著者の所属・活動拠点の国は、インドです。

掲載誌:International Journal of Engineering Technology Research & Management

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

ビタミンDは、カルシウムやリンの代謝を通じて骨や筋肉の健康に関わるステロイドホルモンです。この論文は、低いビタミンD濃度ががん、心血管疾患、自己免疫疾患、感染症など幅広い病気と関連づけられているという近年の報告を背景に、人のビタミンDの状態が何によって左右されるのかを整理した総説です。原題は低いビタミンD濃度が病気を「引き起こす」と表現していますが、本文では病気との結びつきの多くを「関連」や「予備的な証拠」として扱っています。

著者によると、ビタミンDが不足または不十分な状態にある人は、世界で約10億人と推定されています。そこで本論文は、日光の当たり方、皮膚の性質、体格、年齢、病気など、ビタミンDの合成や利用に影響する要因に焦点を当てています。

体内でビタミンDがつくられ、使われるしくみ

著者は既存の研究をもとに、ビタミンDの合成と代謝の流れを説明しています。皮膚にある7-デヒドロコレステロールという物質が、紫外線のうち波長290〜315ナノメートル付近のUVBを吸収すると、ビタミンD3のもとになる物質ができ、熱の作用によってビタミンD3へ変わります。ビタミンD3は肝臓で25-ヒドロキシビタミンDに変わります。これは血液中を循環するビタミンDの主な形で、医師が体内のビタミンDの状態を調べるときに測るものです。その後、主に腎臓で活性型の1,25-ジヒドロキシビタミンDに変換されます。

紫外線を長く浴び続けても、皮膚の7-デヒドロコレステロールのうちビタミンD3の前段階の物質に変わるのは10〜15%程度で一定になると論文は紹介しています。こうした調節によって、日光を浴びすぎても有害な量のビタミンD3はつくられないと考えられています。

ビタミンDの量を左右するさまざまな要因

まず環境の要因として、地表に届くUVBの量が挙げられます。UVBの量は、オゾン、大気汚染物質、雲、太陽の高さによって変わります。論文によると、北緯およそ35度より南では一年中ビタミンD3の合成に足りるUVBが届きます。一方、北緯41.9度のローマでは11月から2月まで、さらに北のベルリンやアムステルダムでは10月から4月まで、皮膚での合成が起こらないとされています。

皮膚側の要因として、衣服、日焼け止め、メラニン色素、年齢、皮膚温が紹介されています。メラニンの多い肌の人は、同じ量のビタミンD3をつくるのに長く紫外線を浴びる必要があります。77〜88歳の人の表皮では、7-デヒドロコレステロールの濃度が21〜29歳の人より平均で65%低いという報告も紹介されています。また、模擬日光を全身に当てた条件でのビタミンD3の合成量が、62〜80歳では20〜30歳より約78%低かったという別の研究もあります。日焼け止めについては、長期使用者で血中濃度が低かったという研究がある一方、オーストラリアの無作為化比較試験ではほとんど差がみられず、結果は一致していません。

体の状態や病気も関わります。セリアック病や慢性膵炎のように脂肪の吸収が悪くなる病気では、食事からのビタミンDの吸収が低下します。肥満の人では、全身に紫外線を当てた後の血中ビタミンD3の増え方が標準体重の人より57%低かったと報告されており、脂肪組織にビタミンDが取り込まれることが理由と考えられています。ほかにも、一部の抗てんかん薬など分解を促す薬、腎臓病、肝臓病が低下の要因として挙げられています。逆に、サルコイドーシスなどの肉芽腫性疾患では活性型ビタミンDが過剰になり、血中カルシウムが高くなることがあります。

不足の広がりと、この総説が示すこと

論文では、血中の25-ヒドロキシビタミンDが20〜25nmol/L未満を「欠乏」、25〜75nmol/Lを「不十分」とする一般的な定義が紹介されています。アメリカの全国健康栄養調査(2001〜2004年)では、2万人以上のうち約30%がこの基準で欠乏または不十分にあたりました。高緯度に住む人や肌の色が濃い人で低い傾向がある一方、日差しの多い低緯度地域に住む人でも不十分な状態になりうると述べられています。

著者は結論で、ビタミンDの合成に必要なUVBは、日焼けやDNA損傷を引き起こす紫外線と同じ波長域にあることを強調しています。そのため、日光によるビタミンD産生を皮膚へのダメージから切り離すことはできません。日光を浴びる機会を増やすべきか、口からの摂取や食品への添加で補うべきか、公衆衛生上の最適な方法については議論が続いているとしています。この総説は、ビタミンDの体内量が日光だけでなく、住む場所、肌、年齢、体格、病気など多くの要因の組み合わせで決まることを示しています。

原著論文の著者・所属:N.K. Awasthi(department of chemistry bsnv pg college lucknow u.p. india)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):N.K. Awasthi. IN HUMAN VITAMIN -D AND LOW VITAMIN D LEVEL CAUSES WIDE RANGE OF DISEASES. International Journal of Engineering Technology Research & Management 2026-08-20. DOI: 10.5281/zenodo.22028738. 原著ライセンス:CC BY.