著者の所属・活動拠点の国は、トルコです。

掲載誌:Food Science and Technology

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的:色のついた小麦をビスケットに生かせるか

小麦は世界の主食の一つで、人が1日にとるカロリーのおよそ5分の1をまかなっています。これまでの品種改良は収量を重視してきました。近年は栄養への関心の高まりを受けて、紫色や青色、黒色の粒をもつ「有色小麦」が注目されています。これらの小麦は、アントシアニンという色素を多く含むためです。論文によると、青い粒は粒の内側にある糊粉層(こふんそう)に、紫の粒は外側の果皮にアントシアニンがたまることで色がつきます。どちらの性質も、野生の近縁種などから取り入れた遺伝子に由来します。

ビスケットは広く食べられている焼き菓子で、仕上がりの食感は原料の小麦粉の性質に大きく左右されます。一般には、たんぱく質の少ない軟質小麦の粉が使われます。研究チームは、紫色と青色の小麦から作った粉とビスケットについて、物理的な性質、加工のしやすさ、食感を総合的に評価しました。この研究のねらいは、文献にある知見の空白を埋めることです。

何を調べたか

材料は、紫色の小麦1系統(1159.288.0.P1.1.X.1.2)と、青色の小麦3系統(Sebesta Blue 3、Skot.Th.Blue 8、Blue Norco)です。比較対照には、ビスケット向けの現代的なパン用小麦品種を2つ用いました。白色のHavabacıと赤色のSavatraです。これらをかんがい設備のある畑で栽培し、収穫した粒を分析しました。

まず、粒の重さ、大きさ、硬さと、かさ密度(一定の容積あたりの重さ)を測りました。次に、粒や粉に含まれるたんぱく質の量と、湿った状態のグルテンの量を調べました。グルテンとは、小麦粉に水を加えてこねたときにできる弾力のある成分で、生地の伸びやコシを左右します。その「強さ」は、複数の方法で評価しました。1つ目は、粉を液体に沈めたときの沈殿の量を見る試験です。2つ目は、水・乳酸・砂糖水をどれだけ抱え込むかを測る試験です。3つ目は、生地を高速でかき混ぜ、固まるまでの時間や抵抗を装置で記録する試験です。

さらに、粒、全粒粉、ふすま、ビスケットの色を数値で測りました。ビスケット生地については、一定の力をかけ続けたときの変形のしかたを調べ、生地の粘りや弾性を評価しています。最後に全粒粉でビスケットを焼き、水分、水分活性、pH、たんぱく質量、硬さ、寸法、重さを比較しました。

主な結果:3つの加工グループに分かれた

研究チームは、たんぱく質とグルテンの強さをもとに、6つの小麦を3つのグループに分類しました。1つ目は、青色のBlue Norcoと白色のHavabacıです。粒のたんぱく質は12.07〜12.57%と低めで、グルテンの強さを示す沈殿量は36〜43 mLと弱めでした。吸水率も56.6〜58.2%と低く、試験で抵抗が最大になるまでの時間も短いという結果でした。論文はこのグループを、やわらかい生地で作るタイプのビスケットに適していると位置づけています。

2つ目は、紫色の系統と、青色のSebesta Blue 3、Skot.Th.Blue 8です。たんぱく質は12.57〜12.93%、沈殿量は62〜67 mLで、いずれも中程度でした。こちらは、硬めの生地で作るタイプのビスケットに向くとされています。3つ目は赤色のSavatraです。グルテンが強すぎるため、著者らはビスケット製造には適さないと判断しました。

焼き上がったビスケットでは、水分量とたんぱく質の組成が、食感と品質に大きく影響していました。青色のSkot.Th.Blue 8とBlue Norcoの硬さは低めから中程度で、それぞれ1127.1 gfと1239.3 gfでした。論文は、この値をやわらかいビスケットに好ましい範囲としています。一方、紫色の系統は、ビスケットのたんぱく質量(14.84%)と硬さ(2698.0 gf)がともに最大でした。このため、硬い生地の製品に適すると評価されています。

色の測定では、明るさが白、赤、青、紫の順に低くなりました。紫色の系統は青みが最も強いという結果です。報告によると、この傾向は粉にしても焼いても保たれていました。

粒の形質では、論文は、青色の系統の千粒重と粒径が最も低い水準にあったと報告しています。著者らは、この結果を、青色・紫色の小麦は白色の小麦より千粒重が低いとした先行研究と一致するものとしています。また、Sebesta Blue 3の千粒重は22.9 gでした。これは、同じ系統を調べた先行研究で報告された28〜30 gを下回っています。著者らはこの低さについて、栽培期に冬の乾燥と平年を下回る降水が重なった影響の可能性を挙げています。

生地の変形試験から得た「最大コンプライアンス(Jmax)」にも関係が見られました。Jmaxは、力をかけたときの変形しやすさを示す値です。Jmaxは、ビスケットのたんぱく質量(相関係数0.56)、長さ(0.69)、厚さ(0.49)と正の相関を示しました。著者らは、Jmaxをビスケットの品質を評価する指標として使える可能性があるとしています。

研究が示すこと

この研究では、有色小麦の性質は色ごとに一律ではありませんでした。同じ青色の小麦でも、系統によって、やわらかいビスケット向きのものと硬い生地向きのものに分かれています。著者らは特にSkot.Th.Blue 8とBlue Norcoを、やわらかい食感のビスケットづくりに有望な遺伝資源と位置づけています。この研究は、有色小麦をビスケットに生かすには、色だけでなくたんぱく質やグルテンの性質を見て系統を選ぶことが手がかりになると示しています。

原著論文の著者・所属:Hayati Akman(Department of Plant and Animal Production , Selcuk University , Konya , Türkiye)、Yaşar Karaduman(Department of Food Engineering , Eskisehir Osmangazi University , Eskisehir , Türkiye)、Gökhan Zengin(Department of Biology, Science Faculty , Selcuk University , Konya , Türkiye)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Hayati Akman, Yaşar Karaduman, Gökhan Zengin. TECHNOLOGICAL AND TEXTURAL PROPERTIES OF FUNCTIONAL BISCUITS AND FLOURS DERIVED FROM BLUE AND PURPLE WHEAT GENOTYPES. Food Science and Technology 2026-10-12. DOI: 10.15673/fst.v20i3.3616. 原著ライセンス:CC BY.