著者の所属・活動拠点の国は、中国です。

掲載誌:Food Chemistry X

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

桑の実を搾った後に残る搾りかすは、農業・食品加工の副産物です。研究チームは、この搾りかすから「カルボキシメチルセルロース(CMC)」と呼ばれる素材を作り、持続可能な機能性素材として活用する道を探りました。CMCは、植物の細胞壁を構成するセルロースを化学的に加工した物質です。

研究の対象は、落花生から取り出したたんぱく質(落花生たんぱく質分離物)がゲル状に固まる現象です。たんぱく質のゲル化は、食品の食感や形を決める重要な性質です。著者らは、搾りかす由来のCMCとカルシウムイオンを組み合わせたとき、このゲル化がどう変わるのか、またその仕組みは何かを明らかにすることを目指しました。

何を調べたか

研究チームは、桑の実の搾りかすからCMCを調製し、落花生たんぱく質のゲルに加えて性質の変化を調べました。ゲルの構造は、分子の段階から目に見える大きさまで複数の尺度で分析されました。

あわせて、どの種類の分子間の力がゲルの網目を支えているかを分析し、測定項目どうしの関係を相関分析で整理しました。さらに、コンピューター上で分子同士の結合のしかたを予測する「分子ドッキング」というシミュレーションも行いました。なお、ここでの紹介は論文の抄録に基づいています。

主な結果

抄録によると、搾りかす由来のCMCを1.5%、カルシウムイオンを12ミリモーラー加えた条件で、落花生たんぱく質ゲルの強度は52.47グラムから142.89グラムへ高まりました。ゲルが水を保持する能力(保水性)も72.21%から85.49%へ上昇しました。また、ゲルの弾力と粘り(粘弾性)が増し、網目構造がより緻密になったと報告されています。

仕組みについて、著者らは役割の分担を示しています。カルシウムイオンは、電気的な引き合い(イオン相互作用)を通じて網目構造の安定化に重要な役割を果たしていました。一方、CMCは水素結合や疎水性相互作用(水をはじく部分どうしが寄り集まる力)を担い、さらに網目のすき間を埋める働きによって寄与していたとされます。分子ドッキングの結果も、CMC、カルシウムイオン、落花生たんぱく質の三者が結合しうることを裏付けるものでした。

研究が示すこと

著者らは、CMCとカルシウムイオンが落花生たんぱく質のゲル化を調節する仕組みについて、分子レベルの相互作用と目に見えるゲルの性質とを結びつける関係を示したとしています。あわせてこの研究は、捨てられがちな桑の実の搾りかすを付加価値のある素材として生かす考え方を支える成果として位置づけられています。

原著論文の著者・所属:Yuanfei Ge(School of Life and Health Sciences, Environmental Engineering, Hefei University, Hefei 230601, China)、Dan Hu(State Key Laboratory of Dairy Biotechnology, Key Laboratory of Functional Dairy Products Processing, Ministry of Agriculture and Rural Affairs, Shanghai Engineering Research Center of Dairy Biotechnology, Dairy Research Institute, Bright Dairy and Food Co. Ltd., Shanghai 200436, China)、Yujie Sun(School of Life and Health Sciences, Environmental Engineering, Hefei University, Hefei 230601, China)、Yuqing Tong(School of Life and Health Sciences, Environmental Engineering, Hefei University, Hefei 230601, China)、Hanxiao Shi(School of Life and Health Sciences, Environmental Engineering, Hefei University, Hefei 230601, China)、Chuyan Wang(Key Laboratory of Berry Processing and Resource Comprehensive Utilization, Hefei University, Hefei 230601, China; School of Life and Health Sciences, Environmental Engineering, Hefei University, Hefei 230601, China)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Yuanfei Ge, Dan Hu, Yujie Sun, et al. From agricultural waste to functional gels: Mulberry pomace-derived carboxymethyl cellulose synergistically enhances calcium-mediated peanut protein isolate gelation. Food Chemistry X 2026-10-01. DOI: 10.1016/j.fochx.2026.104676. 原著ライセンス:CC BY.