、年齢、性別、身体活動、喫煙、経済状況、学歴の影響を統計的に調整しています。

主な結果

追跡期間中に、分析対象者の65.8%が脂質異常症を発症しました。

個々の習慣を見ると、交絡要因を調整した後でも、次の3つの習慣を持つ人ほど発症リスクが高いと報告されています。体重管理をしていない人のリスクは約1.68倍、サラダを食べない人は約2.46倍、ファストフードをよく食べる人は約1.90倍でした。男女別に見ると、男性では、サラダを食べないこと、体重管理をしていないこと、脂の多い肉を食べることがリスクの高さと関連していました。女性で統計的に意味のある関連が見られたのは、ファストフードの摂取だけでした。

食習慣スコアについては、参加者全体で、スコアが最も高いグループの発症リスクは最も低いグループの約2.58倍でした。男性では約3.56倍で、スコアが上がるにつれてリスクも段階的に高まる傾向が確認されました。女性では、最も高いグループと最も低いグループの比較で統計的に意味のある差は見られませんでした。ただし、スコアに沿ってリスクが変化する傾向は有意だったと報告されています。

研究が示すこと

この研究は、個々の習慣だけでなく食習慣全体に注目し、全体として好ましくない食習慣を持つ人ほど、約10年後に脂質異常症を発症しやすいという関連を示しました。ただし、これは観察研究で得られた関連であり、因果関係を直接証明したものではありません。

著者ら自身も、結果の解釈には注意が必要だと述べています。理由の一つは、追跡できなかった人が33.5%いたことです。その人たちは、年齢、性別、経済状況、学歴の点で、追跡できた人と異なっていました。また、追跡期間中に生活習慣が変わった可能性があり、男女別の分析では推定値の幅が広いものもありました。

こうした留保を踏まえたうえで、著者らは、栄養教育では体重管理、野菜をとること、ファストフードを控えることを重視すべきだと論じています。また、食習慣スコアは、食習慣に注意が必要な人を早い段階で見つけるための簡便な手がかりになりうると考えています。

原著論文の著者・所属:Mohammadtaghi Sarebanhassanabadi(Yazd Cardiovascular Research Center, Non‐Communicable Diseases Research Institute Shahid Sadoughi University of Medical Sciences Yazd Iran)、Abolfazl Mohammadi(Yazd Cardiovascular Research Center, Non‐Communicable Diseases Research Institute Shahid Sadoughi University of Medical Sciences Yazd Iran)、Pedro Marques‐Vidal(Department of Medicine, Internal Medicine Lausanne University Hospital, University of Lausanne Lausanne Switzerland)、Seyedmostafa Seyedhosseini(Yazd Cardiovascular Research Center, Non‐Communicable Diseases Research Institute Shahid Sadoughi University of Medical Sciences Yazd Iran)、Seyedeh Mahdieh Namayandeh(Clinical Research Development Center, Afshar Hospital Shahid Sadoughi University of Medical Sciences Yazd Iran; Yazd Cardiovascular Research Center, Non‐Communicable Diseases Research Institute Shahid Sadoughi University of Medical Sciences Yazd Iran)、Hanieh Montazeri Hedesh(Yazd Cardiovascular Research Center, Non‐Communicable Diseases Research Institute Shahid Sadoughi University of Medical Sciences Yazd Iran)、Sima Mozafari(Yazd Cardiovascular Research Center, Non‐Communicable Diseases Research Institute Shahid Sadoughi University of Medical Sciences Yazd Iran)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Mohammadtaghi Sarebanhassanabadi, Abolfazl Mohammadi, Pedro Marques‐Vidal, et al. Association Between Dietary Habits and Their Scores With the 9.9‐Year Incidence of Dyslipidemia in an Urban Adult Population: Findings From a Prospective Cohort Study. Food Science & Nutrition 2026-08-01. DOI: 10.1002/fsn3.72249. 原著ライセンス:CC BY.