この研究は、イタリアの研究機関の研究論文です。

掲載誌:Applied Food Research

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

サフランは、花のめしべの先端にある「柱頭」だけを香辛料として利用します。そのため、花びらやおしべなど残りの部分は副産物として大量に生じます。研究チームは、この「サフランの花の副産物」を捨てずに食品の素材として使えないかという観点から、羊の生乳を用いた新しいチーズの原料として使う可能性を検討しました。論文によれば、この副産物をチーズの原料として評価したのは今回が初めての試みだと述べられています。

著者らは、地理的表示保護制度(PDO)に登録されているイタリアのチーズ「ペコリーノ・シチリアーノ」の製造手順に沿って試験を行いました。

何をどう調べたか

研究チームは3回の製造試験を実施し、3種類のチーズを比較しました。何も加えない対照のチーズ、サフランの柱頭を粉にして加えたチーズ、そして花の副産物を加えたチーズです。副産物は乳50リットルあたり3グラムの割合で加えられました。

調べた項目は多岐にわたります。チーズの中で働く微生物の状況、Illuminaシーケンシングという遺伝子の塩基配列を読み取る手法による菌の種類の構成、色などの理化学的な性質、フラボノイド(植物に含まれる成分の一群)やポリフェノールの量、抗酸化活性、香りのもとになる揮発性成分、そして訓練を受けた評価員による官能評価です。熟成4か月のチーズについて結果が報告されています。

報告された主な結果

サフラン由来の素材を加えても、微生物の動きには影響が出なかったと報告されています。発酵に関わる乳酸菌は1グラムあたり7 Log CFUを超える数で存在し、望ましくない微生物は熟成4か月のチーズでは検出されませんでした。遺伝子解析では、いずれの熟成チーズでもStreptococcus thermophilusという菌が優勢で、相対的な割合は60.37〜71.45%を占めていました。

理化学的な性質はチーズ間でおおむね同等でしたが、柱頭の粉を加えたチーズでは黄色みを示す指標(b*)が高くなりました。花の副産物を加えたチーズでは、フラボノイドの構成が変化し、アピゲニンの相対的な割合が0.47%から2.50%へ、ナリンゲニンが1.46%から4.76%へと増加しました。ただし、こうした成分構成の変化があっても、総ポリフェノール量(38.05〜43.76 mg GAE/100 g FW)や抗酸化活性(DPPH法で46.23〜55.62、FRAP法で30.50〜31.89 μmol TE/100 g FW)には、チーズ間で統計的な差(p > 0.05)は認められませんでした。

香り成分では、サフラン特有の香気成分であるサフラナールが最も多く、全体のピーク面積に対する相対的な割合は柱頭入りのチーズで72.3%、副産物入りのチーズで52.4%でした。官能評価では、副産物を加えたチーズが香りの強さについて高い評点を得た一方で、ペコリーノチーズらしい特徴的な風味の性質は損なわれなかったと報告されています。

この研究が示すこと

著者らは、これらの結果がサフランの花の副産物を持続可能で付加価値のあるチーズ原料として使える可能性を示すものだとしています。香辛料の生産で残る部分を別の食品に循環させる考え方と、乳製品の種類を広げる取り組みの両方につながる報告です。

著者:Giovanna Valentina Farrauto(Department of Agricultural, Food and Forest Sciences (SAAF), University of Palermo, Viale delle Scienze, Bldg. 5, 90128 Palermo, Italy)、Riccardo Gannuscio(Department of Agricultural, Food and Forest Sciences (SAAF), University of Palermo, Viale delle Scienze, Bldg. 5, 90128 Palermo, Italy)、Graziella Serio(Department of Biological, Chemical and Pharmaceutical Sciences and Technologies, University of Palermo, Viale delle Scienze, Bldg. 16, 90128 Palermo, Italy)、Marcella Barbera(Department of Earth and Marine Sciences (DiSTeM), University of Palermo, Via Archirafi, 22, 90123 Palermo, Italy)、Michele Massimo Mammano(CREA-Research Centre for Plant Protection and Certification, Via Titina de Filippo 21, 90135, Palermo, Italy)、E. Franciosi(Research and Innovation Centre, Fondazione Edmund Mach, Via E. Mach 1, 38098 San Michele all’Adige, Italy)、Alessio Giannilivigni(Department of Life Sciences and Systems Biology, University of Turin, Via Quarello 15/A, 10135 Turin, Italy)、Rossella Notaro(Department of Life Sciences and Systems Biology, University of Turin, Via Quarello 15/A, 10135 Turin, Italy)、Carlo Greco(Department of Agricultural, Food and Forest Sciences (SAAF), University of Palermo, Viale delle Scienze, Bldg. 5, 90128 Palermo, Italy)、Luca Settanni(Department of Agricultural, Food and Forest Sciences (SAAF), University of Palermo, Viale delle Scienze, Bldg. 5, 90128 Palermo, Italy)、Carla Gentile(Department of Biological, Chemical and Pharmaceutical Sciences and Technologies, University of Palermo, Viale delle Scienze, Bldg. 16, 90128 Palermo, Italy)、Giuseppe Mannino(Department of Life Sciences and Systems Biology, University of Turin, Via Quarello 15/A, 10135 Turin, Italy)、Massimo Todaro(Department of Agricultural, Food and Forest Sciences (SAAF), University of Palermo, Viale delle Scienze, Bldg. 5, 90128 Palermo, Italy)、Raimondo Gaglio(Department of Agricultural, Food and Forest Sciences (SAAF), University of Palermo, Viale delle Scienze, Bldg. 5, 90128 Palermo, Italy)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Giovanna Valentina Farrauto, Riccardo Gannuscio, Graziella Serio, et al. Upcycling saffron floral by-products as sustainable ingredients for the development of a novel Pecorino-type cheese. Applied Food Research 2026-09-01. DOI: 10.1016/j.afres.2026.102609. 原著ライセンス:CC BY.