著者の所属・活動拠点の国は、スペインです。

掲載誌:Foods

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

研究チームは、「高水分押出加工(HME)」という食品加工技術が大麦粉の性質をどう変えるかを調べました。押出加工は、原料に水を加えて加熱しながらスクリューで練り混ぜ、押し出す方法です。HMEはこれを水分の多い条件で行うものです。

対象は、でんぷんの構成が対照的な2種類の大麦粉です。一つはもち性大麦(Annapurna®)、もう一つは高アミロース大麦(Hilose®)です。でんぷんには、枝分かれの少ない「アミロース」と、枝分かれの多い「アミロペクチン」があります。もち性大麦はアミロースが少なくアミロペクチンが主体で、高アミロース大麦はアミロースを多く含みます。著者らは、加工条件と原料のでんぷん構成の組み合わせによって、粉の構造、加工上の性質、消化のされやすさがどう変わるかを明らかにしようとしました。

何を調べたか

研究チームは2種類の大麦粉を、水分量3段階(50%、60%、70%)とスクリュー回転数2段階(毎分100回転と150回転)の条件で加工しました。

加工後の粉について、構造、吸水性などの機能的な性質、試験管内での消化性を調べました。試験管内での消化性とは、体内の消化を実験室で模擬して、でんぷんやたんぱく質がどれだけ、どのくらいの速さで分解されるかを評価するものです。でんぷんは、分解の速さで3つに分けて評価されています。速く消化される「易消化性でんぷん」、ゆっくり消化される「遅消化性でんぷん」、消化されにくい「難消化性でんぷん(レジスタントスターチ)」です。

でんぷんとたんぱく質の構造は、赤外分光法(FTIR)とたんぱく質の分子量分布の分析で確認されました。赤外分光法は、赤外線の吸収から分子の状態を調べる手法です。

主な結果

論文によると、両方の大麦粉の変化に最も大きく影響した加工条件は水分量でした。ただし、変化の大きさや方向は大麦の成分によって大きく異なりました。

水分50%、毎分150回転の条件では、加工中に原料が受ける機械的エネルギー(比機械エネルギー)が高くなりました。この条件は、アミロース含量の増加と難消化性でんぷんの生成に関連していました。高アミロース大麦では、難消化性でんぷんが13.8%に達したと報告されています。

一方、水分70%で加工すると、吸水性と易消化性でんぷんが増えました。もち性大麦では、易消化性でんぷんが69.6%に達しました。

中間的な条件(水分60%、毎分100回転)では、大麦に含まれる食物繊維の一種「β-グルカン」が残りやすくなりました。この条件は遅消化性でんぷんの増加とも関連しており、高アミロース大麦では遅消化性でんぷんが40%を超えました。

このほか、HMEによって試験管内でのたんぱく質の消化性が変化し、でんぷんとたんぱく質の構造にも変化が生じました。これらの変化の現れ方は、大麦粉の種類によって異なりました。

研究が示すこと

著者らは、HMEが大麦粉の機能や栄養面の性質に与える影響は、加工条件だけでは決まらないとまとめています。加工条件と、大麦がもともと持つでんぷん構成との組み合わせによって決まるということです。同じ加工技術でも、水分量や回転数を変え、原料の大麦を選ぶことで、加工上・栄養上の性質が異なる大麦粉を作り分けられる可能性を、この研究は示しています。

原著論文の著者・所属:Iván Friero(AGROTECNIO-CERCA Center, Universidad de Lleida, Av. Alcalde Rovira Roure, 191, 25198 Lleida, Spain)、Núria Elias-Santaeulalia(AGROTECNIO-CERCA Center, Universidad de Lleida, Av. Alcalde Rovira Roure, 191, 25198 Lleida, Spain)、Francesc Puiggros(Unitat de Nutrició i Salut, Eurecat—Centre Tecnològic de Catalunya, 43204 Reus, Spain)、María Paz Romero(AGROTECNIO-CERCA Center, Universidad de Lleida, Av. Alcalde Rovira Roure, 191, 25198 Lleida, Spain)、Nàdia Ortega-Olivé(AGROTECNIO-CERCA Center, Universidad de Lleida, Av. Alcalde Rovira Roure, 191, 25198 Lleida, Spain)、Marian Moralejo(AGROTECNIO-CERCA Center, Universidad de Lleida, Av. Alcalde Rovira Roure, 191, 25198 Lleida, Spain)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Iván Friero, Núria Elias-Santaeulalia, Francesc Puiggros, et al. Effects of High-Moisture Extrusion Conditions on the Functionality and In Vitro Digestibility of Waxy and High-Amylose Barley Flours. Foods 2026-09-27. DOI: 10.3390/foods15193452. 原著ライセンス:CC BY.