著者の所属・活動拠点の国は、トルコです。

掲載誌:Frontiers in Nutrition

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

サッカーでは、短いダッシュや急な加速・減速、方向転換といった激しい動きが、軽い運動をはさみながら試合中に何度も繰り返されます。同時に、選手は周囲の状況を見て注意を保ち、素早く判断し続けなければなりません。そのためサッカーには、体力だけでなく高い認知機能も求められます。

研究チームが注目したのは、2種類のアミノ酸系サプリメントです。L-カルノシンはβ-アラニンとヒスチジンが結びついた物質で、瞬発的な動きに使われる速筋線維に多く含まれます。激しい運動で筋肉内が酸性に傾くのを和らげ、疲労の始まりを遅らせる働きがあるとされています。一方のL-チロシンは、ドーパミンやノルアドレナリンなど、注意や判断に関わる神経伝達物質の材料となるアミノ酸で、ストレス下での認知機能を支えることが報告されてきました。

著者らによると、それぞれ単独の効果はよく調べられているものの、両者を組み合わせたときに身体面と認知面の両方へどう影響するかを調べた研究は極めて少ないといいます。そこで本研究では、プロサッカー選手を対象に、2つのサプリメントを単独または併用で摂取した直後の効果を、激しい運動で疲労した状態で評価しました。研究チームは、併用したときにどちらか単独より大きな効果が見られると予想していました。

どのように調べたか

参加者は、国内リーグで現役としてプレーする18〜30歳の男性プロサッカー選手24人です。研究は、本人も研究者もどれを摂取したか分からない二重盲検法で、全員がL-カルノシン単独、L-チロシン単独、両者の併用、有効成分を含まないプラセボ(偽薬)の4条件をすべて順番に試すクロスオーバー方式で行われました。条件の順番は無作為に割り当てられました。

各回の測定では、まず自転車をこぐ形式で30秒間全力を出し続けるウィンゲートテストを行い、筋肉を意図的に疲労させました。短い休息のあと、方向転換を含む走りの速さを測るイリノイ・アジリティテスト、10メートルと30メートルの短距離走、研究チームが考案したパスの正確さを測るテストを実施しました。最後に、色の名前を表す文字とその文字の色が一致しない場合などに素早く答えるストループテストで、注意力や頭の切り替え、反応時間を調べました。このテストを最後に置くことで、運動後の疲れた状態での認知機能を評価できるように設計されています。

主な結果

ウィンゲートテストでは、最大パワーや平均パワーなどの指標が、L-カルノシン単独と併用の条件でプラセボより有意に高くなり、併用はL-チロシン単独よりも高い値を示しました。全体として最も高い出力が得られたのは併用条件でした。最大パワーに達するまでの時間は、3つのサプリメント条件すべてでプラセボより短くなりました。主観的なきつさは併用条件でプラセボより低かった一方、血中乳酸値には条件間で有意な差は見られませんでした。

アジリティテストと10メートル・30メートル走でも、L-カルノシン単独と併用の条件がプラセボより速く、併用はL-チロシン単独より速いという結果でした。パスの正確さのテストでは、3つのサプリメント条件すべてでプラセボより成績が向上し、L-カルノシン単独、L-チロシン単独、併用の順に良くなる傾向が見られました。著者らは考察の中で、併用によってスプリントとアジリティの成績がおよそ7〜13%、パスの正確さが約17%改善したと述べています。

認知面では、ストループテストの反応時間が、L-チロシン単独と併用の条件でプラセボより速くなりました。特に最も難しい「文字と色が一致しない」課題では、併用条件がプラセボ、L-カルノシン単独、L-チロシン単独のいずれよりも速い結果でした。誤答率も同様の傾向で、併用条件が最も低くなりました。一方、L-カルノシン単独では認知面の成績にプラセボとの有意な差は見られず、著者らはこれを、主に筋肉側で働くという性質と整合的だとしています。

研究が示すこと

研究チームは、筋肉の疲労を遅らせるL-カルノシンの働きと、脳や神経を支えるL-チロシンの働きが組み合わさることで、疲労下でも身体面と認知面の両方の成績が保たれやすくなった可能性があると解釈しています。体力と判断力の両方が欠かせないサッカーのような競技で、2つを併用する意義を示唆する結果といえます。

ただし著者ら自身が、今回の結果は少人数の男性プロ選手だけを対象に、摂取直後の効果を調べたものであり、予備的な知見として扱うべきだと述べています。長期間使った場合の効果や安全性は評価されておらず、各回の事前測定がないこと、パステストの信頼性が正式に確認されていないこと、実際の試合の複雑な状況を完全には再現できないことも限界として挙げられています。

原著論文の著者・所属:Süleyman Bilgin(Department of Coaching Education, Faculty of Sport Sciences, Adıyaman University)、Eren Bozyılan(Department of Coaching Education, Faculty of Sport Sciences, Adıyaman University)、Yusuf Buzdağlı(Department of Coaching Education, Faculty of Sport Sciences, Erzurum Technical University)、Yeşim Karaç Öcal(Department of Coaching Education, Faculty of Sport Sciences, Yozgat Bozok University; Department of Physical Education and Sports Education, Faculty of Sport Sciences, Yozgat Bozok University)、Oğuz Gürkan(Department of Coaching Education, Faculty of Sport Sciences, Yozgat Bozok University; Department of Physical Education and Sports Education, Faculty of Sport Sciences, Yozgat Bozok University)、Sermet Toktaş(Department of Physical Education and Sports, Faculty of Sport Sciences, Adıyaman University)、Hande İnan(Department of Coaching Education, Faculty of Sport Sciences, Adıyaman University)、İsmail Egil(Department of Coaching Education, School of Physical Education and Sports, Siirt University, Siirt, Türkiye)、Yunus Emre Yarayan(Department of Coaching Education, School of Physical Education and Sports, Siirt University, Siirt, Türkiye)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Süleyman Bilgin, Eren Bozyılan, Yusuf Buzdağlı, et al. Combined L-carnosine and L-tyrosine supplementation as an ergogenic strategy for physical and cognitive performance under fatigue in professional football players. Frontiers in Nutrition 2026-08-17. DOI: 10.3389/fnut.2026.1868802. 原著ライセンス:CC BY.