著者の所属・活動拠点の国は、ギリシャ、アイルランドです。

掲載誌:The International Journal of Life Cycle Assessment

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

気候変動や資源の枯渇への関心が高まるなかで、畜産物に代わる植物性食品への注目が集まっています。豆類はその代表で、落花生も栄養価が高く、さまざまな食品に加工できる作物です。ピーナッツミルクは乳製品の代替品として、ピーナッツバターやピーナッツオイルは定着した商品として消費が広がっています。

一方で著者らによると、落花生からつくる複数の製品について環境負荷を詳しく比べた研究は少なく、欧州での落花生栽培はほかの地域に比べてあまり調べられていません。そこで研究チームは、欧州で栽培された落花生を原料にしたピーナッツミルク、ピーナッツバター、ピーナッツオイルの3製品について、環境負荷を評価し比較しました。

どのように調べたか

研究チームは、製品がつくられる過程全体の環境影響を積み上げて評価する「ライフサイクルアセスメント(LCA)」という手法を用いました。範囲は「ゆりかごから工場の門まで」と呼ばれる設定で、落花生の栽培と殻むきから、各製品へ加工して工場から出荷できる状態になるまでを対象としています。輸送後の流通や消費の段階は含まれていません。

データはポルトガルの落花生栽培・加工の実際の工程に基づき、2024〜2025年の栽培期のものが使われました。評価した項目は、気候変動(温室効果ガスの排出量)、微小粒子状物質の生成、化石資源の消費、淡水の消費、光化学オゾンの生成、淡水と海洋の富栄養化などです。

比較の基準は、まず各製品1kgあたりとしました。ただし3製品はエネルギー量が大きく異なるため、1kcalあたりでも比較しています。また、落花生の殻や、油を搾ったあとに残る搾りかす(ピーナッツケーキ)を、基本の設定では埋め立てる廃棄物として扱いました。これらを副産物とみなし、重量に応じて環境負荷を割り振った場合に結果がどう変わるかも確かめています。

主な結果

製品1kgあたりで見ると、調べたすべての項目で、環境負荷はピーナッツミルクが最も小さく、ピーナッツバター、ピーナッツオイルの順に大きくなりました。温室効果ガスの排出量は、ピーナッツミルクが1kgあたり0.183kg(二酸化炭素換算)、ピーナッツバターが2.196kg、ピーナッツオイルが4.358kgと報告されています。

負荷の主な発生源も製品ごとに異なっていました。ピーナッツミルクでは、包装材の製造が最大の要因でした。ピーナッツバターでは、多くの熱エネルギーを使う焙煎と乾燥が大きな割合を占めました。ピーナッツオイルでは、焙煎と機械による搾油の工程が主な要因でした。栽培段階は、農機の軽油使用や肥料を通じて影響していましたが、とくに微小粒子状物質の生成で目立つ程度で、全体としては加工段階の影響が大きいと著者らは述べています。

1kcalあたりで比べると、製品間の差は小さくなりました。温室効果ガスの排出量は、ピーナッツミルクとピーナッツバターがいずれも1kcalあたり約0.000366kg、ピーナッツオイルが約0.000493kgでした。研究チームは、比較の基準をどう選ぶかで結果の見え方が大きく変わると指摘しています。

殻や搾りかすを副産物とみなして重量で負荷を割り振った場合、ピーナッツミルクとピーナッツバターの結果はわずかしか変わりませんでした。一方、ピーナッツオイルでは、温室効果ガスの排出量が1kgあたり4.358kgから2.595kgへと約40%減りました。搾油の際に油より多くの搾りかすが出るためで、著者らは、オイルの数値がこの扱い方に左右されやすいことを示しています。

著者らは、既存研究で報告された値とも比較しています。ピーナッツミルクの排出量は、アーモンドや大豆、オーツなどの植物性ミルクについての報告値より低く、牛乳などの動物性の乳よりも大幅に低い値でした。ピーナッツバターは乳製品のバターについての報告値より低く、ピーナッツオイルはほかの植物油と同程度の範囲に入っていました。また、調べた欧州の栽培の収量は1ヘクタールあたり約1,200kgでした。栽培段階の排出量は落花生1kgあたり0.167kgと評価され、アルゼンチンでの報告値と同程度でした。

この研究が示すこと

この研究は、落花生製品の環境負荷が、栽培そのものよりも、その後の加工のしかたによって大きく左右されることを示しています。加熱や搾油の多い製品ほど負荷が大きく、加工の少ないピーナッツミルクでは包装材の負荷が目立ちました。著者らは、加工の効率化やよりクリーンなエネルギーの利用、包装の工夫が負荷を減らす鍵になると論じています。

ただし著者らは、結果はポルトガルでの特定の栽培・加工の条件に基づくものであり、年ごとの天候や収量、電力の構成などによって変わりうること、長期保管の負荷は含まれていないことにも注意を促しています。そのうえで研究チームは、欧州で栽培された落花生は、温室効果ガス排出の比較的少ない植物性食品の原料になりうると結論づけています。

原著論文の著者・所属:Tryfon Kekes(Laboratory of Process Analysis and Design, School of Chemical Engineering, National Technical University of Athens, Iroon Polytechneiou 9, Athens, 15780, Greece)、Fotini Drosou(Laboratory of Process Analysis and Design, School of Chemical Engineering, National Technical University of Athens, Iroon Polytechneiou 9, Athens, 15780, Greece)、Patrick FitzGerald(Beotanics Ltd., Oldtown, Stoneyford, Co. Kilkenny, R95 T384, Ireland)、Richard FitzGerald(Beotanics Ltd., Oldtown, Stoneyford, Co. Kilkenny, R95 T384, Ireland)、Mark O’Brien(Beotanics Ltd., Oldtown, Stoneyford, Co. Kilkenny, R95 T384, Ireland)、Mark Fenelon(Teagasc Food Research Centre, Moorepark, Fermoy, Co. Cork, Ireland)、Magdalini Krokida(Laboratory of Process Analysis and Design, School of Chemical Engineering, National Technical University of Athens, Iroon Polytechneiou 9, Athens, 15780, Greece)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Tryfon Kekes, Fotini Drosou, Patrick FitzGerald, et al. Life cycle assessment of European cultivated peanuts: evaluating sustainability across different peanut products. The International Journal of Life Cycle Assessment 2026-08-20. DOI: 10.1007/s11367-026-02728-8. 原著ライセンス:CC BY.