著者の所属・活動拠点の国は、ブラジルです。
掲載誌:Food Biophysics
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
油と水の混ざった状態を保つ材料を探す
研究チームは、卵白などに含まれるたんぱく質「リゾチーム」と、穀物や果物、野菜に広く存在する「フェルラ酸」を結びつけ、油と水を混ぜた乳化液の安定化に使えるかを調べました。たんぱく質の乳化を助ける働きと、フェルラ酸の抗酸化作用を組み合わせ、分離と油の酸化の両方を抑えることが狙いです。
対象は、水の中に油滴が分散し、その表面を固体粒子が覆って安定化する「ピッカリング乳化液」です。研究チームは、リゾチームとフェルラ酸を化学的に結合させた材料を作り、その性質を調べたうえで、大豆油を使った乳化液に加えて評価しました。
濃度4%で、分離を抑える働きが最も高かった
著者らは、構造の分析からフェルラ酸がリゾチームに結合し、たんぱく質の立体構造が部分的にほどけたことを確認したと報告しています。結合体は、リゾチーム単独よりも油と水の境界に働きかけ、乳化を助ける性質を示しました。
結合体の濃度を重量比で2%、3%、4%にして比較すると、濃度が高いほど油滴の表面に付着するたんぱく質の割合が増えました。試験した中では4%の乳化液が最も安定し、油滴が上部に集まる「クリーミング」は認められなかったと著者らは報告しています。また、濃度が高いほど、乳化液の内部には変形に抵抗する、より強いゲル状の構造が形成されました。
保存中の油の酸化も抑制
研究チームは14日間の保存中に、油の酸化の初期に生じる脂質ヒドロペルオキシドと、その後の酸化を示すマロンジアルデヒドを測定しました。結合体を使った乳化液では、どちらの指標も対照試料より低く、4%の試料が最も高い酸化抑制効果を示しました。抗酸化作用を調べる試験でも、結合体の濃度が高いほど、酸化に関わるラジカルを取り除く能力が高くなりました。
著者らは、油滴の表面を覆う働きとフェルラ酸の抗酸化作用が、こうした安定性に関わると考察しています。この研究は、リゾチームとフェルラ酸の結合体が、乳化食品の分離を抑える役割と、油を酸化から守る役割を兼ね備えた材料になり得ることを示しています。
原著論文の著者・所属:Bruno Sérgio Toledo Barbosa(Programa de Pós-graduação em Ciência e Tecnologia de Alimentos (PPGCTA), Universidade Federal Rural de Rio de Janeiro (UFRRJ), Seropédica, Brasil)、Carlos Eduardo de Souza Teodoro(Departamento de Engenharia de Agronegócios, Universidade Federal Fluminense (UFF), Volta Redonda, Brasil)、Edwin Elard Garcia-Rojas(Departamento de Engenharia de Agronegócios, Universidade Federal Fluminense (UFF), Volta Redonda, Brasil; Programa de Pós-graduação em Ciência e Tecnologia de Alimentos (PPGCTA), Universidade Federal Rural de Rio de Janeiro (UFRRJ), Seropédica, Brasil)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Bruno Sérgio Toledo Barbosa, Carlos Eduardo de Souza Teodoro, Edwin Elard Garcia-Rojas. Kinetic and Oxidative Stability of Oil-in-Water Pickering Emulsions Stabilized by Lysozyme-Ferulic Acid Conjugates. Food Biophysics 2026-08-28. DOI: 10.1007/s11483-026-10212-x. 原著ライセンス:CC BY.