著者の所属・活動拠点の国は、韓国です。

掲載誌:Scientific Reports

ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: 論文PDF

魚介類の「栄養」と「化学物質」を分けて考える

魚介類は、n-3系脂肪酸やセレン、ヨウ素、良質なたんぱく質の供給源です。一方で、体内に長くとどまる化学物質が食事から体に入る主な経路でもあります。著者らによると、これまでの集団調査の多くは魚介類をひとまとまりの食品群として扱ってきました。そのため、魚、貝、甲殻類、海藻のどれが化学物質の体内量に関わるのかは、十分に分かっていませんでした。

研究チームは韓国に注目しました。論文によれば、韓国は1人当たりの魚介類消費量が年間58kg近くと多く、血液中のPFAS(有機フッ素化合物の一群)の濃度も欧米の全国調査より高いと報告されています。研究の狙いは三つです。一つ目は、体内の化学物質量が6種類の魚介類のどれと結びつくかを切り分けることです。二つ目は、複数の化学物質をまとめた「混合物」としての影響を、肝臓などの検査値との関係で調べることです。三つ目は、魚の摂取と肝臓の酵素との関係を、化学物質を経由する部分とそれ以外の部分に分けて示すことです。

全国調査のデータで何を調べたか

研究チームは、韓国の全国環境保健調査の第5期(2021〜2023年)に参加した成人4279人のデータを分析しました。このうち確率的に選ばれた1564人については、血清中のPFAS 5種類と、ポリ塩化ビフェニル(PCB)や有機塩素系農薬などの残留性有機汚染物質25種類が測定されていました。分析には、6割以上の人で検出された16物質を用いました。

魚介類の摂取は、質問票の6区分で尋ねられていました。大型捕食魚とマグロ、それ以外の魚、甲殻類、海藻、貝類、イカやナマコなどその他の海産物です。研究チームは、6区分すべてを同じ統計モデルに入れました。こうすると、ある区分の影響を、他の魚介類をどれだけ食べているかの影響と切り分けて推定できます。また、血液中の水銀は主に魚介類に由来するとされるため、質問票が海産物からの摂取を捉えているかを確かめる目安として使いました。

肝臓への影響を見る主な指標には、血液検査で測るγ-グルタミルトランスフェラーゼ(GGT)を選びました。GGTは肝臓の酸化ストレスなどで上昇する酵素で、論文では、病気と判定される水準よりずっと低い範囲でも化学物質の負荷に反応するとされています。複数の物質の合計的な影響は、すべての物質の濃度を同時に一段階(四分位で一つ分)引き上げたときに、検査値がどれだけ変わるかとして推定しました。

体内量と最も強く結びついたのは「魚」だった

他の区分を考慮して分析すると、化学物質の体内量と最も強く結びついていたのは、大型捕食魚以外の一般的な魚でした。この魚の摂取頻度が2倍になるごとに、血清PFASは4.4〜14.1%高く、残したPCB 7種類のうち6種類は4.8〜13.0%高く、血中水銀は13.2%高い関係が報告されています。

貝類は、PFASに限った関係を示しました。PFOAが9.4%、PFOSとPFNAがそれぞれ5.9%高く、塩素系の物質とは関係がみられませんでした。甲殻類と海藻には、体内量を押し上げる独自の寄与はみられませんでした。特に海藻は、単純な相関ではPFASと正の関係がありました。しかし他の魚介類を考慮すると、その関係は消えました。研究チームは、海藻をよく食べる人は魚介類全般をよく食べる傾向がある、という食習慣の影響だったと解釈しています。大型捕食魚に正の関係がみられなかった点については、週1回以上食べる人が3.1%と少なかったためだと著者らは述べています。

PFASを介して肝臓の酵素とつながる経路

化学物質の混合物とGGTの関係では、PFASの混合物が最も大きく影響していました。PFAS 5種類の濃度がそろって四分位一つ分高いと、GGTは2.8%高い関係でした。16物質全体の混合物では約0.9%高い関係で、著者らは個人単位では小さな差だとしています。一方、脂肪肝の指標とは、PFASよりも塩素系の物質の混合物の方が強く関連していました。

魚の摂取量とGGTを直接比べると、明確な関係はみられませんでした。そこで研究チームは、この関係を二つの部分に分けました。PFASを経由する経路は正の方向で、魚を多く食べる人ほどPFASが高く、それがGGTの高さにつながるという関連が示されました。PFASを経由しない残りの部分は負の方向でしたが、統計的な幅がゼロを含んでおり、はっきりした差とはいえませんでした。PFASを経由する経路が正であるという結果は、条件を変えた複数の追加分析でも保たれていました。

「関係なし」に見える結果の内側

この研究が示すのは、魚の摂取と肝臓の酵素の間に全体として関係がないように見えても、その内側に向きの異なる経路が含まれうるということです。魚介類による化学物質の体内量は主に魚に集中しており、貝類はPFASに限って寄与していました。甲殻類や海藻には独自の寄与がみられませんでした。

ただし著者らは、PFASを経由しない部分が栄養による良い影響を表しているかどうかは、このデータからは判断できないとしています。この調査では栄養素を測定していないためです。また、一時点のデータを分析した研究であり、因果関係を示すものではありません。経路の分解も、検証できない仮定のもとでの関連の構造として読む必要があると述べています。

原著論文の著者・所属:InHo Lee(Department of Occupational and Environmental Medicine, Soonchunhyang University Cheonan Hospital, Cheonan, 31151, Republic of Korea)、Dongwoo Kim(Department of Occupational and Environmental Medicine, Soonchunhyang University Cheonan Hospital, Cheonan, 31151, Republic of Korea)、Jisuk Yun(Department of Occupational and Environmental Medicine, Chungbuk National University Hospital, Cheongju, Republic of Korea)、Hwa-Young Lee(Department of Psychiatry, College of Medicine, Soonchunhyang University Cheonan Hospital, Soonchunhyang University, 31 Soonchunhyang 6-Gil, Dongnam-Gu, Cheonan, 31151, Republic of Korea)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):InHo Lee, Dongwoo Kim, Jisuk Yun, et al. Finfish intake is associated with persistent chemical burden and a PFAS-mediated pathway to γ-glutamyltransferase in Korean adults. Scientific Reports 2026-10-28. DOI: 10.1038/s41598-026-74744-5. 原著ライセンス:CC BY.