7月中旬、福島県の桃畑では早生品種が色づき始めた。これから8月にかけて「あかつき」や「川中島白桃」といった主力品種が次々と出そろい、盛りを迎えていく。とろけるような果肉と上品な甘さで知られるもも 白肉種 生は、まさにこれから本番を迎える夏の果物である。※成分表に個別の収録がないため、ここでは一般的な白肉種の桃の値で見ていく。

一口かじると広がる甘みの奥に、実は酸味がひっそり効いている。桃の有機酸のうち最も多いのはリンゴ酸で100gあたり0.3g、次いでクエン酸0.1g、クロロゲン酸2.2mgと続く。りんごやぶどうにも多く含まれる代表的な酸味成分がリンゴ酸で、桃の甘さがべったり単調にならず爽やかに感じられるのは、この酸味とのバランスによるところが大きい。さらに桃には糖アルコールも100gあたり0.3g含まれ、その大半をソルビトールが占める。ソルビトールは消化管で吸収されにくいとされる低カロリーの甘味成分で、桃のみずみずしい甘さの一端を支えている。エネルギーは100gで38kcalと控えめ、たんぱく質0.6g・脂質0.1g・炭水化物10.2g・食物繊維1.3gという数値も、暑い盛りに食べやすい果物であることを裏付けている。

福島県は桃の生産量で全国2位を誇る産地だ。令和5年産の収穫量は約2.9万t(全国シェア26%)で、1位の山梨(3.3万t・31%)に迫る規模を誇る。福島の桃と聞いて多くの人が思い浮かべるのは、そのまま冷やしてかぶりつく生食の甘さだろう。だが、この桃には実はもう一つの顔がある。冷凍することでするりと皮がむけ、シャリシャリとした新食感に生まれ変わるのだ。

冷凍桃という「二度目の旬」

やり方は簡単で、桃を丸ごとラップに包んで冷凍するだけ。まるごとなら約2カ月、カットしたものなら約1カ月保存できる。食べるときは常温に30秒ほど置くと、皮がつるりとむける。半解凍のシャーベット状で食べれば、生の桃とはまったく違うシャリッとした食感が楽しめる。完熟していない桃は常温で追熟させるとよく、冷蔵庫に入れると甘みが出にくいとされるので注意したい。冷蔵での保存はせいぜい2日が目安、長く楽しみたいなら冷凍が向いている。

この「冷凍」というひと手間は、単なる保存技術にとどまらない。旬のピークで出会った桃の甘さと酸味のバランスを、そのまま数週間先の食卓に持ち越せる小さな魔法のようなものだ。ヨーグルトに凍ったまま数切れ加えれば即席シャーベットになるし、少し常温に戻してコンポート風にしても違う顔を見せる。

まとめ

福島桃は生でとろける甘みを味わうだけの果物ではない。冷凍という手を加えることで、皮むきの手間が一瞬で済み、シャリッとした半解凍の新食感まで手に入る「二度おいしい」夏の果物になる。今日出会った一玉を、まずは生でかぶりつき、残りは冷凍庫へ。数週間後、また違う顔をした福島桃に再会できるはずだ。

※本記事は日本食品標準成分表(八訂)および日本人の食事摂取基準(2025年版)のデータ等をもとに作成しました。