著者の所属・活動拠点の国は、イタリア、アメリカです。

掲載誌:Nutrients

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

食品表示への関心は健康状態と関係するのか

偏った食生活は、高血圧や肥満、2型糖尿病などを通じて、死亡や体の機能低下の大きな要因になるとされています。食品のパッケージにある栄養成分表示は、エネルギーや栄養素の情報を買い物の場で伝え、消費者がより良い食品を選べるようにする仕組みです。これまでの研究でも、栄養表示を読む人は食生活が比較的健康的である傾向が報告されてきました。

一方で、食品表示を読む習慣と、食事・運動・体重・血圧・血糖・コレステロールなどをまとめて評価する総合的な心血管の健康指標との関係を、実生活の集団で調べたデータは少ないと研究チームは指摘しています。そこで著者らは、食品表示への注意が、食習慣、BMI(体格指数)、そして米国心臓協会が提唱する「Life's Essential 8」という心血管の健康スコアとどう関係しているかを調べました。

街頭の健康チェックに参加した成人を分析

研究チームは、イタリア各地で行われている健康増進プロジェクト「Look-Up 8+」のデータを用いました。このプロジェクトでは、広場やショッピングモール、地域のイベントなどで、18歳以上の人が自由に参加できる健康チェックを実施しています。今回の分析は、食品表示に関する質問が体系的に尋ねられた2025年の参加者を対象とし、必要なデータがそろった7401人(女性55.5%、平均年齢54.4歳)が含まれました。

参加者は聞き取り式の質問票で生活習慣を答え、指先からの少量の採血でコレステロールと血糖値を測ったほか、身長・体重・血圧も測定されました。食品表示については「いつも注意して読む」「ときどき読む」「まったく読まない」「関心がない」から選んでもらい、「いつも読む」と答えた人を「常に読む人」、それ以外をまとめて「あまり読まない・読まない人」として比較しました。

心血管の健康スコアは、食事、身体活動、喫煙、睡眠、BMI、血圧、総コレステロール、血糖の8項目をそれぞれ0〜100点で評価し、その平均として算出されます。点数が高いほど心血管の健康状態が良好であることを示します。なお、この研究での「健康的な食事」は、果物と野菜を1日3皿分以上とっているかどうかという簡略な目安で判定されています。

表示を読む人ほど生活習慣とスコアが良好

分析の結果、女性は男性より食品表示を常に読むと答えた割合が高く(74.5%対65.6%)、男女とも、表示を読む人は教育年数が長い傾向がありました。

男女いずれでも、食品表示を常に読む人は、定期的に運動している人や健康的な食事をしている人の割合が高く、喫煙者の割合は低いという結果でした。たとえば健康的な食事をしている人の割合は、男性で58.6%対42.2%、女性で70.4%対54.6%と、表示を読む人のほうが高くなっていました。BMIは表示を読まない人のほうが高く、男性で25.9対25.3、女性で24.1対23.4でした。総合的な心血管の健康スコアは、男性で66.7点対62.2点、女性で67.6点対64.4点と、表示を常に読む人で高くなっていました。

年齢・性別・教育年数の影響を統計的に調整した分析でも、食品表示を読むことは、心血管リスクが高い状態(スコア40点未満)である可能性の低さ(オッズ比0.63)、健康的な食事をしている可能性の高さ(同2.07)、BMIが正常範囲である可能性の高さ(同1.31)と関連していました。年代別に見ても、18歳から80歳以上まで、表示を読む人のほうがスコアが高く、地中海式食事への適合度も高いという傾向が一貫しており、とくに中年期で差が目立ったと報告されています。

一方、高血圧の割合や総コレステロール値には、表示を読むかどうかによる明確な差は見られませんでした。糖尿病と睡眠障害は、男性でのみ表示を読まない人に多い結果でした。著者らは、表示を読む習慣は、すでに現れた病気よりも、その手前にある生活行動とより強く結びついている可能性があると考察しています。

また、食品表示を読まない人でも、7割近くが自分の食事は健康的だと考えていました。研究チームは、自分の食事の質についての認識と実際の行動との間にずれがある可能性を指摘し、情報を提供するだけでなく、それを読み解いて日々の選択に生かす力を高めることの重要性を述べています。

