著者の所属・活動拠点の国は、ブラジルです。

掲載誌:Journal of Food Science and Technology

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

ビールの搾りかすを食品素材に

食品の加工では大量の副産物が出ますが、その中にはたんぱく質や食物繊維などの栄養成分が多く残っているものがあります。研究チームが注目したのは、ビール製造で最も多く出る固形の副産物「麦芽かす」です。論文によると、ブラジルは中国、米国に次ぐ世界第3位のビール生産国で、ビール100リットルあたり最大20キログラムの麦芽かすが生じます。

麦芽かすは、乾燥重量あたりでたんぱく質と繊維を多く含むことが知られています。著者らは、ブラジルの多くの家庭で食べられているビスケットに着目しました。そして、ピルスナービールの麦芽かすから作った粉を全粒のチーズビスケットに加え、品質や消費者の受け入れられ方を調べました。副産物を価値ある食品素材として活用できるかを確かめることが、この研究の目的です。

麦芽かす粉の特徴とビスケットづくり

研究チームは、地元の小規模醸造所から提供された麦芽かすを40℃で24時間乾燥させ、粉砕して粉にしました。この粉の水分は4.5%で、ブラジルの基準である15%を下回っていました。微生物検査の結果も国内基準の範囲内で、著者らは食品に使える安全性があると報告しています。

成分を比べると、麦芽かす粉のたんぱく質は小麦粉より79%、全粒粉より64%多く含まれていました。繊維は小麦粉の約3.9倍でしたが、全粒粉よりは21%少なくなっていました。また、粉はキャラメルのような黄みがかった色をしていました。水や油を抱え込む力は、小麦粉や全粒粉よりも高い値を示しました。

ビスケットは、全粒粉の一部を麦芽かす粉に置き換えて作りました。置き換えた割合は重量比で20%、35%、50%の3段階です。これらを、麦芽かす粉を使わない対照品と比べました。調べた項目は、成分、色、食感を数値化する機器測定、そして官能評価です。官能評価では100人の評価者が9段階で好みを採点し、5段階で購入意向を答えました。

栄養は向上、食感や好みには変化

麦芽かす粉を加えたビスケットでは、繊維が95.8%増え、対照品のほぼ2倍になりました。たんぱく質は9.7%増え、著者らはこの2点を研究の主な成果として挙げています。ビスケットの水分は31%減り、粉の量が増えるほど色は暗くなりました。

食感については、麦芽かす粉を加えたビスケットはすべて対照品より硬くなりました。一方で、割れるまでに変形できる距離は短くなっていました。著者らはこの結果を、もろく崩れやすい構造になったと解釈しています。ただし、硬さは粉の配合が増えるほど高まったわけではなく、20%配合から50%配合にかけて徐々に低下しました。

官能評価では、麦芽かす粉の配合が増えるにつれて、対照品との評価の差が大きくなりました。食感の点数も、配合が増えるほど下がりました。それでも受容度指数は20%配合で86.1%、35%配合で81.8%、50%配合で76.9%で、著者らはいずれも受け入れられる水準だと報告しています。購入意向の平均も肯定的でした。論文の結論部分では、「たぶん買う」が32%、「きっと買う」が17%で、合わせて49%だったと述べられています。

副産物に新たな役割を

この研究は、ビール製造で捨てられがちな麦芽かすを粉にすると、全粒チーズビスケットの繊維とたんぱく質を増やせることを示しました。色や食感は変わり、評価は対照品より下がったものの、消費者に受け入れられる範囲にとどまりました。著者らは、醸造の副産物に付加価値を与える実際的な方法になりうると結論づけています。一方で、保存中の安定性、賞味期限、栄養素が体内でどれだけ利用されるかは今回評価していないことも、限界として明記しています。

著者:Natasha Spindola Marasca(School of Chemistry and Food Engineering (FURG), Federal University of Rio Grande, Carreiros, Rio Grande, Brazil)、Lívia Martins Ferreira(School of Chemistry and Food Engineering (FURG), Federal University of Rio Grande, Carreiros, Rio Grande, Brazil)、Munick Comassetto Führ(School of Chemistry and Food Engineering (FURG), Federal University of Rio Grande, Carreiros, Rio Grande, Brazil)、Luan Gustavo Santos(School of Chemistry and Food Engineering (FURG), Federal University of Rio Grande, Carreiros, Rio Grande, Brazil)、Márcia de Mello Luvielmo(School of Chemistry and Food Engineering (FURG), Federal University of Rio Grande, Carreiros, Rio Grande, Brazil)、Vilásia Guimarães Martins(School of Chemistry and Food Engineering (FURG), Federal University of Rio Grande, Carreiros, Rio Grande, Brazil)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Natasha Spindola Marasca, Lívia Martins Ferreira, Munick Comassetto Führ, et al. Malt bagasse waste flour as a sustainable ingredient for enriching cheese biscuits. Journal of Food Science and Technology 2026-10-14. DOI: 10.1007/s13197-026-06900-8. 原著ライセンス:CC BY.