著者の所属・活動拠点の国は、イランです。
掲載誌:Archives of Public Health
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
子どもや若者の過体重・肥満は世界的に増えています。著者らは、その背景として、安価でおいしく高エネルギーの食品が手に入りやすく、さまざまな宣伝で売り込まれている「食環境」に注目しました。子どもは広告を単なる便利な情報と受け取りやすく、不健康な食品の広告が食の好みや「買ってほしい」という要求に影響しうることが指摘されています。
イランにも健康を脅かす製品の広告を制限する法的措置があります。ただし論文によると、これらは一般向けの公衆衛生を念頭に置いたもので、子どもや若者を特別に守る設計にはなっていません。また、学校周辺の食品広告の実態は十分に調べられていませんでした。そこで研究チームは、イラン南部最大の都市シーラーズで、後期中等教育学校(日本の高校に相当)の周りにある屋外食品広告の内容と規制基準への適合状況を調べ、生徒の体格指標との関連を検討しました。
何をどう調べたか
調査は2023年11月から2024年2月に行われた横断研究です。横断研究とは、ある一時点の状況を調べる方法を指します。市の地区を社会経済的な水準で高・中・低に分け、さらに公立か私立か、女子校か男子校かで分類し、24校を選びました。各校から半径500メートル以内にあるポスター、横断幕、看板、店頭の陳列など、あらゆる食品広告を写真に記録し、内容を分析しました。
宣伝されている食品は、三つの物差しで評価しました。一つ目は加工の度合いで食品を分ける「NOVA分類」で、どれだけの広告が超加工食品(工業的に作られた菓子や清涼飲料など)を扱っているかを調べました。二つ目は、子ども向けに宣伝してよい食品の栄養基準を定めた世界保健機関(WHO)東地中海地域の栄養プロファイルモデルです。三つ目はイラン政府の「健康を脅かす製品」リストです。あわせて、キャラクターの使用や子ども受けするデザインといった、子どもを狙った宣伝手法が使われているかも記録しました。
さらに、同じ学校の10年生と11年生656人の身長、体重、腹囲を測りました。学校周辺の広告の数と生徒の体格指標との関連は、性別、地域の社会経済水準、学校の公私の別を考慮した統計モデルで分析しました。
主な結果
24校の周辺で見つかった食品広告は423件で、1校あたり平均約17.6件でした。そのうち67.85%が超加工食品の広告でした。WHOのモデルでは76.1%が「子ども向けに宣伝すべきでない」と判定されましたが、国の基準ではその割合は48.9%にとどまりました。たとえばアイスクリームや冷凍デザートの広告は、WHOの基準を一つも満たしませんでした。一方、国の基準では96%が許容と判定されました。著者らは、国の基準が添加糖や飽和脂肪などのリスクを十分に反映していない可能性を指摘しています。基準による差はあるものの、不健康な宣伝食品として多かったのは、スナック菓子・ポテトチップス、アイスクリーム、炭酸飲料などの甘い飲み物でした。
子どもを狙った宣伝手法は広告の47.75%に見られ、子ども受けする見た目のデザインやキャラクターの使用が目立ちました。WHOの基準で不適とされた食品の広告では57.89%がこうした手法を使っており、基準を満たす食品の広告(15.00%)を大きく上回りました。学校からの距離で見ると、広告は学校のすぐそば(0〜100メートル)より、200〜300メートル付近に多く集まっていました。著者らは、学校の近くで広告が多いとする多くの先行研究とは逆の傾向だと述べています。
体格との関連では、学校周辺の食品広告が多い学校の生徒ほど、BMIのzスコアがわずかに高い傾向がありました。BMIのzスコアとは、年齢と性別を考慮して体格を標準化した指標です。広告が10件多いごとに、zスコアは全食品広告で0.08、超加工食品の広告で0.09、子ども向け手法を使った広告で0.13高くなっていました。また、より高い体格区分(過体重や肥満の側)に属するオッズも、10件増えるごとにそれぞれ約17%、21%、28%高くなっていました。一方、腹囲や腹囲身長比などの指標には、有意な関連は見られませんでした。
この研究が示すこと
研究チームは、学校周辺の屋外食品広告の多くが超加工食品や栄養基準を満たさない製品を宣伝しており、こうした広告ほど子どもを狙った手法を使っていると報告しました。国の基準とWHOの基準のずれが示されたことで、現行の規制と実際の広告環境との間にある隔たりも浮かび上がりました。
広告の多さと生徒の体格との関連は統計的には有意でしたが、著者ら自身はその大きさが比較的小さく、横断研究なので因果関係は判断できないと述べています。そのうえで著者らは、子どもを守る観点から不健康な食品の宣伝を制限し、学校周辺の食環境を改善する政策の強化が必要だと結論づけています。
原著論文の著者・所属:Mohammadhassan Rostami(Student Research Committee, School of Nutrition and Food Sciences, Shiraz University of Medical Sciences, Shiraz, Iran)、Mina Babashahi(Department of Community Nutrition, School of Nutrition and Food Sciences, Shiraz University of Medical Sciences, Shiraz, Iran)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Mohammadhassan Rostami, Mina Babashahi. Food marketing near schools: content, permissibility, and associations with adolescents’ nutritional outcomes. Archives of Public Health 2026-10-16. DOI: 10.1186/s13690-026-02109-5. 原著ライセンス:CC BY.