著者の所属・活動拠点の国は、スロベニアです。

掲載誌:European Food Research and Technology

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

アロニアとハスカップは、アントシアニンなどのポリフェノールを多く含むベリーです。渋みや苦みが強かったり日持ちが短かったりするため、生食より果汁に加工して利用されることが多い果実です。ただし果汁を搾るときには、ポリフェノールの多くが果皮や細胞壁の中に残り、果汁へ十分に移らないことが知られています。

そこで果汁製造では、果実をつぶした「もろみ」に、細胞壁の成分ペクチンを分解する酵素(ペクチナーゼ)を加える処理がよく使われます。細胞壁がゆるむと搾りやすくなり、細胞内の成分も果汁へ出やすくなると考えられています。ただし効果の大きさは果実の組織や成分によって変わるため、ある果実で得られた結果を別の果実にそのまま当てはめることはできません。

研究チームは、果実の形や細胞壁の構造、ポリフェノールの組成が異なるアロニアとハスカップに同じ条件で酵素処理を行い、反応が果実ごとに違うかを確かめました。あわせて、加熱殺菌(パスツリゼーション)の有無が結果にどう関わるかも調べました。著者らは、最適な酵素量を決めることではなく、実用的な2段階の添加量を比べることが目的だったと述べています。

どのように調べたか

2022年に収穫して冷凍保存したアロニア(品種「ネロ」)とハスカップ(品種「オーロラ」)を解凍してつぶし、もろみを50℃に温めました。そこに市販のベリー用ペクチン分解酵素製剤を、もろみ1kgあたり100mg(低濃度)または200mg(高濃度)加え、50℃で1時間置きました。酵素を加えずに同じ温度・時間だけ保った試料を対照としました。

搾った果汁は二つに分け、一方はそのまま、もう一方は85℃で1分間加熱殺菌しました。酵素の3条件と殺菌の有無2条件を組み合わせ、それぞれ独立に3回ずつ加工しています。測定項目は、果実の重さに対する果汁の割合(搾汁率)、色、糖、有機酸、ポリフェノールです。色は明るさや赤み・黄みを数値で表す方法で測り、対照との差が目で見て分かる程度かどうかも評価しました。

主な結果

搾汁率は、両方の果実で酵素を加えるほど高くなりました。アロニアでは対照の72.22%が、低濃度で74.26%、高濃度で76.29%になりました。ただし低濃度の結果は、対照とも高濃度とも統計的にはっきり区別できませんでした。ハスカップの増え方はより大きく、対照の78.90%が低濃度で84.09%、高濃度で87.55%となり、3条件それぞれの間に有意な差がありました。著者らは、今回の条件ではハスカップのほうが酵素に反応しやすかったと解釈しています。

色も酵素処理で変化しました。どちらの果汁も、高濃度の酵素で明るさと赤みが増しました。一方、色の鮮やかさ(彩度)や色合いそのもの(色相)には有意な変化がなく、基本的な色調は保たれていました。対照との色の差は、アロニアでは高濃度で「目で見て分かる」範囲に入り、ハスカップでは高濃度でも「わずかに分かる」程度でした。アロニアではアントシアニン濃度が変わらないまま色が変わったため、著者らはほかのポリフェノールとの相互作用が関わった可能性を挙げています。ハスカップでは高濃度でアントシアニン濃度も上がっており、これが赤みの増加に寄与した可能性があるとしています。加熱殺菌は、アロニアの色には有意な影響を与えませんでしたが、ハスカップでは黄みや彩度、色相の一部に影響しました。

糖の合計濃度は両方の果汁で上がりました。アロニアでは1Lあたり131.29gから高濃度で148.75g(約13.3%増)、ハスカップでは126.46gから138.46g(約9.5%増)でした。アロニアに含まれる糖アルコールのソルビトールだけは、酵素処理と加熱殺菌の影響が組み合わさって現れ、殺菌した果汁のほうが酵素による増加が大きくなりました。著者らは、これらの値は濃度の比較であり、果実から取り出された成分の総量の変化と、搾汁率の違いによる影響とをこの値だけで切り分けることはできないと注意しています。

有機酸も多くの種類で増えました。アロニアの有機酸の合計は、1Lあたり79.68gから低濃度で87.11g、高濃度で93.06gになりました。これは主にクエン酸、リンゴ酸、キナ酸といった主要な酸の増加によるもので、変化しなかった酸もありました。ハスカップでは主成分のクエン酸が19.15gから20.99gへ増え、リンゴ酸も高濃度で増加しました。

この研究が示すこと

同じ酵素を同じ条件で使っても、果実によって反応の仕方が異なることが示されました。ハスカップは少ない酵素量でも搾汁率が大きく上がりました。アロニアは搾汁率の伸びが小さい一方で、色や糖の変化はより目立ちました。著者らはこうした違いを、果皮や細胞壁の性質、果汁に含まれる成分の違いと結びつけて考察しています。果汁加工で酵素処理を行う際には、果実ごとの性質を踏まえて条件を考える必要があることを伝える研究です。

著者:Alema Puzović(Biotechnical Faculty, Agronomy Department, University of Ljubljana, Ljubljana, Slovenia)、Maja Mikulič-Petkovšek(Biotechnical Faculty, Agronomy Department, University of Ljubljana, Ljubljana, Slovenia)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Alema Puzović, Maja Mikulič-Petkovšek. Effect of pectinase-assisted maceration on yield and bioactive compounds in aronia (Aronia melanocarpa L. cv. ‘Nero’) and haskap (Lonicera caerulea L. cv. ‘Aurora’) juice. European Food Research and Technology 2026-10-15. DOI: 10.1007/s00217-026-05332-0. 原著ライセンス:CC BY.