著者の所属・活動拠点の国は、ウクライナです。
掲載誌:Food Science and Technology
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的:ひまわり油の「廃棄物ゼロ」加工を目指して
ウクライナで最も広く使われている植物油はひまわり油です。植物油は加工の過程で脂肪酸などに分解されて利用されますが、その際に副産物も生じます。研究チームは、副産物や廃棄物の発生を減らす「グリーンケミストリー」の考え方に沿って、ひまわり油を余すところなく使う廃棄物ゼロの加工技術の確立を目指しました。
最終的な目標は、ひまわり油から食品添加物を得ることです。著者らは、油を分解する工程の条件を比べたうえで、分解で得られる二つの生成物、すなわち脂肪酸とグリセリン水溶液を、それぞれ別の食品添加物の原料に変える方法を検討しました。
第一段階:油をどう分解するか
植物油の加工は、通常「加水分解」から始まります。加水分解とは、油の分子を水と反応させて、脂肪酸とグリセリンに分ける反応です。研究では、オレイン酸を多く含む高オレイン酸タイプのひまわり油を使いました。著者らによると、多価不飽和脂肪酸が多いと酸化などの副反応が増え、結果の再現性に影響するおそれがあるためです。
比較したのは、硫酸を触媒として加熱する方法、過熱水蒸気を用いる方法、水酸化ナトリウム(アルカリ)を加える方法の三つです。硫酸を使った方法は反応が非常に遅く、80℃で180分たっても原料の転化率(原料のうち反応したものの割合)は5%にとどまりました。過熱水蒸気を用いる方法は30分で転化率100%に達しましたが、高温が必要でエネルギーコストがかさむうえ、得られるグリセリン水溶液の濃度が低いという欠点が挙げられています。
最も速かったのはアルカリによる方法で、60℃という比較的低い温度で、25分目に転化率100%に達しました。この方法では、より濃いグリセリン水溶液が得られることも報告されています。研究チームはこの方法を最適と判断し、以降の実験に用いました。得られた脂肪酸は、主にオレイン酸でした。
第二段階:分解生成物から二種類の食品添加物の原料へ
一つ目は、副産物であるグリセリン水溶液の活用です。研究チームは、これを酢酸と反応させて「トリアセチン」をつくりました。この反応はエステル化と呼ばれ、アルコールの一種であるグリセリンと酸が結びつく反応です。トリアセチンは食品添加物E1518として知られ、保湿剤や安定剤、溶剤、香りの保留剤などに使われています。実験では原料の転化率が100%に達し、目的物であるトリアセチンになった割合(選択率)は80%で一定でした。比較として食品用グリセリンを使った場合は、転化率90〜100%、選択率70〜80%と報告されています。また、加水分解で得たグリセリン水溶液の濃度は、転化率にも選択率にも影響しませんでした。
二つ目は、脂肪酸の活用です。分解で得たオレイン酸を食品用グリセリンと反応させ、脂肪酸とグリセリンが結合した「グリセリド」の混合物をつくりました。反応では、オレイン酸に対してグリセリンを大幅に多く(モル比1対2)加え、水酸化ナトリウムを触媒とし、約190℃で窒素ガスを流し続けました。窒素は、オレイン酸の酸化や製品の着色を防ぐとともに、反応で生じる水を取り除いて反応を進める役割を果たします。
その結果得られたグリセリド混合物のうち、脂肪酸が一つだけ結合した「モノグリセリド」の含有量は46重量%でした。モノグリセリドとジグリセリド(脂肪酸が二つ結合したもの)は、乳化剤や安定剤として使われる食品添加物E471の基になる成分です。
研究が示すこと
この研究は、実験室規模で、ひまわり油の加水分解から得られる脂肪酸と副産物のグリセリン水溶液の両方を、食品添加物の原料へ変える一連の流れを示したものです。特に、これまで副産物として扱われがちだったグリセリン水溶液が、食品用グリセリンと比べて遜色のない結果でトリアセチンの原料になったと報告されている点は、植物油を無駄なく使う加工法を考えるうえで一つの手がかりとなります。
著者:A. Ludyn(Department of Technology of Organic Products Lviv Polytechnic National University Str. S. Bandera, 12, Lviv, Ukraine)、V. Reutskyy(Department of Technology of Organic Products Lviv Polytechnic National University Str. S. Bandera, 12, Lviv, Ukraine)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):A. Ludyn, V. Reutskyy. COMPREHENSIVE PROCESSING OF SUNFLOWER OIL FOR OBTAINING FOOD ADDITIVES. Food Science and Technology 2026-10-12. DOI: 10.15673/fst.v20i3.3614. 原著ライセンス:CC BY.