この研究は、韓国の研究機関の研究論文です。

掲載誌:Frontiers in Nutrition

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

「プラネタリーヘルス食」は、EAT–Lancet委員会が提案した食事パターンで、人の健康と環境負荷の軽減の両立を目指しています。全粒穀物、豆類、果物、野菜、ナッツなど植物性食品を中心とし、赤肉や精製糖を厳しく制限します。ただし完全な菜食ではなく、魚介類などの動物性食品も推奨範囲内で含まれます。この食事パターンにどれだけ近い食生活をしているかを点数で表す指標が、プラネタリーヘルス食指数(PHDI)です。

PHDIは通常、本人が答える食事調査から算出されます。こうした自己申告には記憶違いや報告の偏りといった誤差がつきものです。そこで研究チームは、尿など体の試料で測れる指標に、PHDIの高さに対応する違いが実際に現れるのかに注目しました。

著者らが取り上げたのは植物性エストロゲンです。これは植物由来の化合物群で、主に大豆食品に多いイソフラボンと、全粒穀物、種子、果物、野菜、豆類など食物繊維の多い植物性食品に広く含まれるリグナンに分けられます。研究の目的は、米国の全国を代表する成人集団で、PHDIと尿中の植物性エストロゲン濃度がどう関連するかを調べることでした。あわせて、PHDIを構成するどの食品項目がその関連に最も寄与しているかも検討しました。

何をどう調べたか

研究チームは、米国の国民健康栄養調査(NHANES)の2003〜2010年のデータを使いました。対象は20歳以上の成人5,416人で、妊娠中・授乳中の人は除かれています。食事内容は、前日24時間に食べたものを聞き取る調査を2日分行い、その平均から把握しました。

PHDIは15項目で構成され、0〜140点で評価されます。全粒穀物、果物、野菜、ナッツ・種子、大豆以外の豆類、大豆・大豆食品は、推奨量まで多く食べるほど高得点になります。魚介類、卵、乳製品などは推奨範囲に近いほど高得点になります。赤肉・加工肉、飽和脂肪酸・トランス脂肪酸、添加糖・果汁は、少ないほど高得点です。

尿は1回分の採尿で集めたもので、イソフラボン系の4物質(ダイゼイン、ゲニステイン、O-デスメチルアンゴレンシン、エクオール)とリグナン系の2物質(エンテロジオール、エンテロラクトン)が測定されました。尿の濃さは人や時間によって変わるため、濃度は尿中クレアチニンという物質の量で補正されています。研究チームは、年齢、性別、人種・民族、世帯収入、喫煙、飲酒、運動、総摂取エネルギーを考慮に入れました。そのうえで、参加者をPHDIの点数で5等分し、最も低い群と比べて各群の濃度がどれだけ違うかを分析しました。また、点数を連続的な値として扱う分析も行いました。

主な結果

PHDIが最も高い群では、最も低い群に比べて、尿中の植物性エストロゲン総量、イソフラボン総量、リグナン総量がいずれも高くなっていました。この3つの指標は、PHDIの群が上がるにつれて段階的に高くなる傾向を示しました。

PHDIを連続的に扱った分析では、PHDIが1標準偏差(約14.2点)高いごとに、植物性エストロゲン総量が23.4%、イソフラボン総量が17.4%、リグナン総量が24.6%高いという関連が報告されています。個別の物質では、ダイゼイン、ゲニステイン、O-デスメチルアンゴレンシン、エンテロジオール、エンテロラクトンで同様の関連がみられました。

一方、エクオールにはPHDIとの関連がみられませんでした。エクオールは大豆由来のダイゼインを腸内細菌が変換してできる物質で、この変換の能力には個人差が大きいことが知られています。

食品項目ごとの分析では、大豆・大豆食品がイソフラボンと最も強く関連していました。また、全粒穀物はリグナンと最も強く関連していました。著者らは、これらがそれぞれの物質の既知の食事由来源と一致する結果だと述べています。

この研究が示すこと

この研究は、プラネタリーヘルス食に近い食生活をしている人ほど、植物由来の化合物が尿中に多く現れるという関連を、米国成人の大規模データで示しました。研究チームは、この結果を、植物性食品を重視する食事パターンと体内でとらえられる化合物の量とのあいだに、生物学的に筋の通ったつながりがあることを支持するものと位置づけています。

ただし、この研究は一時点のデータを分析した横断研究で、示されたのは関連であり、因果関係を示したものではありません。また著者らは、尿中の植物性エストロゲンはPHDIへの順守度を測る確立した指標や特異的な指標ではないと述べています。あくまで集団レベルで植物性食品中心の食事を補足的に映す指標として解釈すべきだとしています。自己申告による食事指数と体内の測定値を結びつける一つの手がかりを示した研究といえます。

著者:Kyoung‐Bok Min(Department of Preventive Medicine, Seoul National University College of Medicine)、Jin-Young Min(Institute of Health and Environment, Kongju National University, Gongju-si)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Kyoung‐Bok Min, Jin-Young Min. Adherence to the planetary health diet index and urinary phytoestrogen excretion: a nationally representative cross-sectional study of US adults. Frontiers in Nutrition 2026-10-01. DOI: 10.3389/fnut.2026.1915004. 原著ライセンス:CC BY.