著者の所属・活動拠点の国は、アルジェリアです。

掲載誌:New Medit

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の背景と目的

アルジェリアでは、石油・天然ガスに頼る経済からの多角化や、輸入植物油への依存の軽減を目指して、オリーブ栽培が政策的に後押しされてきました。論文によると、オリーブの栽培面積は2000年の約16万8000ヘクタールから2022年には約44万ヘクタールへと大きく広がりました。一方で、国際市場での存在感は限られ、農場レベルでは収量が農学的な潜在力を大きく下回ることが多いとされています。

オリーブは多年生の樹木作物です。植栽密度、剪定、土壌管理、灌漑、施肥といった管理の積み重ねが、何年にもわたって樹勢や実のつき方を左右します。その一方で、降雨の変動や土壌・地形の違いなど、農家の努力では左右できない要因も収量に影響します。研究チームは、主要産地であるベジャイア地方のオリーブ農家を対象に、各農家が持てる資源をどれだけ生かせているか(技術効率)を測り、その差がどのような管理や農家の特徴と結びついているかを明らかにしようとしました。地中海地域ではこの種の分析が蓄積されていますが、アルジェリアのオリーブ生産についてはほとんど行われてこなかったと著者らは指摘しています。

何をどのように調べたか

研究チームは2025年1月から4月にかけて、ベジャイア地方の13のオリーブ生産自治体で農家調査を行いました。各地域のオリーブ樹の本数に応じて調査農家数を割り振り、公的な農業登録簿から無作為に農家を選んでいます。最終的に60農家について、1ヘクタールあたりのオリーブ生産量、農地面積、労働日数、有機・化学肥料の使用量、樹木の植栽密度に加え、剪定の頻度、土壌作業の回数、灌漑の有無、樹の周りに設ける水受け(ベイスン)の手入れ、農家の年齢や学歴、補助金の受給、農業普及員との接触などの情報を集めました。

分析には「確率的フロンティア分析」という手法を使いました。これは、同じ投入量で達成できる最大の生産量を境界線(フロンティア)として推定し、各農家の実際の生産量がそこからどれだけ離れているかを測る方法です。境界線からの差のうち、天候などの偶然による変動と、管理の不足による非効率とを分けて扱えるのが特徴です。研究チームは、投入要素どうしの組み合わせ効果も表せる柔軟な関数形を用い、比較のために従来型のより単純なモデルや通常の回帰分析でも推定しました。

主な結果

調査農家の平均オリーブ面積は2.3ヘクタールと小規模でした。収量は1ヘクタールあたり2〜227キンタル(1キンタルは100キログラム)と大きくばらつき、平均51.8、中央値30と、少数の農家が高収量を上げる一方で多くの農家は低い水準にとどまっていました。灌漑している農家は25%で、補助金を受けているのは35%、普及サービスを利用しているのは20%でした。

推定された技術効率の平均は0.386で、平均的な農家は潜在的に可能な生産量の約39%しか達成していないことを意味します。値は0.058から0.985まで幅がありました。著者らによれば、この平均は地中海地域のオリーブ生産で一般に報告されている約0.53〜0.80超の水準を大きく下回ります。さらに効率の分布ははっきりと二つの山に分かれ、多くの農家が0.10〜0.30付近に集まる一方、0.90〜1.00付近で境界線に近い生産を行う小さな集団があり、その中間にあたる農家はわずかでした。

非効率の大きさと結びついていた要因として、剪定の頻度、土壌作業の度合い、灌漑の有無、植栽密度が統計的に有意に非効率の低さと関連していました。中でも灌漑の効果が最も強く、灌漑している農家ほど効率が高い傾向がありました。農家の年齢と学歴も非効率の低さと関連していました。これに対し、補助金の受給や普及員との接触には統計的に有意な関連が見られませんでした。また、労働日数は生産の境界線に対して有意な影響を示しませんでした。著者らは、労働の65%以上が手作業による収穫に充てられ、収量の形成そのものには寄与しにくいことを理由に挙げています。

研究が示すこと

著者らは、ベジャイアのオリーブ農家の効率の差は、肥料や労働などの投入量のわずかな違いよりも、剪定・土壌管理・水管理を規則的かつ一貫して行えているかという「管理のあり方」の違いを反映していると解釈しています。境界線近くで生産する農家が実際に存在することは、現状の条件下でも高い成果が達成可能であることを示している、というのが論文の見方です。そのうえで、投入物への補助よりも、剪定や土壌・水の管理改善に結びついた技術支援のほうが効果的だろうと述べています。

なお著者らは、この研究を探索的なものと位置づけています。一時点の調査で、農家の自己申告にもとづくデータであるため、精度に限りがあります。また、剪定の周期や実のなり年・不なり年の繰り返しといった、年をまたぐ変化は分析できていません。それでも本研究は、アルジェリアのオリーブ生産について農場レベルの効率を示した数少ない証拠であり、生産性の差が技術そのものよりも果樹園管理の一貫性と強く結びついていることを示した研究といえます。

原著論文の著者・所属:Amine M. Benmehaia、Samir Belaidi(Center for Research in Applied Economics for Development -CREAD , Bouzaréah , Algiers , Algeria; Department of Agricultural Sciences , University of Biskra , Algeria)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Amine M. Benmehaia, Samir Belaidi. Orchard management and technical efficiency in olive farms in Algeria: A flexible stochastic frontier approach. New Medit 2026-09-27. DOI: 10.30682/nm2603h. 原著ライセンス:CC BY.