研究が示すこと

この研究は、食品表示に気を配る人ほど、食事だけでなく運動や喫煙なども含めた生活習慣全体が良好で、心血管の健康スコアも高い傾向にあることを、大規模な一般集団で示しました。著者らは、表示を読む習慣が単独の食習慣というより、健康を意識した生活態度の広い目印である可能性を示唆しています。

ただし、この研究はある一時点の状態を調べたもので、表示を読むことが健康的な生活につながるのか、もともと健康意識の高い人が表示を読むのかは区別できません。食習慣や表示の読み方は自己申告であり、測定されていない要因の影響も否定できないと、著者らは限界として挙げています。そのうえで研究チームは、食品表示を読み解く力が、食生活の改善に向けた公衆衛生上の取り組みの対象になりうると結論づけています。

原著論文の著者・所属:Anna Maria Martone(Center for Aging and Longevity Medicine (CEMI), Fondazione Policlinico Universitario “Agostino Gemelli” IRCCS, Largo Agostino Gemelli 8, 00168 Rome, Italy; Department of Geriatrics, Orthopedics and Rheumatology, Università Cattolica del Sacro Cuore, Largo Francesco Vito 1, 00168 Rome, Italy)、Elena Levati(Center for Aging and Longevity Medicine (CEMI), Fondazione Policlinico Universitario “Agostino Gemelli” IRCCS, Largo Agostino Gemelli 8, 00168 Rome, Italy)、Riccardo Calvani(Center for Aging and Longevity Medicine (CEMI), Fondazione Policlinico Universitario “Agostino Gemelli” IRCCS, Largo Agostino Gemelli 8, 00168 Rome, Italy; Department of Geriatrics, Orthopedics and Rheumatology, Università Cattolica del Sacro Cuore, Largo Francesco Vito 1, 00168 Rome, Italy)、Matteo Tosato(Center for Aging and Longevity Medicine (CEMI), Fondazione Policlinico Universitario “Agostino Gemelli” IRCCS, Largo Agostino Gemelli 8, 00168 Rome, Italy; Department of Geriatrics, Orthopedics and Rheumatology, Università Cattolica del Sacro Cuore, Largo Francesco Vito 1, 00168 Rome, Italy)、Vincenzo Galluzzo(Center for Aging and Longevity Medicine (CEMI), Fondazione Policlinico Universitario “Agostino Gemelli” IRCCS, Largo Agostino Gemelli 8, 00168 Rome, Italy; Department of Geriatrics, Orthopedics and Rheumatology, Università Cattolica del Sacro Cuore, Largo Francesco Vito 1, 00168 Rome, Italy)、Francesca Ciciarello(Center for Aging and Longevity Medicine (CEMI), Fondazione Policlinico Universitario “Agostino Gemelli” IRCCS, Largo Agostino Gemelli 8, 00168 Rome, Italy)、Sara Salini(Center for Aging and Longevity Medicine (CEMI), Fondazione Policlinico Universitario “Agostino Gemelli” IRCCS, Largo Agostino Gemelli 8, 00168 Rome, Italy)、Stefano Cacciatore(Department of Physiology and Aging, College of Medicine, University of Florida, Gainesville, FL 32611, USA)、Emanuele Marzetti(Center for Aging and Longevity Medicine (CEMI), Fondazione Policlinico Universitario “Agostino Gemelli” IRCCS, Largo Agostino Gemelli 8, 00168 Rome, Italy; Department of Geriatrics, Orthopedics and Rheumatology, Università Cattolica del Sacro Cuore, Largo Francesco Vito 1, 00168 Rome, Italy)、Francesco Landi(Center for Aging and Longevity Medicine (CEMI), Fondazione Policlinico Universitario “Agostino Gemelli” IRCCS, Largo Agostino Gemelli 8, 00168 Rome, Italy; Department of Geriatrics, Orthopedics and Rheumatology, Università Cattolica del Sacro Cuore, Largo Francesco Vito 1, 00168 Rome, Italy)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Anna Maria Martone, Elena Levati, Riccardo Calvani, et al. Food Label Reading and Cardiovascular Health Profiles Across Adulthood: Findings from the Look-Up 8+ Study. Nutrients 2026-10-22. DOI: 10.3390/nu18213463. 原著ライセンス:CC BY.