著者の所属・活動拠点の国は、ポーランド、ギリシャ、チェコです。
掲載誌:Scientific Reports
ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: 論文PDF
捨てられる薄皮に含まれる成分を調べる
研究チームは、コーヒー豆を覆い、焙煎の際にはがれる薄皮「シルバースキン」に着目し、栄養成分や抗酸化作用を比較しました。対象は、アラビカ種100%のコーヒーと、アラビカ種80%・ロブスタ種20%のブレンドから得られた薄皮です。通常は廃棄される副産物の成分を幅広く把握し、食品原料などとしての利用可能性を考えることが目的でした。
研究チームは、焙煎業者の通常生産から得た薄皮を、それぞれ複数回の焙煎分を混ぜて分析しました。食物繊維、たんぱく質、ミネラル、ビタミン、アミノ酸、脂肪酸などに加え、フェノール類や抗酸化作用を調べました。また、試験管内で消化を模した処理を行い、総フェノール量がどう変わるかも測定しました。
両方の薄皮で食物繊維が約6割
著者らの報告では、食物繊維は試料重量の58.1~60.3%を占め、その多くは水に溶けにくい不溶性食物繊維でした。たんぱく質は14.1~14.6%、脂肪は2.2~2.5%でした。ブレンド由来の薄皮は、アラビカ単独の薄皮より食物繊維が多く、脂肪が少ないという統計的に有意な差がありました。
ミネラルも含まれ、ブレンド由来の薄皮ではカルシウムや鉄などが多く、アラビカ単独の薄皮ではカリウムが多いと報告されました。アミノ酸や脂肪酸の構成にも違いがみられ、二つの薄皮は、食物繊維が豊富という共通点を持ちながら、成分構成は同じではありませんでした。
フェノール量と抗酸化作用は同じ傾向ではなかった
研究チームは、両方の薄皮の抽出物について、複数の試験で強い抗酸化作用を報告しました。ブレンド由来の薄皮は総フェノール量が少なかった一方、DPPHという試薬を使い、ラジカルを消去する働きを測る試験では、アラビカ単独より高い活性を示しました。著者らは、薄皮の抗酸化作用にはフェノール類だけでなく、焙煎で生じる成分なども関わる可能性があると説明しています。
消化を模した処理の後には、両方の試料で総フェノール量が減少し、アラビカ単独では統計的に有意な減少がみられました。ブレンド由来では処理前に対する残存割合が高かったものの、その割合の試料間差は統計的に有意ではありませんでした。これは模擬消化による成分量の変化を調べた結果であり、体内への吸収や健康効果を示したものではありません。
副産物の利用を考えるための成分情報
著者らは、観察された違いをコーヒーの品種だけに帰することはできないとしています。詳しい焙煎条件が分からず、その影響を切り分けられないためです。また、この研究は主に成分を調べたもので、食品としての性能や健康効果、安全性を直接検証したものではありません。
今回の研究は、通常は捨てられるコーヒーの薄皮が、食物繊維やミネラルを豊富に含み、原料となるコーヒーによって成分や抗酸化特性が異なることを示しました。食品原料としての利用可能性を考えるうえで、その特徴を具体化した報告といえます。
原著論文の著者・所属:Piotr Kulawik(Department of Animal Products Processing, University of Agriculture, Balicka 122, Kraków, PL-30-149, Poland)、Małgorzata Tabaszewska(Department of Human Nutrition and Metabolomics, Pomeranian Medical University in Szczecin, Broniewskiego 24, Szczecin, PL-71-460, Poland; Department of Plant Products Technology and Nutrition Hygiene, University of Agriculture, Balicka 122, Kraków, PL-30-149, Poland)、Alia Souissi(Department of Animal Products Processing, University of Agriculture, Balicka 122, Kraków, PL-30-149, Poland)、Ioannis Mourtzinos(Laboratory of Food Chemistry and Biochemistry, Department of Food Science and Technology, School of Agriculture, Aristotle University of Thessaloniki, Thessaloniki, 54124, Greece)、Sylwester Smoleń(Department of Plant Biology and Biotechnology, Faculty of Biotechnology and Horticulture, University of Agriculture, al. Mickiewicza 21, Kraków, 31-120, Poland)、Rafał Szram(Department of Animal Products Processing, University of Agriculture, Balicka 122, Kraków, PL-30-149, Poland)、Łukasz Skoczylas(Department of Plant Products Technology and Nutrition Hygiene, University of Agriculture, Balicka 122, Kraków, PL-30-149, Poland)、Anastasia Loukri(Laboratory of Food Chemistry and Biochemistry, Department of Food Science and Technology, School of Agriculture, Aristotle University of Thessaloniki, Thessaloniki, 54124, Greece)、Katarzyna Turek(Department of Animal Products Processing, University of Agriculture, Balicka 122, Kraków, PL-30-149, Poland)、Andrzej Szymkowiak(Department of Commerce and Marketing, Institute of Marketing, Poznań University of Economics and Business, Niepodległosci 10, Poznań, PL-61- 875, Poland; Faculty of Economics and Management, Czech University of Life Sciences Prague, Kamýcká 129, Praha-Suchdol, 165 00, Czech Republic)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Piotr Kulawik, Małgorzata Tabaszewska, Alia Souissi, et al. Bioactive, chemical, and nutritional characteristics of coffee silverskin from pure Arabica and an Arabica–Robusta (80:20) blend. Scientific Reports 2026-09-03. DOI: 10.1038/s41598-026-68823-w. 原著ライセンス:CC BY.