この研究は、トルコの研究機関の研究論文です。

掲載誌:Frontiers in Sports and Active Living

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

ラマダンの断食では、夜明け前の食事から日没まで食べ物も水もとりません。食事量や水分をとる機会、睡眠、日々の活動が変わるため、運動能力や疲れ方に影響する可能性があります。成長期の子どもの選手については、こうした影響を調べた研究がまだ限られています。

トルコの研究チームは、10〜11歳の男子サッカー選手を対象に、ラマダン型の断食をした日と食事をとった日で、グラウンドで行う体力テストの成績や心拍数、疲労感、睡眠時間、体重を比べました。ラマダンの1か月間の調査では、生活リズムや練習日程の変化も重なり、断食そのものとの関係を見分けにくいという問題がありました。そこで著者らは、ラマダン以外の宗教的な機会に数日だけ自発的に行われる断食に注目しました。

どのように調べたか

最終的に分析されたのは、両方の条件ですべてのテストを終えた15人です。同じ選手が「断食条件」と「食事条件」の両方でテストを受け、自分自身の結果どうしを比べる方法をとりました。どちらの条件を先に行うかは無作為に決めています。断食条件に参加したのは、保護者の承認のもとで自ら断食を選んだ子どもだけで、研究者が断食を指示したり勧めたりすることはありませんでした。

断食条件では、午前3時ごろまでに決められた食事と水をとり、その後は夕方5時ごろのテストまで飲食をしませんでした。飲食を断った時間は平均約14時間です。食事条件では、テストの約3.5〜4時間前に同じ内容の食事をとりました。

テストは4種類です。その場から跳び上がる垂直跳び(カウンタームーブメントジャンプ)、30メートル走、コーンの間をジグザグに走る方向転換走(イリノイ・アジリティテスト)、そして20メートルの往復走と短い休息を繰り返して走れた距離を測る「Yo-Yo間欠性回復テスト(子ども版)」です。Yo-Yoテストは、短い休憩をはさみながら全力に近い走りを繰り返す持久力を測るもので、あらかじめ主要な評価項目と定められていました。このほか、安静時の心拍数、テスト前の疲労感、Yo-Yoテスト直後のきつさ(0〜10の段階で自己評価)、前夜の睡眠時間、体重も記録しました。

主な結果

垂直跳び、30メートル走、方向転換走では、2つの条件のあいだに統計的に意味のある差は見られませんでした。ただし著者らは、参加者が事前に必要と見積もった人数に届かなかったため、小さな差や中程度の差を見つける力は限られていると述べています。差が見られなかったことは「影響がなかった」ことの証明ではない、という位置づけです。

一方、Yo-Yoテストで走れた距離は、食事条件の平均約611メートルに対し、断食条件では約581メートルと、平均で約29メートル短くなりました。個々の選手で見ても、断食条件で距離が減る傾向が見られました。

断食条件では、安静時の心拍数(平均82から84拍/分)、テスト前の疲労感(1.9から2.7)、Yo-Yoテスト後のきつさ(7.1から8.4)がいずれも高くなりました。また前夜の睡眠時間は8.4時間から7.8時間へ、テスト当日の体重は36.9キロから36.2キロへと低くなっていました。

結果が示すこと

著者らは、ラマダン型の断食をした条件は、短時間で一度に力を出すテストよりも、走りと休息を繰り返す持久的な運動の成績低下や、きつさの感じ方の強まりと結びついていたとまとめています。食べ物の制限で体内の糖が使いにくくなった可能性も考察されていますが、血糖値や筋肉の糖の量は測定していないため、この説明は仮説にとどまります。断食条件では睡眠も短くなっており、疲労感やきつさの高まりに睡眠が関わった可能性も指摘されています。

この研究は、断食がどの種類の運動にどう関わりやすいかを、子どもの選手で具体的に示した点に意味があります。著者らは、保護者の承認のもとで自発的に断食する子どもに、繰り返し走るような持久的な練習を行う際には、疲労やきつさ、睡眠、回復の様子を注意深く見守ることが大切だと述べています。

著者:Yılmaz Yüksel(Department of Coaching Education, Faculty of Sports Sciences, Istanbul Topkapi University)、Mehmet Emir Mentaş(Institute of Health Sciences, Erzurum Technical University)、Furkan Karahan(Institute of Health Sciences, Erzurum Technical University)、Tuba Kizilet Topateş(Department of Coaching Education, Faculty of Sports Sciences, Marmara University)、Salih Çabuk(Department of Coaching Education, Faculty of Sports Sciences, Erzurum Technical University)、Kubilay Topçuoğlu(Department of Coaching Education, Faculty of Sports Sciences, Marmara University)、Serhat Özbay(Department of Physical Education and Sports, Faculty of Sports Sciences, Erzurum Technical University)、Süleyman Ulupınar(Department of Coaching Education, Faculty of Sports Sciences, Erzurum Technical University)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Yılmaz Yüksel, Mehmet Emir Mentaş, Furkan Karahan, et al. Acute differences in field-based physical performance between Ramadan-type fasting and non-fasting conditions in 10–11-year-old youth soccer players. Frontiers in Sports and Active Living 2026-10-01. DOI: 10.3389/fspor.2026.1943164. 原著ライセンス:CC BY.