この研究は、中国の研究機関の研究論文です。

掲載誌:Food science & nutrition

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: Europe PMC

研究の目的

お茶の品質は、これまで主に専門家による官能評価(味や香りを人が確かめる方法)や、単独の成分指標に頼って判断されてきました。研究チームは、こうした方法には主観が入りやすく時間もかかり、体系性に欠けるという限界があると指摘しています。そこで、複数の測定項目を組み合わせ、より客観的に品質と栄養面を評価する仕組みをつくることを目的としました。

対象としたのは、中国・貴州省で生産される5種の茶です。論文によれば、貴州省は標高が高く、温暖で降水量に恵まれ土壌も肥沃なため、茶樹の生育に適した地域とされています。研究チームは、産地の地理や気候、品種、加工法の違いが茶の成分にどう表れるかを、複数の分析手法を統合した枠組みで捉えようとしました。

何をどう調べたか

調べられた茶は、貴州省遵義市余慶県産の青玉小苦丁茶、貴定雲霧貢茶、遵義市綏陽県産の山銀花茶、銅仁市石阡県産の苔茶、黔西南プイ族ミャオ族自治州普安県産の紅茶の5種です。いずれも貴陽市雲岩区の市場で購入した市販品で、専門家による種類の同定を受けた後、85℃で12時間乾燥し、粉砕して40メッシュのふるいにかけ、各試料を3回ずつ測定しています。

用いられた分析は主に三つです。第一に熱重量分析(TGA)で、試料を加熱しながら重さの変化を追い、水分や揮発成分の抜け方、分解の始まる温度、燃え残る量などから熱的な安定性を調べます。第二にアミノ酸分析装置による20種のアミノ酸の定量で、アミノ酸は茶の味や栄養価を左右する成分です。第三にICP-OESによる微量元素の測定で、風味に関わる元素だけでなく、鉛やカドミウムのように含有量が高いと品質や安全性の面で問題となる重金属も対象に含まれます。これらに加え、燃焼熱、灰分、粗繊維、脂質といった基本的な指標も測定されました。

得られた38項目のデータは、エントロピー因子分析やクラスター分析、OPLS-DAと呼ばれる統計的手法でまとめられました。これらは多数の項目を少数の軸に整理したり、似たもの同士をグループに分けたり、種類を見分けるのに効いている成分を特定したりするための手法です。

報告された主な結果

熱重量分析では、5種で分解が始まる温度が39.7℃から60.3℃の範囲に分かれ、加熱後に残った質量も貴定雲霧貢茶の18.39%から普安紅茶の44.35%まで幅がありました。研究チームは、この違いが有機成分の構成、水分の結びつき方、無機成分の量の差を反映していると述べています。燃焼の安定性については、綏陽山銀花茶が最も高く、以下、貴定雲霧貢茶、石阡苔茶、青玉小苦丁茶、普安紅茶の順と報告されています。

元素については、ヒ素が綏陽山銀花茶のみで0.0369μg/g検出され、水銀とスカンジウムはどの試料でも検出されませんでした。アミノ酸では、5種すべてにトレオニン、バリン、メチオニン、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニン、リシンの7種の必須アミノ酸が含まれていました(トリプトファンは検出されていません)。必須アミノ酸が全アミノ酸に占める割合は9.78%から26.20%と試料間で大きく異なっており、研究チームはこの差を、産地ごとの気候、栽培環境、加工法の違いと関連づけて説明しています。

38項目を総合した評価では、青玉小苦丁茶が最も高く、次いで石阡苔茶、綏陽山銀花茶、普安紅茶、貴定雲霧貢茶の順と報告されました。クラスター分析では5種が三つのグループに分かれ、綏陽山銀花茶・石阡苔茶・普安紅茶が一つのまとまりを形成し、貴定雲霧貢茶と青玉小苦丁茶はそれぞれ独立したグループになりました。またOPLS-DAでは、プロリン、アルギニン、アラニン、銅、トレオニン、マンガンなど21の成分が、茶の種類を見分けるうえで重要な指標として抽出されています。

この研究が示すこと

熱分析、アミノ酸、微量元素という性質の異なる三つの情報を一つの枠組みで扱うことで、ある一つの指標では似て見える茶でも別の指標から区別できるようになる、というのが研究チームの主張です。実際に5種の茶は成分の面で明確に分かれ、順位づけとグループ分けの両方が示されました。

研究チームは、こうした成分の違いの背景として、品種ごとの遺伝的な性質と、標高や気温、降水、日射、土壌の性質といった環境条件の組み合わせが考えられると論じています。お茶の品質を人の感覚だけに委ねず、測定値の束として捉える道筋を示した研究と言えます。

著者:Zhou L(Guangxi Science & Technology Normal University Laibin Guangxi China.)、Huang C(Guangxi Science & Technology Normal University Laibin Guangxi China.)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Zhou L, Huang C. Multidimensional Quality Assessment of Guizhou Teas Integrating Thermogravimetric, Amino Acid, and Trace Element Analyses. Food science & nutrition 2026-09-30. DOI: 10.1002/fsn3.72431. 原著ライセンス:CC BY.