著者の所属・活動拠点の国は、中国、アイルランドです。

掲載誌:Journal of Dairy Science

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

果汁などを搾ったあとに残る「搾りかす」は、食物繊維やポリフェノールを含む農産副産物です。研究チームは、持続可能な食料システム、農産副産物の付加価値の高い活用、乳製品の多様化を背景に、ハスカップ(学名 Lonicera caerulea L.)の搾りかすをヨーグルトづくりに生かす方法を検討しました。

対象としたのは、固まったヨーグルトをかき混ぜてなめらかにした「攪拌型ヨーグルト」です。著者らは、搾りかすを発酵後ではなく発酵前の牛乳に加えることで、ヨーグルトが固まる過程や品質にどのような影響が出るかを調べました。

何を調べたか

研究チームは、ハスカップの搾りかすを重量比で0.5%から2%の範囲で牛乳に加えてから発酵させ、栄養を強化した攪拌型ヨーグルトを作りました。そのうえで、ゲル化(牛乳が酸によって固まり、網目状の構造をつくること)の様子、保水性や食感などの物理化学的な性質、抗酸化活性、そして味や口当たりなどを人が評価する官能評価への影響を調べました。

研究では、牛乳の主なたんぱく質であるカゼインが集まって塊をつくる過程(凝集)に注目し、搾りかすに含まれるポリフェノールや食物繊維がたんぱく質とどう関わるかを報告しています。

主な結果

論文によると、発酵中、搾りかすはたんぱく質とポリフェノール・食物繊維との間の非共有結合的な相互作用(化学結合ほど強くない引き合い)を通じてカゼインの凝集に影響を与えました。その結果、カゼインの小さな粒(ミセル)の集合体や、より大きな複合的な塊の形成が早まりましたが、最終的に酸によってゲルの網目構造ができることは妨げられなかったと報告されています。

発酵後も、搾りかす由来の食物繊維とポリフェノールは、かき混ぜたあとでも複合的な塊の中に安定して結びついたままでした。これにより連続した網目構造が保たれ、より密で詰まった微細構造ができ、水を保つ力(保水性)が高く、まとまりのよい食感で、流動特性も安定したヨーグルトになったとされています。特に2%添加では、搾りかすを加えないヨーグルトと比べて保水性が約8%高まり、表面に水分が分離する「離水」が減り、保存中の物理的な安定性も向上したと報告されています。

さらに、搾りかすの添加でヨーグルトの抗酸化活性が大きく高まり、特に2%添加では21日間の保存期間を通じて活性の90%以上が保たれました。著者らはこれを、発酵中に搾りかすの成分が乳たんぱく質と安定した複合体をつくったためと説明しています。また、2%添加のヨーグルトでは、搾りかすによる渋みがたんぱく質とポリフェノールの結合によって抑えられ、本来の風味のバランスや官能的な受け入れやすさは損なわれなかったとされています。

研究が示す意味

この研究は、ハスカップの搾りかすを発酵前に加えるという工夫によって、保水性や安定性、抗酸化活性、風味のバランスを備えた攪拌型ヨーグルトを作れることを報告したものです。著者らは、果実加工の副産物を乳製品に活用する持続可能な方法の一つとして、この取り組みを位置づけています。

原著論文の著者・所属:Jiayu Yu(College of Food Science and Engineering, Jilin University, Changchun, Jilin, 130062, China)、Hongyang Hu(College of Food Science and Engineering, Jilin University, Changchun, Jilin, 130062, China)、Junjie Yu(College of Food Science and Engineering, Jilin University, Changchun, Jilin, 130062, China)、Tianyang Wu(College of Food Science and Engineering, Jilin University, Changchun, Jilin, 130062, China)、Zhenjiao Du(School of Biosystems and Food Engineering, University College Dublin, Belfield, Dublin 4, Ireland)、Tiehua Zhang(College of Food Science and Engineering, Jilin University, Changchun, Jilin, 130062, China)、Tianqi Fang(College of Food Science and Engineering, Jilin University, Changchun, Jilin, 130062, China. Electronic address: [email protected])、Hui Li(College of Food Science and Engineering, Jilin University, Changchun, Jilin, 130062, China. Electronic address: [email protected])

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Jiayu Yu, Hongyang Hu, Junjie Yu, et al. Prefermentation addition of Lonicera caerulea L. pomace modulates casein aggregation to improve physicochemical properties and nutritional functionality of stirred yogurt. Journal of Dairy Science 2026-08-25. DOI: 10.3168/jds.2026-28838. 原著ライセンス:CC BY.