この研究は、インドネシアの研究機関の研究論文です。

掲載誌:MEDICA (International Medical Scientific Journal)

ライセンス: CC BY-SA 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

何を明らかにしようとしたか

幼児期のむし歯(乳歯のむし歯)は、子どもの成長や栄養、生活の質に影響する身近な健康問題です。原因としては、甘い食べ物や飲み物を頻繁にとること、歯みがきが不十分なことといった行動面の要因がよく知られています。一方で、同じような生活習慣でもむし歯の有無や程度に差が出ることがあり、著者らは他に守りとして働く要因があるのではないかと考えました。

そこで注目したのがビタミンDに関わる行動です。ビタミンDはカルシウムやリンの調整を通じてエナメル質や象牙質が硬くなる過程(石灰化)に関わるとされ、その多くは日光(紫外線B波)を浴びることで皮膚でつくられ、残りは食事などから得られます。論文では、屋外活動と食事からのビタミンD摂取が、行動面の危険要因とむし歯の関係の強さを変える「調整要因(モデレーター)」として働くかどうかを検討したと述べられています。調査地はインドネシア・スラバヤ市のクドゥンドロ地域保健センター管轄区で、年間を通して日照が多い都市部です。

どのように調べたか

研究チームは、同地域の幼稚園に通う5〜6歳の子どもを対象とした横断研究(ある一時点で要因と結果を同時に測る調査)を、2026年2月から3月に実施しました。対象となる393人から単純無作為抽出で200人が選ばれています。

甘い食品・飲料の摂取頻度、歯みがきの習慣、屋外活動の時間、ビタミンDを多く含む食品の摂取頻度は、保護者が記入する質問票で集めました。むし歯の状態は、訓練を受けた検査者がdmf-t指数(むし歯・むし歯による喪失歯・処置歯の本数を数える指標)を用いて口の中を診察して評価しています。解析では、まず各要因とむし歯の関係を相関分析で確かめ、続いて階層的な重回帰分析で、屋外活動やビタミンD摂取が行動要因の影響の大きさを変えるかを検討しました。

参加した子どもの背景としては、甘い食品・飲料の摂取頻度が高い子が57.0%、歯みがき習慣が良くない子が62.5%を占めていました。屋外活動が不足している子は66.5%、食事からのビタミンD摂取が不十分な子は80.5%と報告されています。

報告された主な結果

甘い食品・飲料の摂取(相関係数r = 0.737)と歯みがき習慣の悪さ(r = 0.744)は、いずれもむし歯の状態と強い正の関係を示しました。つまり、これらに当てはまる子ほどdmf-tの値が高い傾向だったということです。屋外活動はむし歯と逆方向の関係(r = −0.355)で、外で過ごす時間が長い子ほどむし歯が少ない傾向でした。一方、食事からのビタミンD摂取はむし歯の状態と統計的に意味のある関係が認められませんでした(r = −0.069、p = 0.333)。

回帰分析では、行動面の2要因だけでむし歯の状態のばらつきの55.6%が説明されました。屋外活動とビタミンD摂取を加えても説明力の増加はわずかで統計的に有意ではなく、交互作用の項(調整効果を調べる項目)を加えた場合も同様でした。最終モデルでは、甘い食品・飲料の摂取(β = 0.401)と歯みがき習慣の悪さ(β = 0.350)が有意な予測因子として残り、屋外活動は逆方向の関連(β = −0.147、p = 0.009)を示しました。ただし、屋外活動もビタミンD摂取も、行動要因とむし歯の関係を調整する働きは確認されなかったと報告されています。

著者らは、ビタミンD摂取との関連が見られなかった理由として、ビタミンDの大部分が日光による体内合成で供給されるため食事の寄与が相対的に小さいこと、また保護者の回答に頼った測定では摂取量を正確にとらえにくいことを挙げています。研究の限界としては、一時点の調査であるため因果の向きは判断できないこと、血中の25(OH)D濃度を測っておらず実際のビタミンD状態は確認できていないこと、フッ化物の使用状況や社会経済的条件などを解析に含めていないこと、単一地域の調査であるため一般化には注意が必要なことが述べられています。

この研究が示すこと

この研究が伝えているのは、就学前の子どものむし歯において、砂糖の摂取頻度と歯みがきという行動面の要因が中心的な位置を占めるという点です。屋外活動はむし歯の少なさと直接結びついて観察されましたが、行動要因の影響を和らげる緩衝役として働いていたわけではない、というのが著者らの整理です。

著者らは、屋外活動を単独の決定要因とみるよりも、より広い健康的な生活習慣を映す指標として捉えるべきだとしています。そのうえで、糖の摂取を減らし、保護者が見守るフッ化物配合歯みがき剤での歯みがきを進めることを引き続き優先しながら、屋外活動を健康的な生活全体の一部として促すという方向性を示しています。

著者:Ryan Nanda Syahbana(Graduate Program in Dental Health Science, Faculty of Dental Medicine, Universitas Airlangga, Surabaya, East Java, Indonesia and Department of Dental Health, Politeknik Kesehatan Kemenkes Surabaya, Surabaya, East Java, Indonesia)、Darmawan Setijanto(Department of Dental Public Health, Faculty of Dental Medicine, Universitas Airlangga, Surabaya, East Java, Indonesia)、Taufan Bramantoro(Department of Dental Public Health, Faculty of Dental Medicine, Universitas Airlangga, Surabaya, East Java, Indonesia)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Ryan Nanda Syahbana, Darmawan Setijanto, Taufan Bramantoro Outdoor Activity and Dietary Vitamin D Intake as Moderators of Caries Risk Factors in Preschool Children. MEDICA (International Medical Scientific Journal) 2026-08-31. DOI: 10.53770/medica.v8i8.1306. 原著ライセンス:CC BY-SA 4.0.

本紹介記事の文章(題名・見出しを含む)は、CC BY-SA 4.0で提供します。原著論文をもとにNutriMap Japanが日本語で要約・説明を加えています。対象は本紹介記事の文章に限り、ヒーロー画像・サイトのロゴ・画面デザイン・他の記事・データベース全体は含みません。