著者の所属・活動拠点の国は、中国、イエメンです。

掲載誌:French-Ukrainian Journal of Chemistry

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

2型糖尿病の食事面での対策として、副作用の少ない食品由来の素材が求められています。研究チームが注目したのは、お茶の製造や茶飲料の生産で大量に出る茶殻です。論文によると、茶殻には粗タンパク質が20〜25%含まれます。このタンパク質を酵素で細かく分解したもの(茶タンパク質加水分解物、TPH)は、生理活性をもつペプチド(アミノ酸が短くつながったもの)の供給源として期待されています。

もう一つの素材は、お茶に含まれる代表的なカテキンであるエピガロカテキンガレート(EGCG)です。EGCGは活性が高い一方で、酸化しやすく、使い方が限られるという課題があります。著者らは、フリーラジカル(反応性の高い分子)を利用する「グラフト化」という方法でEGCGとTPHを化学的に結び付けると、分子の形が変わり、性質の安定性や糖尿病に関わる酵素を抑える働きが高まるのではないかと考えました。論文によると、この方法でEGCGとTPHを結合させ、詳しく評価した例はこれまでありませんでした。

何を調べたか

研究チームは、福建省産の白茶を熱湯に浸して成分を抜いた後の茶葉からタンパク質を取り出しました。これをタンパク質分解酵素のトリプシンで分解し、TPHを作りました。分解の条件はpH 9、温度60℃、反応時間3時間などです。タンパク質がどの程度細かく切断されたかを示す「加水分解度」は、約30.8%と報告されています。

続いて、TPHをアスコルビン酸と過酸化水素で処理しました。そこへTPHの重さの3%にあたるEGCGを加え、両者を結合させました。結合しなかったEGCGは取り除いてから、乾燥させて粉末にしています。

評価は試験管内の実験で行われました。でんぷんを分解するα-アミラーゼと、糖を最終的にブドウ糖へ分解するα-グルコシダーゼの2つの酵素について、EGCG単独、TPH単独、結合体のそれぞれがどの程度働きを抑えるかを比べました。あわせて、紫外可視分光法、赤外分光法(FTIR)、走査型電子顕微鏡(SEM)で結合ができているかを確かめ、さまざまなpHでの溶けやすさも調べました。

主な結果

酵素を抑える強さは「IC50」という指標で比べられました。IC50は酵素の働きを半分に抑えるのに必要な濃度で、値が小さいほど効き目が強いことを意味します。α-グルコシダーゼに対するIC50は、結合体が0.47 mg/mL、EGCGが0.63 mg/mL、TPHが1.06 mg/mLでした。α-アミラーゼに対しては、結合体が5.35 mg/mL、EGCGが5.82 mg/mL、TPHが7.5 mg/mLでした。どちらの酵素でも結合体の値が最も小さく、三者の差は統計的に有意でした。

著者らは、この向上を阻害活性の上昇率としても示しています。結合体はEGCG単独と比べて、α-アミラーゼで約8.1%、α-グルコシダーゼで約25.4%高い値でした。TPH単独と比べると、それぞれ約28.7%、約55.7%の上昇でした。研究チームは、EGCGとTPHが相乗的に働いた可能性があると解釈しています。

結合ができたことは、複数の分析で示されました。紫外線の吸収は結合体が最も高くなりました。赤外スペクトルでは、タンパク質に特徴的な吸収の位置や形が変化しました。電子顕微鏡では、TPHの粒子がEGCGの層状構造に埋め込まれたような多孔質の構造が見られました。著者らはこれらを、EGCGとTPHが結合した証拠と位置づけています。

溶けやすさについては、TPH単独はpHによる変化が大きく、pH 2では約65%にとどまりました。一方、結合体はpH 2で約82%、pH 6で約99%などとなり、pH 2、4、8、10ではTPH単独より有意に高い値でした。ただし、もともと溶けやすいEGCG単独には及びませんでした。

研究から伝わること

この研究は、茶殻から得たタンパク質の分解物に茶のカテキンを化学的に結び付けると、試験管内で糖分解酵素を抑える働きがEGCG単独やTPH単独より高まり、溶けやすさもTPH単独より改善したことを報告しています。著者らは、茶の加工で出る副産物を、糖の代謝に着目した機能性食品素材の開発に活かす新しい方向性を示したとしています。なお、今回の結果は試験管内での酵素実験と、物質の性質の分析にもとづくものです。

原著論文の著者・所属:Sam Al-Dalali(Guilin Tourism University, Guilin 541006, China)、Xiaozheng Fan(Guilin Tourism University, Guilin 541006, China)、Zhigui He(Guilin Tourism University, Guilin 541006, China)、Shamsan A. Almowallad(Department of Food Science and Technology, Faculty of Agriculture and Food Science, Ibb University, Ibb 70270, Yemen)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Sam Al-Dalali, Xiaozheng Fan, Zhigui He, et al. Enhancement of the Anti-diabetic Activities of Tea Protein Hydrolysate (TPH) through the Conjugation of TPH with EGCG: Characterization of Conjugate. French-Ukrainian Journal of Chemistry 2026-07-29. DOI: 10.17721/fujcv14i1p123-140. 原著ライセンス:CC BY.