アロニア、ハスカップ、ゴジベリーといった「スーパーフード」系のベリー類は、抗酸化力の高さなどで近年注目を集めていますが、その品質を確かめるには従来、果汁を絞ったり試薬と反応させたりする化学分析が必要でした。こうした分析は正確な一方で、手間と時間がかかり、果実を壊してしまうという欠点もあります。もし果実に触れるだけで、あるいは光を当てるだけで品質がわかれば、生産者や加工業者にとって大きな助けになります。今回紹介する研究は、そうした非破壊測定の可能性を、携帯型の近赤外分光装置を使って検証したものです。

何を、どうやって調べたのか

研究チームは、アロニア、ハスカップ、ゴジベリーの3種類のベリーから、収穫年や熟度の異なる合計145サンプルを集めました。これらに対して、908〜1676ナノメートルの波長域を測定できる「MicroNIR™ 1700 OnSite-W」という小型の近赤外分光装置を使い、果実の表面に光を当てて反射・吸収のパターン(スペクトル)を記録しました。近赤外分光法は、果実に含まれる水分や糖、フェノール化合物などが特定の波長の光を吸収する性質を利用して、成分量を推定する技術です。

得られたスペクトルデータをもとに、部分最小二乗回帰(PLS回帰)という統計手法を用いて、可溶性固形分(糖度の目安となる指標)、水分含量、pH、総フェノール含量、抗酸化能という5つの品質指標を予測するモデルを作成しました。

予測モデルの精度はどうだったか

作成したモデルを交差検証したところ、決定係数(R²、モデルの当てはまりの良さを示す指標で1に近いほど良い)は0.83〜0.92という範囲に収まりました。誤差の大きさを示すRMSECV(交差検証の二乗平均平方根誤差)は、pHで0.281、抗酸化能で1リットルあたりトロロックス当量2.085グラムでした。

さらに、モデル作成に使っていない別のサンプルで検証する外部検証でも、R²は0.76〜0.88という結果となり、モデルがある程度の頑健性を持つことが確認されました。外部検証における誤差(RMSEV)は、pHで0.381、水分含量で2.095%でした。指標ごとに見ると、最も予測精度が高かったのは可溶性固形分(R²=0.88、RMSEV=1.391)で、水分含量、pH、抗酸化能と続き、総フェノール含量の予測精度が最も低い結果でした(R²=0.76、1グラムあたり没食子酸当量1.914ミリグラム)。また、モデルの実用性を判断する指標であるRPD(残差予測偏差)やRER(範囲誤差比)の値からも、この装置がおおよその定量的な予測に活用できる可能性が示されたとされています。

この研究をどう受け止めるか

この研究は、アロニア・ハスカップ・ゴジベリーという3種のベリーを対象に、収穫年や熟度が異なる145サンプルという限られた範囲で行われたものです。総フェノール含量の予測精度が他の指標より低かった点からもわかるように、成分によってこの手法の得意・不得意があるようで、すべての品質指標を同じ精度で測れるわけではないと考えられます。今回の結果はあくまで一つの研究で得られた知見であり、他のベリー種や、より広範な生産条件のもとでも同様の精度が得られるかどうかは、今後の検証が必要な部分です。

なお、この論文にはアロニア・ハスカップ・ゴジベリーの日本での栽培や消費に関する言及は含まれていません。

まとめ

この研究では、携帯型の近赤外分光装置を使うことで、アロニア・ハスカップ・ゴジベリーといった赤いベリー類の可溶性固形分、水分含量、pH、総フェノール含量、抗酸化能を、果実を壊さずに、ある程度の精度で予測できる可能性が示されました。特に可溶性固形分の予測精度が高く、フェノール含量はやや精度が劣るという結果でした。今後、こうした技術が実際の生産現場や品質管理の場でどこまで活用できるかは、さらなる研究の積み重ねによって明らかになっていくとみられます。

※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。参考文献:Juan Carlos Solomando, Patricia Calvo, María José Rodríguez, et al. NIR Spectroscopy for Predicting Physicochemical and Functional Quality Attributes of Berry (Aronia, Haskap, and Goji) Fruits. フーズ (2026). DOI: 10.3390/foods15152679. 原著ライセンス: cc-by.