著者の所属・活動拠点の国は、カザフスタンです。

掲載誌:Eastern-European Journal of Enterprise Technologies

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

リンゴとマルメロ(西洋カリン)は、中央アジアを原産とするなじみ深い果物です。水分が多く傷みやすいため、乾燥させて保存性を高める方法が求められています。著者らによると、両者は組織の構造や成分が異なり、乾燥のしかたや適した条件にも違いが出ると考えられます。それにもかかわらず、同じ条件で両方を乾燥させて比べた研究は少ないといいます。

そこで研究チームは、カザフスタン南部で入手したリンゴとマルメロの薄切りを使い、赤外線による加熱と温風の循環を組み合わせた「赤外線・対流乾燥」の特徴を調べました。目的は、それぞれの果物に合った効率のよい乾燥条件を見つけることです。研究チームは、同じ条件でも果物の組織構造によって乾き方が変わること、クエン酸溶液による前処理で乾燥時間が短くなることを仮説として立てました。

何をどう調べたか

使ったのは、サルタナト種のリンゴとマスカット種のマルメロです。皮と芯を除き、厚さ7mm、9mm、11mmの薄切りにしました。一部の試料には、85℃の0.2%クエン酸溶液に浸す前処理をしました。浸した時間は、リンゴが3分、マルメロが5分です。

乾燥には、赤外線で加熱しながら空気を強制的に循環させる乾燥機を使いました。乾燥室の温度は55℃と60℃の2通りです。温度2通り、厚さ3通り、前処理の有無2通りを組み合わせた12条件で、時間とともに水分がどう減るかを測りました。

さらに研究チームは、乾燥の経過を表す数式モデルを当てはめました。また、果物の内部を水分が移動する速さの目安となる「有効水分拡散係数」を求めました。温度・厚さ・前処理がそれぞれ乾燥時間にどれだけ影響するかは、統計的な分散分析で評価しました。仕上がった乾燥品については、見た目・食感・香り・味などを人が評価する官能評価と、微生物検査も行いました。

主な結果

論文によると、提案した数式モデルは実験で得た乾燥の経過をよく表しました。当てはまりの良さを示す決定係数は0.999を超えています。有効水分拡散係数は、調べた条件の範囲で10のマイナス10乗から10のマイナス9乗m²/sでした。クエン酸による前処理は、どの条件でもこの値を高めました。リンゴの値はマルメロより高い結果でした。

乾燥時間への影響は、温度・厚さ・前処理のいずれも統計的に有意でした。なかでも最も大きく影響したのは薄切りの厚さで、温度、前処理の順に続きました。前処理の効果はリンゴの方がはっきり表れました。たとえば55℃・厚さ9mmのリンゴでは、乾燥時間が5.15時間から4.50時間に短くなりました。一方、55℃・厚さ7mmのマルメロでは、5.10時間から4.88時間への短縮にとどまりました。

リンゴでは、前処理の効果が温度によって変わるなど、要因どうしが影響し合っていました。これに対しマルメロでは、温度と前処理の間にこうした関係は統計的に認められませんでした。前処理による乾燥時間の短縮は、平均すると55℃で0.31時間、60℃で0.27時間で、ほぼ同じでした。著者らは、リンゴとマルメロの違いを、マルメロの組織がより緻密で、水分が内部を移動しにくいことなどで説明しています。ただし、この解釈は今後、組織の顕微鏡観察で確かめる必要があるとしています。

乾燥の経過と官能評価を総合して、研究チームは最も適した条件を示しました。リンゴは55℃・厚さ9mm・前処理あり、マルメロは55℃・厚さ7mm・前処理ありです。官能評価の点数は、リンゴが4.8±0.1点、マルメロが4.4±0.1点でした。リンゴでは前処理によって、明るい黄色やクリーム色が保たれやすくなったと報告されています。これらの試料の微生物検査では、安全性の基準を満たしていることが確認されました。

研究が示すこと

この研究は、同じ仲間の果物でも、同じ条件で乾燥させると乾き方や前処理の効き方が異なることを示しました。著者らは、リンゴでは温度と前処理をあわせて選ぶ必要があり、マルメロでは両者を別々に選べると述べています。ただし、示された条件が当てはまるのは、今回調べた範囲に限られます。具体的には、厚さ7〜11mm、温度55℃と60℃、クエン酸による前処理です。この範囲で、果物ごとに乾燥条件を決めるための具体的な根拠が得られたといえます。

原著論文の著者・所属:Nurlan Khanzharov(M. Auezov South Kazakhstan University)、Bakhytkul Abdizhapparova(M. Auezov South Kazakhstan University)、Ainur Shinaliyeva(M. Auezov South Kazakhstan University)、Kasiet Abdrakhman(M. Auezov South Kazakhstan University)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Nurlan Khanzharov, Bakhytkul Abdizhapparova, Ainur Shinaliyeva, et al. Revealing patterns in the infrared-convective drying of apple and quince slices for determining the rational modes of their processing. Eastern-European Journal of Enterprise Technologies 2026-10-28. DOI: 10.15587/1729-4061.2026.373395. 原著ライセンス:CC BY.