著者の所属・活動拠点の国は、アイルランドです。
掲載誌:Trends in Food Science & Technology
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
健康を意識した食生活への関心が高まり、牛乳などの乳由来たんぱく質と植物由来たんぱく質を組み合わせた食品が注目されています。著者らはこれを「乳・植物ハイブリッド食品」と呼んでいます。植物中心の食事ではカルシウムの摂取が不足しがちなため、こうしたハイブリッド食品はカルシウム摂取の改善に大きな可能性を持つと論文は述べています。
一方で、ハイブリッド食品は複数の成分が混ざった複雑な食品です。たんぱく質やミネラル、そのほかの食品成分が互いに影響し合うため、含まれるカルシウムが実際にどれだけ体に利用されるかは重要な課題として残っています。著者らは、この点を扱った研究がまだ限られていることを指摘しています。
ここで鍵となる用語が二つあります。「バイオアクセシビリティ」は、消化の過程で食品からカルシウムが溶け出し、吸収されうる状態になる度合いです。「バイオアベイラビリティ」は、実際に体内へ吸収されて利用される度合いを指します。
何を調べたか
この論文は新しい実験の報告ではなく、これまでの知見をまとめた総説です。乳・植物ハイブリッド食品におけるカルシウムのバイオアクセシビリティとバイオアベイラビリティについて、どのような要因が影響するのかを整理しています。
あわせて、カルシウムを利用されやすくするための方法を、配合の工夫、物理的な加工、生物学的な処理の三つの観点から取り上げています。さらに、ハイブリッド食品の開発における現在の課題と、カルシウムに関する栄養面の向上を含めた今後の展望についても論じています。
主な内容
著者らによると、植物たんぱく質に含まれるカルシウムの利用されやすさは、いくつかの要因によって制限されます。具体的には、成分同士の分子レベルでの相互作用、加工技術、カルシウムの化学的な形態、そしてカルシウムを運ぶ食品の構造などが挙げられています。
カルシウムの利用されやすさを高める手段として、総説は次のような方法に注目しています。配合の工夫としては、カルシウムの強化、粒子を細かくする微粒化、乳化技術の活用、たんぱく質を分解した成分やペプチドの利用です。物理的な加工としては、粉砕、加熱調理、押出成形、蒸気を直接吹き込む加熱、パルス電界処理、高圧での均質化が取り上げられています。生物学的な処理としては、発芽、発酵、酵素処理が挙げられています。
研究が示すこと
著者らは、カルシウムを利用されやすくした乳・植物ハイブリッド食品を実現するには、乳たんぱく質の一種であるカゼインが作る網目構造の形成や、食品としての構造面・物理化学的な安定性の低さといった課題に取り組む必要があると結論づけています。乳と植物を組み合わせるだけでは十分ではなく、成分の相互作用や加工方法まで考慮した設計が重要であることを、この総説は示しています。
原著論文の著者・所属:Bhashika Sithijanee Senevirathne(Co-Centre for Sustainable Food Systems, Ireland; School of Food and Nutritional Sciences, University College Cork, Cork, T12 Y337, Ireland)、Xiaobin Ma(Co-Centre for Sustainable Food Systems, Ireland; School of Food and Nutritional Sciences, University College Cork, Cork, T12 Y337, Ireland)、Aylin W. Sahin(Co-Centre for Sustainable Food Systems, Ireland; School of Food and Nutritional Sciences, University College Cork, Cork, T12 Y337, Ireland)、James A. O'Mahony(Co-Centre for Sustainable Food Systems, Ireland; School of Food and Nutritional Sciences, University College Cork, Cork, T12 Y337, Ireland)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Bhashika Sithijanee Senevirathne, Xiaobin Ma, Aylin W. Sahin, et al. Enhancement of calcium bioavailability in dairy-plant hybrid foods: Formulation, physical, and biological approaches. Trends in Food Science & Technology 2026-08-14. DOI: 10.1016/j.tifs.2026.106017. 原著ライセンス:CC BY.