著者の所属・活動拠点の国は、ニュージーランドです。

掲載誌:International Journal of Obesity

ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: Crossref

研究の目的

早食いは、体重が増えやすくなる食行動の一つと考えられています。子どもについても、食べるのが速い子ほど望ましくない体重の状態になりやすいという報告があります。ミルクだけを飲んでいる時期の赤ちゃんでも飲む速さに個人差があることは知られていますが、離乳食(補完食)を食べ始めた時期の「食べる速さ」については、ほとんど分かっていませんでした。

近年、離乳食のあり方は変わりつつあります。一つは、ベビーフードパウチの普及です。これは、そのまま食べられるピューレ状の食品が入った使い切りの容器で、注ぎ口から直接吸って食べることもできます。手軽な反面、なめらかな食感と食べやすさから早食いにつながるのではないかと懸念する声がありますが、パウチと食べる速さの関係を調べた研究はこれまで発表されていませんでした。もう一つは、「ベビー主導の離乳(ベビーレッドウィーニング)」です。大人がスプーンでピューレを食べさせるのではなく、離乳食の初めから、赤ちゃんが発達に合った手づかみ食べ用の食品を自分で食べる方法です。自分のペースで食べるため、食べ方がゆっくりになるのではないかと考えられてきました。

また、これまでの研究の多くは、保護者が質問票で答える主観的な評価で食べる速さを測っていました。よく使われる尺度には「ゆっくり食べる」という速さの項目と「食事に30分以上かかる」という時間の長さの項目が混ざっており、両者を区別した検討は乳児期では行われていませんでした。

そこで研究チームは、主観的な方法と客観的な方法の両方を使い、生後7〜10か月の赤ちゃんの食べる速さを記述すること、食べる速さや食事にかかる時間がエネルギー摂取量・体格・授乳の状況・食欲に関わる食行動とどう関係するかを調べること、さらにパウチの頻繁な利用やベビー主導の離乳との関係を調べることを目的としました。

どのように調べたか

この研究は、ニュージーランドで行われた観察研究「First Foods New Zealand」のデータを用いています。対象は生後7〜10か月の赤ちゃん625人で、ダニーデンとオークランドの地域から募集されました。

食べる速さと食事時間は三つの方法で測られました。第一に、訓練を受けた研究者が保護者に聞き取る「24時間思い出し法」による食事調査を2回行い、前日に赤ちゃんが食べたものの量や時刻、そして一回の食事で最初のひと口から最後のひと口までにかかった時間を記録しました。母乳や粉ミルク、飲み物は除き、固形の離乳食だけを対象に、1分あたりに摂取したエネルギー量(キロジュール毎分)として食べる速さを計算しました。第二に、新型コロナウイルス感染症に関連する制限のため、ダニーデンの一部の家庭に限り、自宅での食事の様子を1回ビデオで撮影してもらい、食べ物が途切れていた時間を差し引いて実際の食事時間を測りました。第三に、保護者が答える質問票で、「ゆっくり食べる」傾向や、満腹を感じやすさ、食べ物への反応のしやすさ、食べることを楽しむ度合い、好き嫌いの多さといった、食欲に関わる食行動を評価しました。

あわせて、赤ちゃんの身長と体重を測定し、年齢と性別を考慮した体格の指標(BMIのzスコア)を求めました。また保護者には、過去1か月のパウチの利用頻度、主にスプーンで食べさせているか赤ちゃんが自分で食べているか、現在も母乳を飲んでいるかを尋ねました。分析では、赤ちゃんの月齢の影響を考慮しています。

主な結果

食事調査によると、赤ちゃんは1日に平均3.6回の離乳食を食べ、1回あたり平均約19分をかけ、平均すると1分あたり22キロジュールの速さで食べていました。1回の食事にかかる時間は月齢による違いがあまりなかった一方、1回に食べるエネルギー量は月齢が上がるほど多く、それに伴って食べる速さも月齢とともに上がっていました。ビデオで測った食事時間は平均約17分で、食事調査と同様の傾向が見られました。

食べる速さと食事時間は、どちらも1日の離乳食からのエネルギー摂取量と関連していました。食事調査では、食べる速さが1分あたり10キロジュール速いと、1日の摂取量が約253キロジュール多いと推定されました。著者らは、これは摂取量にして約19%多いことに相当する一方、10キロジュール毎分という差はこの集団の平均的な速さの半分にあたる大きな差である点にも注意を促しています。食事時間が長い赤ちゃんも、より多くのエネルギーを摂っていました。

