著者の所属・活動拠点の国は、スロベニア、イタリアです。

掲載誌:Food Chemistry

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

魚介類が養殖か天然か、どの海域で獲れたかといった表示が正しいかを確かめることは、食品の信頼性に関わる課題です。研究チームは、魚介類の組織に含まれる元素の「指紋」のような特徴を使い、生産方法(養殖か天然か)と産地を判別できるかを調べました。

ここでいう指紋とは、安定同位体比と多元素組成の二種類の情報を指します。安定同位体比とは、炭素や窒素などの元素で、重さの異なる原子(同位体)がどのような割合で含まれているかを示す値です。この割合は餌や生育環境などを反映すると考えられており、産地判別の手がかりとして利用されています。

調べた試料と方法

著者らが分析した試料は合計222点です。このうち162点はヨーロッパヘダイ(タイの仲間)で、地中海、アドリア海、大西洋の各地域から集めた養殖112点と天然50点です。残る60点はポルトガル産のムラサキイガイ(ムール貝の一種)で、養殖と天然が30点ずつでした。さらに、一部の養殖ヨーロッパヘダイについては、探索的な試みとしてえらの組織も分析しました。

安定同位体比は同位体比質量分析という手法で測定しました。対象は炭素、窒素、硫黄、水素、酸素の同位体比と、水の酸素同位体比です。元素の濃度は、微量の元素を高い感度で測れる誘導結合プラズマ質量分析で調べました。得られたデータは、多数の測定値をまとめて扱い、試料をグループに分ける統計的なモデル(ケモメトリクス)で解析しました。

主な結果

ヨーロッパヘダイでは、炭素と窒素の同位体比が養殖と天然で明確に異なっていました。安定同位体の値をもとにした判別モデル(OPLS-DA)は、今回調べたデータの範囲内で、養殖と天然を100%正しく分類しました。

硫黄の同位体比は、ヨーロッパヘダイの生産方法と産地の判別に、追加の手がかりを与えました。ムラサキイガイでは、生産方法の判別に役立ちました。

産地の判別で最も高い成績が得られたのは、同位体の情報と元素の情報を組み合わせた場合です。ヨーロッパヘダイでは全体の正解率が95.5%に達しました。また、ポルトガル産の試料が本当にポルトガル産かを確認するために、別の手法(DD-SIMCA)でモデルを作りました。このモデルの正解率は、調べたデータの範囲内で96%でした。ポルトガル産を正しくポルトガル産と見分ける割合(感度)は93%、それ以外を正しく除外する割合(特異度)は98%と報告されています。

この研究が示すこと

研究チームは、同位体と元素という互いに補い合う二種類の指紋が、魚介類の生産方法や産地を確かめる手段になりうると結論づけています。同時に、今回の高い分類成績はあくまで分析したデータの範囲内のものです。より広く通用するかどうかは、独立した、地理的にも多様なデータで確かめる必要があると著者らは述べています。

原著論文の著者・所属:Brina Pavlovič(Department of Environmental Sciences, Jožef Stefan Institute, Jamova 39, 1000 Ljubljana, Slovenia; Jožef Stefan International Postgraduate School, 1000 Ljubljana, Slovenia)、Lidija Strojnik(Department of Environmental Sciences, Jožef Stefan Institute, Jamova 39, 1000 Ljubljana, Slovenia)、Doris Potočnik(Department of Environmental Sciences, Jožef Stefan Institute, Jamova 39, 1000 Ljubljana, Slovenia)、Marta Jagodic Hudobivnik(Department of Environmental Sciences, Jožef Stefan Institute, Jamova 39, 1000 Ljubljana, Slovenia)、Darja Mazej(Department of Environmental Sciences, Jožef Stefan Institute, Jamova 39, 1000 Ljubljana, Slovenia)、Luana Bontempo(Fondazione Edmund Mach, Via E. Mach, 1, 38098, San Michele all' Adige, Italy)、Nives Ogrinc(Department of Environmental Sciences, Jožef Stefan Institute, Jamova 39, 1000 Ljubljana, Slovenia; Jožef Stefan International Postgraduate School, 1000 Ljubljana, Slovenia; Research and Innovation Center Pomurje, Jožef Stefan Institute, Lendavska ulica 5a, 9000 Murska Sobota, Slovenia. Electronic address: [email protected])

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Brina Pavlovič, Lidija Strojnik, Doris Potočnik, et al. Stable isotope and multi-elemental fingerprinting for seafood authenticity: discriminating production type and geographical origin. Food Chemistry 2026-09-28. DOI: 10.1016/j.foodchem.2026.151243. 原著ライセンス:CC BY.