一方、体格との関係ははっきりしませんでした。食べる速さとBMIのzスコアの間には統計的に意味のある関連は見られませんでした。食事調査では食事時間が長いほどBMIのzスコアがわずかに低いという関連がありましたが、その差は小さく、ビデオのデータでは確認されませんでした。

パウチについては、頻繁に使っている赤ちゃんが全体として速く食べているという証拠はほとんど見られませんでした。ただしビデオでは、頻繁に使っている赤ちゃんのほうが食事時間が約3分短いという結果でした。なお、この研究で測ったのはパウチから食べるときに限らない全体的な食べる速さであり、注ぎ口から直接食べることを習慣的にしている赤ちゃんは全体の約5%にとどまっていました。

ベビー主導の離乳をしている赤ちゃんは、主にスプーンで食べさせてもらっている赤ちゃんに比べ、1回の食事に4分近く長く時間をかけ、食べる速さもわずかに遅く、保護者からも「ゆっくり食べる」と評価されていました。また、母乳を飲んでいる赤ちゃんは、粉ミルクのみの赤ちゃんに比べて離乳食をゆっくり食べていました。研究チームは、母乳の赤ちゃんの間でベビー主導の離乳がより多く行われていたことも、この違いに関わっている可能性を指摘しています。

食欲に関わる食行動との関係では、速く食べる赤ちゃんほど満腹を感じにくく、好き嫌いが少なく、食べ物に反応しやすく、食べることを楽しむ傾向がありました。ただし、これらの関連の強さは弱いものでした。

この研究が示すこと

この研究は、離乳食を始めて間もない時期の赤ちゃんの食べる速さを、聞き取り調査・ビデオ撮影・質問票という複数の方法で調べた点に特徴があります。速く食べることや長く食べることは、その日の離乳食からのエネルギー摂取量の多さと結びついていましたが、この時点の体格の違いにはあまり表れていませんでした。

また、パウチをよく使う赤ちゃんが全体として早食いになっているという結果は得られず、ベビー主導の離乳や母乳育児の赤ちゃんはゆっくり食べる傾向があることが示されました。ただし、この研究はある一時点の状態を調べたもので、関連は示せても原因と結果の関係までは判断できないと著者らは述べています。離乳期の食べ方の違いを、実際の食事の観察も交えて具体的に描き出した報告といえます。

原著論文の著者・所属:Alice M. Cox(Department of Medicine, University of Otago, Dunedin, New Zealand)、Anne-Louise M. Heath(Department of Human Nutrition, University of Otago, Dunedin, New Zealand)、Jillian J. Haszard(Haszard Biostatistics, Kākā Point, Balclutha, New Zealand)、Cathryn A. Conlon(School of Sport, Exercise and Nutrition, Massey University, Auckland, New Zealand)、Kathryn L. Beck(School of Sport, Exercise and Nutrition, Massey University, Auckland, New Zealand)、Pamela R. von Hurst(School of Sport, Exercise and Nutrition, Massey University, Auckland, New Zealand)、Lisa A. Te Morenga(Research Centre for Hauora and Health, Massey University, Wellington, New Zealand)、Lisa Daniels(Department of Human Nutrition, University of Otago, Dunedin, New Zealand)、Emily A. Jones(School of Sport, Exercise and Nutrition, Massey University, Auckland, New Zealand)、Ioanna Katiforis(Department of Human Nutrition, University of Otago, Dunedin, New Zealand)、Kimberley J. Brown(School of Sport, Exercise and Nutrition, Massey University, Auckland, New Zealand)、Madeleine Rowan(Department of Human Nutrition, University of Otago, Dunedin, New Zealand)、Maria Casale(School of Sport, Exercise and Nutrition, Massey University, Auckland, New Zealand)、Neve H. McLean(Department of Human Nutrition, University of Otago, Dunedin, New Zealand)、Bailey R. Bruckner(Department of Human Nutrition, University of Otago, Dunedin, New Zealand)、Rosario M. Jupiterwala(School of Sport, Exercise and Nutrition, Massey University, Auckland, New Zealand)、Rachael W. Taylor(Department of Medicine, University of Otago, Dunedin, New Zealand. [email protected])

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Alice M. Cox, Anne-Louise M. Heath, Jillian J. Haszard, et al. Eating speed in complementary fed infants: associations with energy intake, weight status, breastfeeding, baby food pouch use and baby-led weaning. International Journal of Obesity 2026-10-08. DOI: 10.1038/s41366-026-02234-9. 原著ライセンス:CC BY.